2009年12月議会・副市長人事に対する質疑

2009年12月14日・本会議

藤野英明です。よろしくお願いします。

はじめに

議案137号と138号、副市長選任についての両議案に対して、一括して質疑を行ないます。

つまり、吉田市長が提案した2名の副市長人事案について、5点にわたって、市長に質問します。

まず、質問に入る前に誤解が無いように僕の質問の意図をはっきりと申し上げます。

これから僕が市長にうかがうことは、マニフェスト実現を41万市民に約束した吉田市長の『政策実現の手段としての人事政策』の考え方についてです。

つまり、「市役所という巨大な組織のリーダー」としての市長は、組織の可能性を最大限に活かすマネジメントを行なう必要がありますが、その手段の1つとしての副市長人事という観点からの質問です。

言うまでもなく、マニフェストの完全なる実現を目指す上で、市長に次ぐナンバー2である副市長の存在は非常に重要です。

巨大な組織が最大限に効果を発揮すべくマネジメントするには、どれほどカリスマ性のあるリーダーであっても1人きりの努力では不可能です。

そこで副市長のリーダーシップや行動力によって、マニフェストの実現可能性が大きく左右されることになります。

だからこそ、あくまでもマニフェスト実現を目指す観点から市長の考えをうかがう質問なのだと、はじめにご理解いただきたいと思います。

逆に僕が市長にお聞きしていないことは、今回提案された2名の方々の「個人としての側面」です。

人柄や生き方などのあらゆるプライベートな側面については全く関係がありませんし、質疑にはそぐわない事柄です。

そこで、吉田市長にも答弁に際してこの2名の方々を念頭には置かずにお答えいただきたいと思います。

それでは質問に入ります。

1.脱官僚を訴えてきたことに矛盾しないのか?

吉田市長は今年6月の市長選挙において、36年間続いた官僚政治を終わらせて『新しい横須賀』の実現を市民のみなさまに約束しました。

実際、選挙においても、3種類お配りしたマニフェストの全てにおいて官僚政治の打破をうたいましたし、「マニフェスト解説版」では表紙にも大きく『脱官僚宣言!』と記しました。

また2枚の法定ビラのうちの1枚にも大きく「脱官僚」の3文字を記しました。

そうした経緯からしても、ナンバー2である副市長人事では、例えば、「外部の民間企業出身の方を登用するのではないか」と多くの市民の方々がイメージしたのは当然のことでした。

しかし、9月と11月の2回の内内示において、吉田市長が副市長候補として名前をあげた方々は、本市の官僚OBでした。

「脱官僚を訴えた吉田市長が、何故、官僚OBを登用するのか」と多くの疑問の声が出されました。

けれども今回提案された2名も、現役の官僚の方々でした。

『脱官僚』を掲げた吉田市長であるにも関わらず、これまでの本市の行政に深く関わりのある方々を選んだことに、吉田市長の脱官僚宣言に共感して投票した方々が強い違和感を覚えたのは当然のことです。

ましてや吉田市長に投票をしていない市民の方々であれば「脱官僚宣言とは単に選挙向けのキャッチフレーズだったのか」となおさら疑問に感じていることでしょう。

したがって、吉田市長には説明責任を果たす義務があります。

例えば、「マニフェスト実現を果たす為には現役の官僚であろうと官僚OBであろうと市役所の現実を深く知っている存在こそ必要なのだ」とか、吉田市長自身の考えをきちんと説明すべきです。

そこで、第1の質問です。

【質問1】
『脱官僚』を市長選挙のテーマにしてきた吉田雄人市長が何故あえて現役の官僚を副市長に選んだのでしょうか。

自らが掲げた『脱官僚宣言!』と矛盾を感じていないのでしょうか。

市長の考えをお聞かせ下さい。

2.官僚文化に自分が染まらないと言えるのか

就任からわずか半年も経っていないにも関わらず、すでに吉田市長がこの市議会の場で、時に蒲谷前市長よりも「官僚的な答弁」をすることに失望している市民の方々もたくさんいます。

悪い意味でどんどん吉田市長が「官僚的」になっていくことに、僕自身も強い懸念を持っています。

それにもかかわらず、、市長に最も近い立場である副市長に現役官僚を置くことで、市長自身が官僚文化に染まってしまわないのか。

今までの市長とは違う改革を本当に実現できるのか。

とても不安があります。

そこで、第2の質問です。

【質問2】
たとえ副市長が現役の官僚や官僚OBであっても、「悪しき官僚文化」に吉田市長自身が染まることは決して無く、必ずマニフェストの実現ができると約束できるのでしょうか。

市長の考えをお聞かせ下さい。

3.何故、外部の民間企業から登用しないのか

さて、市民の方々の多くは、脱官僚政治を掲げた吉田市長であれば、改革派としてこんな人事を行なうのではないかという期待と具体的ないくつかのイメージを持っていました。

そうした想いに対して、市長の考えをお聞かせ下さい。

まず、最も多かった意見としては、

「官僚文化を打破するには民間企業で経営に従事してきた方々を登用することで、旧来の市役所には無い民間の企業文化やスピード感ある経営手法を市役所へ持ち込むことが必要だ」

というものでした。

当然、それは僕も同じ想いでした。

市役所職員全体の意識を変えるには時間がかかりますが、経営陣全体を刷新することが最も有効な手段であることは言うまでもありません。

そこで市長にうかがいます。

【質問3】
副市長は『外部』から『民間企業』出身の人材を選ぶべきだと吉田市長はお考えにならなかったのでしょうか。

お答えください。

4.内部から抜擢人事を行なうべきではなかったか

市役所の中にも優秀な人材はたくさん存在していますから、2名の副市長とも『外部』から選ぶのではなくて、1名は市役所『内部』から選ぶのも当然のことだと僕自身は考えてきました。

ただし、36年間の官僚出身の市長のもとで長く勤め続けてき部局長クラスの方々は、すでに従来の官僚文化に染まりきっていると考える市民の方々が多いのは当然のことでしょう。

だからこそ『内部』から人材を登用するならば、

「官僚文化に染まりきっていない若手の熱意ある人材を抜擢すべきだ」

と僕は考えてきました。

そうした人材を登用するのであれば、『脱官僚宣言』とも矛盾しないはずです。

優秀な人材であっても埋もれさせてしまう「年功序列」の慣行がまだまだ一般的な日本の風土の中で、吉田市長ご自身が若くしてリーダーになりましたから、優秀な人材は勤務年数とは関係ないことを身をもって知っていたはずです。

そこでうかがいます。

【質問4】
市職員にはとても優秀な若手がたくさんいる中で、マニフェスト実現に全身全霊をかけるというやる気のある若手職員を副市長に抜擢すべきだと吉田市長はお考えにならなかったのでしょうか。

お答えください。

5.女性を積極的に登用すべきではなかったか

そして、最後にうかがいたいのは『男女共同参画社会の実現』という観点からです。

僕は、蒲谷前市長が副市長と教育長に女性を登用したことをとても高く評価してきました。

そもそもこのお2人の女性は「女性だから」登用されたのではなく、「人材として優秀であったから」こそ登用されたと僕は受け止めてはいます。

しかし、一方でお2人が女性であるという事実は、男女共同参画社会の実現という観点からは「象徴的な大きな意味合いを持っていた」ことも事実です。

  • 市役所という巨大な組織のナンバー2に女性が就任したこと。
  • 教育委員会という教育行政のトップに女性が就任したこと。

この2つの人事は、いまだ男性があらゆる意味で優遇されている男女共同参画が実現していない我が国において、「ガラスの天井」と戦いながら働く女性のみなさんにとって、本当に大きなメッセージだったと僕は考えています。

それが今回、副市長案の2名共が男性であったことは本当に残念でした。

  • 1度目の内内示においても2名ともが男性。
  • 吉田雄人市長の後援会の新しい役員も全員が男性。
  • さらに今回の副市長人事案も2名ともが男性。

という事実から、

僕は吉田市長には『女性の積極的な登用』という観点が欠けているのではないかと感じざるを得ませんでした。

そこで市長にうかがいます。

【質問5】
優秀な人材であると同時に女性である方々は『外部』にも『内部』にも多数存在している中で、男女共同参画社会の実現を目指す上でも、2名の副市長のうち1名は女性を選ぶべきだと吉田市長はお考えにならなかったのでしょうか。

お答えください。

以上、5点について、市民のみなさまが納得できるように、市長は説明責任をしっかりと果たしていただきたいと思います。

これで僕の質問を終わります。

市長の答弁

御質問ありがとうございました。

まず、冒頭に申し上げたいことがあります。

私の申し上げる『官僚』とは、国の中央政府の官僚のことであり、市役所でともに働く職員の方々を官僚とは考えていません。

そういう意味では、矛盾は感じていません。

今、激動の時代の中で、官僚が市政のトップを担うのはふさわしくないと考えています。

その中で「脱官僚宣言との矛盾を感じていないのか」との質問をいただきました。

本市では、国の中央政府出身の官僚の方が36年間も市政のトップである市長を担ってきた事実があります。

脱官僚はそれを変えるところから始まっています。

そういう意味で、今回市の職員から2名を選んだことについては、私は官僚を選んだという認識は持っていません。

次に、「悪しき官僚文化」に市長自身が染まることはないのか、マニフェストの実現ができると約束できるのかという御質問をいただきました。

先ほども申し上げましたが、私は市の職員をして官僚とは考えていません。

マニフェストは私の横須賀のまちをよくしたいという思いであり、マニフェストの実現は市長である私に課せられた使命であると思っています。

副市長への選任をお願いしているお2名人に対しても、マニフェストの実現が使命であることを確認させていただいています。

官僚文化をつくり上げていくのはトップの姿勢です。

それについては、私が市政のトップに立ち、変革をしていこうと考えています。

次に、副市長は外部からの人材を選ぶことは考えなかったのかという御質問をいただきました。

私は、市役所を市民の役に立つところにしたいと思っています。

そのためには、マニフェストの実現が求められていると考えています。

市長と副市長がともに同じ方向を見据え、ともに手を携えて市政を運営していかなければいけません。

民間企業出身の人材登用について、確かに頭をかすめたことがありました。

しかしながら、今の私には行政実務や行政運営に精通しているパートナーの選出が最善であると考えています。

次に、若手職員を副市長に抜擢すべきだと考えなかったのかという御質問をいただきました。

今、大きな激動の時期であり、広範囲にわたるマニフェストの実現の取りまとめ役である副市長には、豊かな行政経験と組織のマネジメント能力が求められていると考えています。

そのため、今回、部局長経験の豊かなお2人を提案させていただきました。

しかしながら、これからの市政運営には若手職員の方たちの力が必要です。

事業の推進役やプロジェクトリーダーに若手職員の登用を行っていきたいと考えています。

次に、2名の副市長のうち、1名は女性を選ぶべきだと考えなかったのかという御質問をいただきました。

今回の副市長の選任に際しましては、優秀な人材の登用をするべく人選を進めてきました。

結果として、女性の登用に至らなかったということについては、残念であると考えています。

今後、能力の高い女性職員の登用については、積極的に行っていきたいと思います。

最後になりますが、私は中央政府の方々や民間企業出身の方々を否定するものではありません。

今の私の補佐役として、地方行政の運営にたけた方が望ましいと考えています。

そのため、今回の副市長については、中央政府出身でもなく、また、民間出身でもなく、庁内から選び提案をさせていただきました。

以上です。

採決の結果

副市長人事の2議案への投票結果は、下の通りです。

【議案第137号】
・賛成40名
・反対1名=藤野 英明

【議案第138号】
・賛成36名
・反対5名=藤野 英明、ねぎしかずこ、大村 洋子、井坂 新哉、瀧川 君枝

後日談

フジノのこの質疑をはじめ、上地議員と井坂議員による討論などが翌日の朝日新聞で報じられました。

2009年12月15日・朝日新聞より

2009年12月15日・朝日新聞より


また、最終的に副市長に選ばれた2人について、神奈川新聞が紹介しました。

2009年12月15日・神奈川新聞より

2009年12月15日・神奈川新聞より