長時間の白熱した議論の末に、ついに受賞者を決定しました!/第11回リリー賞選考委員会

華やかな「表彰式」の前に、地味で苦しい「選考作業」があります

先月お知らせしたとおり、今年も3月に『リリー賞』が開催されます。

第11回リリー賞表彰式のおしらせ

第11回リリー賞表彰式のおしらせ


『表彰式』には芸能人のプレゼンテーターやたくさんのマスメディアも訪れて、とても華やかで盛大に行われるのですが、その前に、地味で地道な作業が待っています。

そう、『選考』です!

フジノは2010年から6回連続で選考委員会のメンバーに就任しています。

しかし、フジノにとって、この選考作業ほどつらいものはありません。

委員を経験して何年経ってもそのつらさは全く変わりません。

『選考委員の責任の重さ』は繰り返し書いてきたとおりですが、まさにリリー賞は『受賞した人のその後の人生』を変えてしまうのです。

受賞とともにたくさんのメディアの取材が殺到します。しかも、直後だけでなく、その後も何年にもわたって取材が来ます。

賞金100万円が出るのですが、それを元手にして過去の受賞者のみなさんは大学院に進学したり、資格を取ったり、新しい会社を起こしたり、大きく人生が変わります。

だから、全員を選びたい。

でも、20候補の中からわずか4組だけしか選べないのです。

フジノは他の賞でも選考委員になったことがあるのですが、リリー賞は他の賞とは全く異なるのです。

事務局から選考の為の資料が送られてくると、正直なところ、吐き気がしてきます。

それでも何十回も書類を読みこんで、インターネットも嫌というほど検索しまくります。

そして、自分なりに20候補それぞれに採点をします。

その後、『選考委員会』のみんなで集まって、議論をして決定をするのです。



今回は92件もの応募がありました

今回は、全国から92件(当事者部門53件、支援者部門39件)もの応募がありました。

これを事務局(NPO法人地域精神保健福祉機構コンボ)が第1次審査を行なって、それぞれの部門ごとに10候補に絞ってくれました。

当事者部門と支援者部門、合計20候補の書類は100ページを超えます

当事者部門と支援者部門、合計20候補の書類は100ページを超えます


この20候補について、フジノたち選考委員は事前に大量の書類を読み込んで、採点をします。

申請資料だけではなくて、さらに活動を深く知る為にインターネットで検索したり、事務局と意見交換をしたりしながら、全候補に採点を行ないます。

そして、採点の集計結果だけではなく、実際に委員メンバーみんなが集まって『選考委員会』を開いて議論をします。

こうして、最終的に受賞者を決めるのです。



今年も「リリー賞選考委員会」が開かれました

今日、ついに『選考委員会』が開かれました。

「選考委員会の開催のおしらせ」より

「選考委員会の開催のおしらせ」より


会場は、日本イーライリリー株式会社(港区赤坂)です。

後ろのビルの11階にイーライリリーが入っています

後ろのビルの11階にイーライリリーが入っています


会場に到着。

事務局であるコンボのみなさんと、イーライリリーの広報担当のみなさんも含めて20人くらい集まります。

11階の会議室からの眺め

11階の会議室からの眺め


選考委員メンバーは、以下の8名です。



今回もフジノは、精神保健医療福祉の先達の中で、最年少…(涙)

選考委員のみなさん

選考委員のみなさん


選考委員のみなさんにご挨拶をしてまわりながら、改めて「みんなすごい先輩方ばかりだけれど、それでも絶対に気後れしてはいけない」と思い直して、気合いを入れました。



佐藤光源先生の世界精神医学会JeanDelay賞受賞をお祝いしました

ところで、選考に入る前に、今年3月、佐藤光源先生が世界精神医学会から大変栄誉ある『Jean Delay賞』を贈られたことを、みんなでお祝いしました。

日本精神神経学会のウェブサイトより

日本精神神経学会のウェブサイトより


かつて精神分裂病と呼ばれていた疾患を統合失調症という名前に変えることができたのは、佐藤先生の大きな功績です。

インターネット上には現役の精神科医が「名称変更は大した効果が無かった」と批判的な人がいます。佐藤先生の受賞にも文句を言っている人がいるのも知っています。

実際、今でも『統合失調症』に対する大きな差別・偏見・スティグマが存在していることは、フジノ自身、痛いほど理解しています。

しかし、それでもこの名称変更によってどれほど多くの人々が救われたかも、同時にフジノは知っています。

佐藤先生の功績は、単に名前を変えたことではありません。

差別・偏見・スティグマを無くす為に人生を捧げて来られたことそのものを、世界精神医学会は評価したのだとフジノは考えています。

佐藤先生、『WPA JeanDelay賞』の受賞、本当におめでとうございます。



白熱した議論がスタートしました

さて、選考委員長である大島巌さん(日本社会事業大学・学長)のご挨拶から、委員会がスタートしました。

大島巌先生(日本社会事業大学・学長)のご挨拶

大島巌先生(日本社会事業大学・学長)のご挨拶


みなさん、本当に穏やかな優しい人ばかりなのです。

それでも精神保健医療福祉とリカバリーを深く愛している方々ばかりなので、それぞれの候補に対する思い入れもハンパではありません。

モニターに採点結果を映し出して参考にしつつも、それぞれの候補への思い入れをみなさん語り合っていきます

モニターに採点結果を映し出して参考にしつつも、それぞれの候補への思い入れをみなさん語り合っていきます


穏やかながらもとても白熱した意見交換と議論が続きました。

フジノが尊敬してやまない宇田川さん。切れ味の鋭い意見がびしばし飛び出します。

フジノが尊敬してやまない宇田川さん。切れ味の鋭い意見がびしばし飛び出します。


まずは『当事者部門』の審査です。

ひとりずつ、推薦する候補への想いを語っていきます。

長い意見交換の末に、やがて、ある候補へみんなの意見が一致していきそうな流れができてきました。

高橋先生のユーモアあふれる語り口に、笑ってしまった中村先生

高橋先生のユーモアあふれる語り口に、笑ってしまった中村先生


しかし、それをくつがえして別の候補を推薦する熱心な意見が述べられると、場の空気が一変しました。

左から、事務局の桶谷さん、佐藤先生、執行さん

左から、事務局の桶谷さん、佐藤先生、執行さん


こうして、どなたを受賞者として選ぶかの議論は本当に白熱して行われました。

今年からリリー賞の担当者になられた新しい広報課長さんが

「ここまで熱心に議論がなされていることを、社内にいながら私自身、知りませんでした。来年からはぜひ社内の人間を傍聴させていただけませんか。リリー賞がどれほどの重みのある賞でどれほどの想いがこめられているものなのか、社員自身がもっと知るべきだと思います」

と、閉会後におっしゃったほどです。

途中にある委員の方から

「受賞者ひとりあたり賞金100万円、4名の受賞者で400万円の予算だけれど、今年は受賞者を増やしてひとりあたりの賞金を減らしてはどうか」

というご意見が出ました(それくらいに多くの候補が良かったのです)。

フジノも今回はかなり積極的に発言しまくりました

フジノも今回はかなり積極的に発言しまくりました


それでもフジノからは

「先生のおっしゃることは痛いほど分かるのですが、それでも『リリー賞』の賞金100万円という重みを変えることはおかしいと思います」

と反論しました。

こんなやりとりがたびたび続く中、タイムリミットがやってきました。

『当事者部門』の受賞者は、やはり募集要綱どおり、2組のままとしました。

そして、最終的には選考委員会のみんなで合意した2組の受賞者を決定したのでした。



こうして受賞者4組が決定しました

ここまでですでにクタクタなのですが、続いて『支援者部門』の議論がスタートしました。

そして再び、穏やかながらも熱い議論が繰り広げられたのです。

こうして、当初の予定時間を大幅に上回ってしまったものの、みんなが全ての意見を言い尽くし、語りつくし、最後には納得しあって『支援者部門』の受賞者を決定しました。

この後、横須賀にとんぼ返りして防衛大学校まで行かねばならないフジノなのですが、ヘトヘトにはなってしまったのですが、充実感でいっぱいでした。

疲労は大きいものの充実感も大きかったフジノでした

疲労は大きいものの充実感も大きかったフジノでした


さあ、次は、3月20日の『表彰式』です。

ぜひたくさんの方々にお越しいただきたいです。

こころからお待ちしております!



当事者部門の受賞者2名をご紹介します/記念すべき「第10回リリー賞」の表彰式でした(その2)

(この記事は『その1』から続いています)

表彰式、スタート

表彰式には150名の方々が来場し、会場は満員となりました。テレビ局も取材に来てくれました。

マスメディアも取材に来てくれました。

マスメディアも取材に来てくれました。


まず、受賞者の名前が発表されて、取り組みを紹介するビデオが流されました。

次に、選考委員が講評のコメントをし、最後に受賞者ご本人がステージに登壇してスピーチをしました。

表彰式に出席したフジノ

表彰式に出席したフジノ


選考委員としてフジノも講評をさせていただきました。大変、光栄です。

それでは、受賞者をご紹介していきますね。

*紹介の文章は、表彰式で配布されたパンフレットから引用しました。



おかよしこさん(よっちゃん)

まず、大阪府のおかよしこさんです!

統合失調症や様々な体験を、音楽・絵画を用いたひとり芝居や文章など多様な創作表現で発表。

精神障がいのある方々に対する差別や偏見、固定観念を打ち破り、一人間として、全ての人が生きていることに価値があることを 伝えたいと創作表現活動を行なっている。

活動のユニークさやインパクトのある表現、また「芝居・音楽・絵画など を通じて自分自身をパワフルに表現しているところに『一人間』としての輝きがある」として高く評価された。

『表現者』としての取り組みが高く評価されての受賞となりました。

統合失調症やさまざまな体験などを総合芸術で発表

1995年、留学先の米国で不調を感じ、スクールカウンセラーに相談。精神科を受診するようすすめられたが、どうしたらいいか分からず、そのまま帰国。病気の知識がなく、「『心を覗かれている』イコール『病気の症状』だとわからなかった。」とおかさん(よっちゃん)。

自分で抱え込んだまま放置し、1998年、窓から飛び降りようとしているところを家族に見つかりそのまま入院。これまでに4回入院。

2012年、「納得した生き方をしたい」と、総合芸術を発表するという昔からの夢の実現に向けて、国際障害者交流センターの「夢カナエルプロジェクト」に応募、優秀作品に選ばれた。また、2013年 には「第39回部落解放文学賞」に入選した(はたよしみ著)。



「精神障害者である前に『一人間』なんよ」

精神障がい者としてひとくくりにされることが多いが、精神障がい者である前にひとりの人間であり、「統合失調症をもっている人に、こんな人間もいるよ」とさりげなく伝えている。

ひとり芝居語り部『闇の中、輝く命〜統合失調Show♪♪♪〜』では、精神科病院の体験、信頼できる医師との出会い、仲間との交流など自身の体験を絵画や歌を用いた芝居で表現している。創作は試行錯誤の連続だった。

公開稽古などを行ない、「分からない表現があったら教えてください。」と当事者だけでなく、病気の知識がない友人の意見も聞きながら、必死にあがいて創り上げていった。



『疲れ』『ストレス』『頑張りすぎ度』を測る体温計がほしい

「多くの人との出会いに恵まれたのは宝」と話し、退院後、ヘルパーとして働いていた経験や、2001年より継続している支え合い電話(旧称:ビア・カウンセリング)の活動などから、「自分だけがしんどい思いをしているんじゃないんやな」と気づかされたという。

体調コントロールはまだまだ苦手で、「『疲れ体温計』『ストレス測定体温計』『頑張りすぎ度体温計』が欲しい。『体みなはれ』というサインが目で見てわかったらいいのに」と話す。

今後は、SOSを出して人の助けを借りたり、人と支え合いながら、経済的な基盤と住まいを確保し、自立して一人暮らしができるようになることを目標にしている。



おかさんの受賞スピーチは、会場を沸かせていました。「さすが役者だなぁ」と感じさせられるユーモアあふれる内容でした。

いつかフジノもおかさんの舞台を拝見したいです。



執行泉さん

続いて、福岡県の執行泉さんです!

執行泉さんと桂米團治さん

執行泉さんと桂米團治さん


『経営者』としての取り組みが高く評価されての受賞となりました。

発達障がいと診断されたのは2010年、45歳の時。

長年、自身の障がいに気づかぬまま2003年、経営する餃子専門店で障害者雇用実習の受け入れを開始。

発達障がいと診断された後は、自らの障がいを特性として活かした経営戦略をとり、2011年より障害者雇用のノウハウを他企業に伝授する『ノウハウ移転事業』を始動。

独自の発想で障害者雇用を一事業として成立させている点にインパクトがあり、地域の人気店として社会的評価を得ている点や、その取り組みを他地域にも広げようとしている発展性が高く評価された。

『餃子専門店黒兵衛』を経営する執行さんの取り組みには、フジノは感嘆しまくりでした。

22歳の決意「障がい者雇用」

自閉症の入所施設に勤めていた22歳のとき、入所者が社会で働く場を確保しようと考え、大企業への飛び込み訪問を敢行。

そこで「障がい者が社会で働けるわけがない」と言われたことに反論できず、障がい者も社会で働けることをいつか自分で実証しようと決意する。

縁あって開店した餃子専門店で、2003年より障がい者雇用実習の受け入れを開始。障がい者就労支援センターなど周囲の協力や工夫により課題をひとつずつ克服し、統合失調症、発達障がい、知的障がいのある人々の雇用を実現。

対面販売を通じて、10年にわたり障がい者雇用を地域の人々に説明しながら、障がいへの理解を着実に広げている。



45歳でわかった自らの「発達障がい」

幼少時よりひとりでいることを好み、中学進学後は体調不良が頻発して不登校に。12歳の時、病院で検査を受けるも不調の原因がわからず。

45歳の時、広汎性発達障害(アスペルガー症候群)とADHD(注意欠如・多動性障がい)を併せ持ち、気分障がいもあると診断されるまで、人間関係のトラブルや不注意によるけがなどで、長年生きにくさを感じていた。

自らの障がいがわかり「ある意味安堵した」と語る執行さん。

一方で、当事者の自分が障がい者雇用を今後も継続できるのかと悩む。「従業員が障がいを理解しようとしてくれたことが、次に進む大きな力になった。発達障がいを研究する恩師から『当事者のあなたにしかできない障害者雇用があるのでは』との言葉をいただいたことで、復活できた」という。



障がいの特性を活かす〜障がい者の個性と仕事のマッチング

「『感覚過敏』は障害でも『五感の鋭さ』は餃子店には強み」と語る通り、障がいを特性として仕事に活かすことが障がい者雇用の基本だという。

「ノウハウ移転事業」は、障がいの為に複数の店舗展開が困難な執行さんが、「誰かに代わりに経営してもらえばいい」との逆転の発想で生み出したものだ。



障がいとうまく付き合いながら

月2回の通院と服薬を守り、臨床心理士への相談や五感を休める工夫などで障がいをコントロールしながら、地域に根差した障がい者雇用が全国に広がることを目指している。





(その3に続きます)



記念すべき「第10回リリー賞」の表彰式でした(その1)

70件の応募がありました

『精神障害者自立支援活動賞』、通称『リリー賞』。ついに第10回目となりました。

リリー賞募集のチラシより

リリー賞募集のチラシより


フジノは2010年から5年連続で選考委員を勤めています。

栄えある『リリー賞』の歴史の半分に立ち会ってこれたのだと思うと、とても誇らしく感じます。

『リリー賞』とは?

精神障がいのある方々の社会参加や自立に向け尽力し、地域社会において意欲的に活動に取り組む方々の独自的で優れた活動を社会へ広く紹介することにより、統合失調症をはじめとした誤解や偏見が根強い精神疾患への正しい理解を得る機会となることを目的に、2004年に設立した支援制度です。

『当事者部門』『支援者部門』の2つの部門を設け、精神障がいの当事者だけでなく、分野・立場は問わず、精神障がいのある方々の社会参加・自立を支援している個人・団体を募集しました。
(プレスリリースより)

さらに詳しくは、ぜひ過去のブログ記事をご覧下さい.

2013年9月1日から12月31日まで募集してきた結果2部門合計で70件の応募を頂きました。

2014年に入って、みなさまが送ってくださった応募書類を読ませていただきました。

そのどれもが大切な活動ばかりで、採点には今回もとても悩みました。

今日、表彰式が開催されました

そして今日、表彰式が都内で開催されました。

表彰式のお知らせより

表彰式のお知らせより


選考委員メンバーは午前中に集合して、受賞者のみなさんと顔合わせをかねてお昼ごはんを食べます。

選考の為に読み込んできた応募書類から、受賞者のみなさんのいろいろな事柄は『情報』として頭に入っています。

でも、受賞者のみなさんからじかにお話を伺っていくうちに、その『情報』がさらに活き活きとした『リアリティ』を持っていきます。

「すごい楽しそうだなぁ!」とか「ああ、こんなにご苦労されてきたんだなぁ」とか、お話を聴くほどにワクワクしてきます。

開場前の会場

開場前の会場


選考委員の寺谷隆子先生(フジノの師匠のひとりです)は、受賞者の阪井ひとみさんと意気投合していました。

フジノも、受賞者の執行泉さんのお話を伺っていくうちに、そのお仕事(福岡市にある『餃子専門店黒兵衛』)にとても惹かれていきました。

餃子専門店黒兵衛

餃子専門店黒兵衛


『黒兵衛』はインターネットでの注文も受けているので、さっそく注文してしまいました!

4種類の餃子がネット注文できます

4種類の餃子がネット注文できます


土曜日くらいにはおいしい餃子が届くはずです。楽しみ!

その2へ続きます)