議会では、こんなやりとりしています

動画で質問の様子をみることができます。
市議会HPの日程平成21年3月25日をご覧下さい。

2009年3月・予算議会 本会議(3月25日)、議案への討論


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 藤野英明です。

 議案第21号「平成21年度横須賀市一般会計予算」に
 反対の立場から討論を行います。



 反対の理由としてまず「個別の事業」について
 各論を申し上げるのではなく、

 来年度予算案を編成するにあたって、
 蒲谷市長が横須賀の未来をどのようにしたかったのか、という
 議案の根っこにある蒲谷市長の「想い」に対して

 これまで蒲谷市長が予算議会で行なった答弁などを通じて、
 僕の見解を申し上げたいと思います。

 2005年9月号の広報よこすかの市長コラム「月下独酌」において
 「三惚れ」というタイトルで
 自治省の先輩から後輩に語り継がれている教訓として
 女房に惚れよ、仕事に惚れよ、土地に惚れよ、
 これが「三惚れ」だと市長は書いておられます。

 しかしながら、「土地に惚れよ」という点について

 つまり、横須賀に惚れているのか、
 横須賀に暮らす「人々」を愛しているのか、
 横須賀の「大地」を大切に感じているのか、
 蒲谷市長はそれを実現しておられるのか、

 その姿勢に僕は大きな疑問を感じています。



 まず、何よりも挙げねばならないのが、
 今回の予算議会での質疑で明らかになった
 「自治基本条例の策定」に対する、
 あまりにも否定的な蒲谷市長の姿勢
です。

 僕は、沢田前市長とはハコモノなど
 いくつかの決定的な意見の違いこそありましたが

 地方分権の時代にある今の日本で、
 横須賀市こそが地方分権のフロントランナーになるのだ、
 という沢田前市長の気概は尊敬していました。

 沢田前市長のもとで、
 いくつもの先進的な条例などが作られたことは
 先輩議員のみなさまはご承知のことですからここでは申し上げませんが、

 あえて1点だけ紹介させていただくならば、
 蒲谷市長が折に触れて述べられる「はぐくみかん」ですが

 この「はぐくみかん」の根幹をなす「児童相談所」の設置は
 本来であれば中核市には設置することができませんでした。

 それを設置できるように国に対して熱心に働きかけたのは、
 まさに沢田前市長です。

 はぐくみかんの活躍がこれから功績をあげるとするならば
 誰よりもまず「現場で必死に働く職員の方々」を称えるべきですが、

 その生みの親である沢田前市長と
 彼の地方分権にかける執念を僕たちは思い出し、
 その想いに強く感謝しなければいけないと僕は考えています。

 このように、地方分権の時代において、
 国や県よりも横須賀市がやるべきことは
 横須賀市に『権限』と『予算』を返してもらう。

 より市民のみなさまに近い存在である横須賀市が行なう方が
 もっとスピーディーに、もっと柔軟に、
 もっと良い取り組みができることは
 国でも県でもなくわが横須賀市が行なうのです。

 その方向性の全てを肯定するものではありませんが
 沢田前市長は、三惚れの1つである「土地に惚れよ」を
 まさに実現していたと思います。

 沢田前市長の著作や論文をいくら読んでも
 どこにも横須賀を一番星にするとは述べてありませんでしたが、

 その市長の活動を観れば、新人議員の僕でさえ、
 地方分権において沢田市長は
 横須賀を一番星にしたいのだとよく理解できました。



 かたや蒲谷市長は、3月2日の本会議で行なわれた
 研政よこすか市民連合の岩崎絵美議員が行なった
 自治基本条例に対する質疑に対して

 横須賀市は今、自治基本条例を制定する気は全くない
 という主旨の答弁を行いました。

 ・自治基本条例についてその効力を認めないので
  制定は考えていない。

 ・すでに自治基本条例を制定した他都市への
  アンケートを行なった結果、その効果はあまり見られない
  といったネガティブなものであった


 という主旨の答弁をしたのです。

 この発言はまさに問題発言で、僕はこの答弁を聞いた時、
 いったん議事進行をストップすべきではないかと感じました。

 横須賀市がフロントランナーとして
 道を切り拓いてきた地方分権の伝統、

 その地方分権が進む中で、
 市民自らが自分たちの町は自分たちで作るという想いは高まり、
 それを条例化した「自治基本条例」を持つことは
 すでに全国で当たり前のことになってきました。

 横須賀の伝統を捨てると同時に
 全国で行なわれている
 市民の自治への想いや活動を切り捨てた市長答弁でした。

 しかも先行自治体が「効果は無い」と返事をした、というアンケートですが、
 3月17日の総務常任委員会での
 矢島真知子議員の質疑によって明らかになったものですが

 なんと平成17年度に実施した古いアンケートだったことが
 分かりました。

 現在はすでに平成21年です。

 こんなアンケートでは答弁の根拠になりません。

 市民の代表である市議会の、
 予算議会での質疑というその重さを考えたならば
 再度、現時点での調査を行なうのが当然ではありませんか。

 にもかかわらず、平成17年の調査で「良し」としたということは
 市民の代表である市議会を軽視する姿勢が
 ハッキリと見えました。

 同時に、自治基本条例は最初から作る気が蒲谷市長には無い、
 だから最新の状況の調査を命じなかったのだ、
 と明らかになりました。

 自治基本条例は自治体の憲法です。

 地方自治は民主主義の学校だと
 かつて僕は教科書で習いましたが、

 民主主義の学校である地方自治をさらに深めていくのがこの
 自治基本条例の策定を行なっていくプロセスにこそあるのです。

 それを市民のみなさんと一緒に行政・政治が一体となって
 作っていくからこそ本当の自治意識が高まっていくのです。

 その効果を、つまり『市民の自治の力』を
 市長は信じていないのでしょうか。



 蒲谷市長は市長になる以前は、国の自治省に入り、
 全国各地の地方自治体で勤務したそうですが
 広報よこすかなどでしばしばこう述べておられます。

 「自治省在籍約30年のうち実に3分の2近くの年数は、
  宮城県庁や札幌市役所など全国各地の地方自治体での勤務であり、
  文字通り地方自治一筋に歩んできた」

 このように述べておられるにもかかわらず、
 まちの憲法である自治基本条例を策定する意義を
 全くご理解いただけないとは残念です。

 僕の信じる地方自治とは、
 このまちに暮らす人々の生活や想いに寄り添い、市民の力を信じることです。


 こうした市長の姿勢が根っこに流れている来年度予算案ですから
 残念ながらこのまちをどうしていくのか、
 個別の取り組みを見ていっても
 希望の光が全く見えない予算案になっています。

 具体的な各論を全て申し上げる時間はありませんが、

 例えば、消費期限をごまかした野菜などを
 利用者に提供していたことで
 大きな問題となった『長井海の手公園ソレイユの丘』に対しては

 委託している民間事業者に対して1円の減額をすることもなく、
 来年度予算案でも4億円もの税金を支払い続けます。

 これは一方で、電子入札システムの導入によって
 横須賀市は徹底的に談合を排除して公平性を勝ち取ると共に、
 1円でも安く、かつ良質なサービスの提供をめざしてきたこととは
 あまりにも対照的です。

 そんな市長の姿は、
 一部の民間企業へのえこひいきにしか写りません。

 さらに、美術館問題については、来年度予算案においても
 赤字は4億2000万円にものぼります。

 これだけの税金を美術館につぎこむならば、
 もっと市民の暮らしを守ることに使うべきでした。

 市長は自らのマニフェストを反映させて作った
 新世紀ビジョンの中で将来像2として
 「新しい芽が伸びゆく社会〜子育て世代に選ばれるまち〜」を掲げていますが、

 来年度予算案には
 子育て世代に対する大きな配慮がある訳ではありません。

 例えば、ひとり親家庭に対する支援の在り方はいかにあるべきかを
 2年間にわたって検討会を行なってきましたが、
 その成果が全く反映されていません。

 18歳未満のこどもがいる全ての世帯の中で、
 母子世帯がどれだけあるかという母子世帯比率は、
 横須賀市では10.5%です。

 平成18年3月末現在で、
 神奈川県内の市では最も高い数値となっています。

 県内市で最悪の数値なのに、
 何も本市は新たな取り組みを行なわないのです。

 さらに、離婚の大きな原因となっているDVですが
 昨年1年間に神奈川県警に寄せられたDVの相談は
 DV防止法の施行以来、過去最高だったことが分かりました。

 昨年12月議会で僕は
 DVセンターの設置を横須賀も行なうべきだと提案しました
 それも来年度予算には全く反映されておりません。

 本市のDVへの対応は、
 非常勤の婦人相談員の方々の献身的な働きによって
 何とかもっているというのが実態なのが、
 市長には見えないのでしょうか。

 さらに、DVから逃れた母子の為の母子生活支援施設が
 横須賀には民間によって運営されていますが
 すでに老朽化がいちじるしく、
 耐震基準にも満ちておらず、
 ここから母子が生活再建をはかるには
 あまりにも厳しい状況があります。

 市長はこの施設に足を運んだことが1度でもおありでしょうか。

 けれども横須賀市はこうした人命にかかわる施設に対しても
 建て替えを行なうような動きは一切ありません。

 いざという時のセーフティネットが欠けたまちでは
 子育て世代に選んでもらうのは難しいといわざるをえません。



 また、新世紀ビジョンの将来像の3として
 「長寿を楽しめる社会」を掲げていますが

 かねてから指摘しつづけてきたとおり、
 特別養護老人ホームへの待機者約1800人に対して
 新たに300床の増加だけでは全く足りません。

 本市においても、重度の障がいや脳出血などによって
 慢性期になった高齢者の多くはこのまちには居場所が無い為に、
 他都市の病院を必死に探してはしばらくだけ安心して
 また転院先を探すという終わりの無い悪循環の中にいます。

 とても長寿を楽しめる社会とは言えません。

 むしろ「早く死んでしまいたい」というご家族の言葉を
 僕は何度も聴いてきました。

 僕もそうした家族の1人ですが、今回の予算を見る限り、
 自分がこのまちで長生きをしたいとは感じられません。

 政治の本来の機能である
 所得の再分配機能というものを正しく使えば

 弱い立場に追い込まれた人、
 自らの力では立ち上がれない人、
 スタートから走ることができない人をサポートすることができます。

 共にまちをつくり、子育てを喜び、
 長生きをみなで祝うことができます。

 しかし、来年度予算案には
 そうした『希望の光』は見えませんでした。

 政策の優先順位があまりにも納得できません。

 その根っこには、最初に述べましたように
 地方分権、地方自治、市民自治、
 このまちは市民が主役であるという根本的な理想と信念が
 蒲谷市長には存在していない
 ということに原因があるのではないでしょうか。

 もしも本当に横須賀を一番星にしたいと願うのならば
 今回のような予算にはならなかったのではないかと僕は考えています。



 したがいまして、議案第21号
 「平成21年度横須賀市一般会計予算」に反対するものです。

 以上をもちまして、僕の反対討論を終わります。

 ありがとうございました。


フジノの討論もむなしく
議会の多数派はフジノと逆の結論を出しました。

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