市区町村議会の政治家たちは、国の動きをもっと追わねば意味が無い
社会保障制度が変わる時、市区町村に改正案が出た時はもう終わりです。
多くの市区町村議会では福祉に関心の強い議員たちがこうした議案に反対をしますが、そこで反対しても「もう遅い」のです。
国の法や制度が変わった後に市区町村議会で反対しても、大きな流れはもう決まった後(決定済)なのですから。
つまり、闘うべきタイミングは、国の審議の段階です。
市区町村議会に出された議案を読んでからいくら質疑をしたとしても後の祭りなのです。
国での闘いで決着をつけられなければ、もはやいち市区町村議会で反対しても現実を変えることはできません。
それでは市民のみなさまの暮らしを守ることはできません。
だから、いち市議会議員にすぎないフジノですが、社会保障に関する審議会は国も県も可能な限り全て追っています。
そうでなければ、無意味だからです。
そんな訳で、フジノはふだん『厚生労働省』の審議会の資料の大半は必死に読みこんでいます。
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でも、率直に申し上げて『財務省』の資料には長年にわたって全く目を通さずにきました。
振り返れば、2005年、フジノが国の資料や審議会に深く関心を持つようになった『障害者自立支援法』の闘いの時からそうでした。
「『社会保障・社会福祉』=『厚生労働省の審議会』で決まる」
という『安直な考え方』になってしまったのです。
でも、違います。
ここ数年間の大学院で中村秀一先生のもとで学んだおかげで、フジノは自らの政策研究の仕方を変える必要が分かりました。
社会保障関係費の抑制策(要するにサービスカット)の多くは、むしろ『まず財務省が事務局となっている審議会で方向性が決まる』のです。
つまり、厚生労働省ではなく財務省の資料をもっと読み込む必要があるのです。
財政制度等審議会・財政制度分科会の資料を読みました
そのような訳で、フジノはここ数年は『財務省』の審議会資料が発表されるたびに目を通すようにしています。
例えば、4月27日に開催された『財政制度等審議会・財政制度分科会』の資料です。
残念ながらまだ財務省のホームページには『議事要旨』も『議事録』も掲載されていません。
けれども資料を読むだけでも分かります。
財務省の意向は、はっきりと明記されているからです。
「介護保険」がまたサービス低下へ進もうとしている
フジノが資料から拾った文章をご覧下さい。
財務省が示した論点
- 社会保障制度改革は、国民皆保険を維持するため、団塊の世代が後期高齢者になりはじめる直前の2020(H32)年度までに受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度構築することを目的として進める必要。
- 社会保障関係費の伸びは、高齢化(人口構造の変化)に伴う伸びとその他の要因(医療の高度化等に伴う単価増等)に伴う伸びに分かれる。このうち、「高齢化に伴う伸び」はやむを得ない増だが、「その他要因に伴う伸び」に相当する部分は、社会保障以外の経費と同様、制度改革や効率化等に取り組むことにより、伸びを抑制していくことが必要。
- 2020(H32)年に向けて、国民皆保険を維持するための制度改革に取組み、経済雇用情勢の好転やこれまでの改革等の効果、医療の効率化などの取組みの効果と相まって、今後5年間の社会保障関係費の伸びを、少なくとも高齢化による伸び相当の範囲内としていくことが必要。
- 夏の財政健全化計画においては、上記のような社会保障関係費の伸びに関する大きな考え方、改革・効率化等の柱とそれに沿ったメニューを盛り込み、その上で、年末に具体的な改革・効率化等の工程表を策定することとする必要。
*文章中、赤太文字にしたのはフジノです。
分かりづらい文章ですよね...。
つまり、『2020年度(あと5年以内)に向けて社会保障をさらにカットする為の新たな財政健全化計画』をこの夏に発表する、というのです。
そして、その具体的な中身は、この年末にスケジュールとともに示す、とのことです。
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それでは具体的な中身として財務省が考えている内容はどのようなものか?
このような具体案が記されています。
- 国民皆保険を維持するための制度改革
(1) 公的保険給付範囲の見直し
(2) サービス単価の抑制
(3) 負担能力に応じた公平な負担 - 医療の効率化
(1) 医療提供体制の改革
(2) 医療の無駄排除、予防の推進等
さらに細かい内容も資料では記されています。
そんな中で、フジノが今回最もショックだった資料がこちらです。
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画像では文字が読むづらいので、改めて下に記します。
また、生活援助の内容は、掃除の占める割合が最も多く、次に一般的な調理・配膳が多い。
(※) 生活援助1回(45分以上)の利用で利用者負担(1割負担)は250円程度。
→ 軽度者に対する生活援助は、日常生活で通常負担する費用であり、原則自己負担(一部補助)の仕組みに切り替える必要。
→ また、2015(H27)年度から地域支援事業へ移行した予防給付(訪問介護・通所介護)についても同様の観点からの見直しを行う必要。
これらにより、事業者間の価格競争の促進と、サービスの効率化、産業の発展が図られる効果も期待できる。
*赤太文字にしたのはフジノです。
これを『分かりやすいフジノ訳』に直しますね。
軽度者の方々にも大切な介護サービスとして『訪問介護』(ホームヘルパーのみなさんがして下さっているサービスです)があります。
ホームヘルパーのみなさまには、自宅の部屋などのお掃除や、毎日のごはんの調理などもしてもらっています(これを『生活援助』と呼びます)。
財務省は
「掃除や調理は誰だってやらねばならないものだから、わざわざ『介護保険』のお金を使うのはおかしい」
「『生活援助』に必要な費用は、一部だけ補助は出すけれど、基本的には全額自己負担にすべきだ」
と考えているのです。
このムチャクチャな理屈を正当化する為に、財務省ではいろいろなデータやグラフを使っています。
でも、そもそも要支援1・2でも要介護度1・2でも認知症の方はおられますし、ひとくくりに『軽度者』と決めつけることなんかできません。
ご自分では掃除も調理もできない人々がたくさんおり、『生活援助』は不可欠なサービスです。
さらに、身体が動かせる方々の場合、ホームヘルパーのみなさまと一緒に、身の回りの掃除やごはんを作ることは大きなリハビリ効果があります。
一緒に料理をしたり掃除をしたり身体を動かしていくことで、要支援の人は支援がいらなくなったり、要介護の人は要支援にリカバリーしていくのです。
それなのに、財務省はあくまでも財政だけの論理で必要なサービスをばっさりカットしようとしています。
もちろん、お金持ちならばサービスを全額自己負担(自腹)でも払えるからオッケーかもしれません。
けれども、ほとんどのご高齢の方々がそんな生活援助サービスを全額自己負担で支払える訳がありません。
結局、生活援助サービスを自己負担では払えない人が圧倒的多数で、掃除や調理ができない方々があふれることになります。
そして、要支援の人は要介護へ、要介護1・2の人は要介護3・4・5へと悪化してしまうのです。
こんな介護の基本さえ無視して、国の財政を見かけだけ立てなおそうとしているのは、政策として最悪です。
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どうか、全国の市区町村議会の政治家のみなさま、介護が必要な当事者のみなさま、ご家族のみなさま、社会福祉に携わる全てのみなさま、一緒に学んで下さい。
そして、今から一緒に闘って下さい。
今日フジノは資料の一部しかご紹介しませんでした。
けれども介護保険のカットは他にもありますし、障がい福祉サービスのカットも生活保護のさらなるカットも明記されています。
闘うのは、今です。
夏が過ぎて財政健全化計画が出されてからでは遅いのです。
年末に具体的なスケジュールが出された時にはもはや時遅しなのです。
こんな財務省の財政制度等審議会が今まさに行われていることを知って下さい。
フジノは危機感でいっぱいです。
どうかこの危機感があなたとも共有できますように...。