横須賀市は「避難勧告」をいつどのように出すべきなのか/台風18・19号への他都市の対応を省みながら、あなたにも一緒に考えてほしい

台風19号、神奈川県内では各市が82万人に避難を呼びかけました

けさの神奈川新聞の記事によると、神奈川県内では

県内では7市が、約34万8000世帯82万人に対して避難を呼びかけた

とのことでした。

2014年10月15日・神奈川新聞記事より

2014年10月15日・神奈川新聞記事より


何故ならば、広島市で起こった大規模な土砂災害を受けて、9月4日、神奈川県が県内の市町村に対して「『避難勧告』を早めに出すように」と指示を出していたからです。

2014年9月5日・神奈川新聞記事より

2014年9月5日・神奈川新聞記事より


こうしたこともあり、お隣の三浦市では、13日の夕方16時の段階で早くも『避難準備情報』を出しました。

一方、横須賀市は最後まで避難を呼びかけませんでした。



市民のみなさまが最も知りたいことは「自分は避難すべきなのか?」

台風18号の時台風19号の時も、フジノはリアルタイムで情報発信を続けました。

その為、市民の方から電話やメールやツイッターで「自分の地域は避難しなくて良いのか知りたい」「避難所はどこになるのか知りたい」など、次々と問い合わせがありました。

そのたびに、次のブログ記事やツイッター発信では「市民のみなさまが知りたがっている情報だ」と感じたことを盛り込むように改善し続けました。

こうして、2度の台風を経験した訳ですが、最終的に「市民のみなさまが最も知りたいことはただ1つだけだったのではないか」と感じています。

それは「自分は今、避難すべきなのか知りたい」ということです。

自分は今すぐに避難すべきか否か。

これこそが、市民にとって最も重要な情報なのだとフジノは考えています。

実は、今回の台風に遭遇する前から、フジノはこの問題について考え続けてきました。

今日のブログは、そのフジノの問題意識を市民のみなさまにも共有していただき、ぜひ一緒に考えてほしいと願いながら書いています。



防災を担当する委員会に所属して5ヶ月、フジノが最重視しているテーマがあります

フジノが『生活環境常任委員会』に所属するようになって5ヶ月が過ぎました。

防災に関して、2度の委員会で重ねて議論を行なった、とても重視しているテーマがあります。

それは

  1. 横須賀市民が、災害から『安全』に免れる『避難勧告』の出し方はいかにあるべきか。

  2. 横須賀市民が避難しなくても『安心』で過ごせる/避難しなければ危険だ、という『タイミング』を、政治・行政は、いかに判断すべきか。

です。



横須賀市が「避難勧告」を出すタイミングは「国の基準」とは異なります

実は、横須賀市が『避難勧告』を出すタイミングは、国の『基準』とは異なります。

それではどう違うのか。

フジノが2014年6月議会で行なった質疑をご覧下さい。

2014年6月17日・生活環境常任委員会

フジノの質問

まず、市民安全部に伺います。
 
先日、6月6日から7日にかけて、大雨が降りました。

その際、気象庁などが『土砂災害警戒情報』を発表をしても、本市としては『避難勧告』や『指示』は出さなかった。
 
その『発令基準』についての新聞報道等もありました。
 
これは内閣府が4月に改定した指針では本市の運用実態には合わないということから、特に『避難勧告』や『指示』を出さなかったということです。
 
ここには2つ感じることがありましたので、それぞれ伺って、見解をお聞かせいただければと思います。

まず、本市はどういう『基準』で『避難勧告』や『指示』を出すのか、まずその点をお聞かせください。



危機管理課長の答弁

まず『土砂災害』なのですが、基本的には明確な『基準』はございません。

かなり主観的な話なのですけれども、「土砂災害が発生するおそれがある。または、発生した場合」というふうなものを『避難勧告』の『基準』としております。



フジノの質問

新聞報道では、多分、危機管理課長がお答えになったのだと思うのですが、「市民の方から実際に被害が起こりそうだ」というお話があった時は『避難勧告』を出すというお話だったのですね。
 
同様に、紙面で指摘されていたことというのは、「昨今では『土砂災害警戒情報』が出されているにもかかわらず、『避難勧告』や『指示』を出さなかった場合、自治体が訴訟のリスクを負う」というようなことがありました。
 
ただ、「あまりにもそれ(=『避難勧告』)を出し過ぎると、本当に必要なときに空振りしてしまうのではないかという懸念もある。それが本市が出さない理由だ」というふうにも書いてありました。
 
そこで、ある程度の『基準』というのがどこにあるのか。

本市はいろいろな政策で国をリードしてきましたから、国の『基準』が正しくなければ「横須賀市としてはこう考える」というのを、僕は国に要望というか、打ち返してほしいという思いがあるのですね。

まちごとに地理状況は全く違う中で、一律の基準をつくるというのがそもそもおかしいのかもしれないのですが、本市としてはどういう時に『避難勧告』を発令したい、しようと実際に運用しているのか。

そして国の『基準』とどれほどあるべき姿と離れているのか。

それを明確にして、国に対しても言っていってほしいというふうに思っているのですが、その2点についてお答えいただけないでしょうか。



危機管理課長の答弁

少し長目になってしまうかもしれませんけれども、国は「危ないところはある程度限定できる」という前提で、今回のガイドラインの改定をしたと思っています。
 
今、国が我々自治体に求めていることは、

「『大雨警報』が出たら、かなり緊張しなさい」

「『土砂災害警戒情報』が出たら、何も考えずに、少し強い言い方ですけれども、何も考えずに避難勧告をかけなさい」

となっていますが、私たち横須賀市内には、土砂災害が危ない場所というところが約1,100カ所ございます。

その1,100カ所に『土砂災害警戒情報』が出るたびに、「避難しなさい」「近隣の小・中学校の体育館を全部あけました」とやって、最初のうちは皆さん逃げて下さるかもしれませんが、「どうせまた市役所は内閣府がやれと言っているからやっているのだよ」となるということが、私どもは大変懸念していることです。

国は「空振りをおそれずに避難勧告をかけろ」と言っていますが、私たちが恐れているのは、空振りをしたことで批判されることではありません。

空振りが続いたことで、いざ本番に逃げていただけなくなって、人の命が失われることを恐れています。

私たちとしては、自分たちの言い訳の為に、保身のために『避難勧告』をかけるつもりは、今までもありませんでしたし、少なくとも今後当分の間、この体制は変わらないと考えています。



フジノの質問

おっしゃっていることは、とてもよく理解できます。オオカミ少年になってしまってはいけない。

そうなのですけれども、では本市はいつ出しているのか、もし本市なりの『基準』があれば、先ほど明確な『基準』はないというお話だったのですが、それは現場の声だと思うのです。地方政府、地方自治体の声だと思うのです。
 
今のガイドラインが余りにも緩い、本市が懸念しているようなことが他のまちでも起こり得る。

そういう場合は、内閣府のガイドラインで『基準』や『指針』をむしろ正していってほしいというふうに、こちらから言っていくべきだとも思っているのですね。
 
そこで、本市はどういう時に『避難勧告』を出しているのか、そして国の指針に見直しを求めていくべきではないかというふうに申し上げたのですが、この点についてはいかがでしょうか。



危機管理課長の答弁

まず、どんな時に出すかは冒頭申し上げたとおり、「その予兆があった場合、もしくは起きた場合」。

その予兆というのは、もしくは起きたというのは、基本的にはそこにお住まいの方が気がつく。

あと、土木部は『大雨警報』が出ると道路パトロール隊を出していただけますので、土木部が覚知する

もしくは警察、消防局が覚知するということで、我々として「そこが危ないかもしれない」といった時に、消防職員の判断、もしくは我々が呼ばれて、そこで判断をして『避難勧告』をかける、というのが今実際にやっていることでございます。

国に対してですが、先日南関東近隣の市町村に対して、内閣府が説明会を行ったのですが、私たちも係長を行かせて「いろいろ言ってこい」と言ったのですが、私たち以上に横浜市の担当が「全くナンセンスだ」ということを強く言って下さったので、うちの係長は「横浜市が全て代弁したので、私は黙って帰ってきました」という報告をしていました。

今後、内閣府ともいろいろな場面で話すことがあると思いますので、「国として市町村のお尻を叩きたい気持ちは分かるけれども、叩かれ方として、今回のガイドラインの改正というのはあまり適当ではない」という意見は伝えたいと思っています。



フジノの質問

それでこそ地方自治体の心意気なのではないかなというふうに思います。
 
後者については、その御答弁で結構です。ありがたいと思いました。
 
前者についてなのですが、システムとして確立されているかどうかだけ確認したいと思います。

お住まいの方が気づいてくれる。土木部のパトロール、あるいは覚知、警察、消防の判断が市民安全部に寄せられたならば、至急『避難勧告』を出すというシステムとしては、確立されているのでしょうか。



危機管理課長の答弁

そのとおりでございます。

お分かりいただけましたでしょうか?

もう1度、まとめてみます。

横須賀市が『避難勧告』を出す現在の『基準』

【パターン1】

  1. 警察・消防局が『覚知』する

  2. 消防職員が「土砂災害が発生するおそれがある。または発生した」と判断した場合、『避難勧告』を出す。

【パターン2】

  1. お住まいの方が気がつく。
  2. 土木部の『道路パトロール隊』が覚知する。
  3. 市民安全部が呼ばれて、実際に現地を確認する。
  4.      

  5. その結果、「土砂災害が発生するおそれがある。または発生した」と判断した場合、『避難勧告』を出す。




どのような「基準」ならば、最も「安心」で「安全」な避難ができるでしょうか?

フジノは、命が守られるのであれば、『国の基準』だろうが『横須賀市独自の基準』だろうが、どちらでも構いません。

政治・行政が市民の命を守る(=『安全』)のは、絶対の責務です。

しかし、その一方で、『人々のそのままの暮らしを守ること』もまた政治・行政の責務なのです。

国の一律の基準によって、横須賀市内全域に避難を呼びかける。それによって、ご高齢の方々も重い障がいのある方々も避難しなければならない。

避難先は、学校の体育館や行政センターなどです。

和室や座布団もありますし、毛布もあります。

けれども、見ず知らずのたくさんの赤の他人と一緒に、そこで一夜を明かすことになります。

その結果、土砂災害は何も起こらずに夜が明けたとします。

「空振りで良かった」

と、あなたは本当に考えてくれるでしょうか?

お一人では歩けないようなご高齢の方々は、ご自宅を離れて寒々しい体育館で一夜を明かしたが故に、体調を崩すかもしれません。人工呼吸器が必要な重度の障がいのある方々は、わざわざ強い雨の中を避難所まで移動したものの、何も無かった翌朝、再びご家族によってご自宅に戻っていくのです。

本当に「空振りで良かった」とあなたは考えてくれるでしょうか?

実は、土砂災害において、いくつかの原則があります。

例えば、「遠くの避難所に逃げるよりも、自宅の2階へ上がる/崖から離れた部屋に移動する」といった原則です。

こうした基本的な原則をしっかりと市民のみなさまに知っていただくことの方が、国のルールにしたがって『避難勧告』を連発するよりも『安心』して過ごしていただけないでしょうか。

それとも、やっぱりあなたは「横須賀も国のルールどおりに空振りでも構わないから『避難勧告』をどんどん出してくれ」とお考えになりますか?

今まではこの問題は、フジノと市民安全部との議論に過ぎませんでした。

けれども今回、わずかな期間のうちに2つの大型台風に直面しました。

この貴重な機会に、ぜひ市民のみなさまにも一緒に考えていただきたいのです。

あなたはどうお考えになりますか?

ぜひあなたのご意見をお聴かせ下さい。よろしくおねがいします。



2014年10月15日・神奈川新聞記事より

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