まちの政治家は、こんなことしてます新人議員の活動日記


2003年5月30日(金)のフジノ
● 1時間睡眠での議会運営委員会でした

 今日の午前中は、議会運営委員会に呼びだし
 午後は、本会議でした。

 議会運営委員会の会場は、
 傍聴する人々でいっぱいになっていました。

 あいているイスは1つもありませんでした。

 一般の方の傍聴は、4名でした(10名が定員です)。

 けれども、新聞記者の方々と
 議員で傍聴をされている方々がたくさんいました。

 フジノの答弁が終わって、
 やがて議会運営委員会としての結論が出ると
 傍聴をやめて途中退席される方がたくさんいらっしゃいました。

 だから、フジノのこの問題への関心は
 ほんとうに高かったのだと、はっきりと分かりました。

(つづきはまた後で)



2003年5月28日(水)のフジノ
● 発言通告書をつくりました

 昨日の夜からけさにかけて、
 またもや半分徹夜という状態で、発言通告書を完成させました。


 本会議(議会です)で質問をしたい場合には、
 その会議の2日前の朝10時までに
 『発言通告書』という書類を
 議長宛に出さないといけないのですね。

平成15年5月27日 
 横須賀市議会議長 様
横須賀市議会議員    藤野 英明 印


   発 言 通 告 に つ い て



   別紙のとおり通告します。



受領日時 平成  年  月  日 午前・午後  時  分

 表紙はこんなイメージです。
 これは別にすぐにできるから問題は無いのですが
 大変なのは、別紙の部分です。

 別紙に書く内容というのは、
 市長など「質問したい相手を指定すること」と
 「質問することは何か?」です。

 つまり、質問する内容を書くわけです。

 けれども『質問をする』ということは
 ものすごくその準備がかかるのですね。

 例えば、今回の場合、
 『美術館建設計画の廃止を含めた見直し』の立場から
 沢田市長に質問をするわけです。

 そのために読んだ資料の量は
 すさまじいものがあります。

 もう、本当にすごい量です。

 市議会の議事録だけでも過去5年分は読みました。
 美術館の問題は今に始まった問題では無くて
 一柳さんをはじめ、
 たくさんの議員たちが質問をしてきました。

 読みながら、それぞれの論点と
 市長や市役所側の回答をPCに打ち込んでいきます。
 同時に、矛盾点や納得のいかない点をどんどんメモしていきます。

 また、美術館基本計画という冊子があります。
 これを精読しながら、入場者の数などの予測の根拠などについて
 市に質問をしていきました。

 これらの作業と同時に
 沢田市長のまちづくりについての考えを根っこから知るために
 あらゆる冊子を読みあさりました。

 資料がひたすらに多くて
 どの資料がどの資料とつながっているのかということが
 本当に分かりづらい。もう泥縄式に全てを読んでいくしかありません。

 こういう作業を、転職して1ヶ月も経たないけれども
 もう1人前のプロとしてこなしていかなければいけない訳ですね。
 ほんとまだ議員になってから
 1ヶ月さえ経ってないんだよなあ...。

 正直なところ、すさまじい仕事の量です。

 本業である福祉のために勉強をしながら
 福祉の現場の方々の声を聞かせてもらいながら
 福祉施設の見学に通いながら
 同時に情報公開のためにホームページの更新をしたり
 あらゆるメールに返事を書きながら
 会いたいという人がいれば会いに行って
 時には訳のわからない人にどなりこまれながら
 仕事をしている訳ですね。

 丸1日の休みをとれたのは、1日だけ。
 放っておくと1日中仕事をしてしまう性格のフジノなので
 眠らない、食べない、そうやって時間を作るようなことをしてきました。

 他の議員さんのことは知らないけど
 少なくともフジノの実感としては、議員ってすさまじい仕事の量です。

 信じられないヤツは、おれと1日一緒に過ごしてみやがれ(笑)
 マジで政治家ってこんなに忙しいのかよって思うよ。

 ある掲示板で、ものすごくお気楽にこんなこと書かれました。

 「イヤなら携帯の電源を切れ、
  イヤなら変装して外出しろ」

 でもこれは本当に本当に
 実情を知らないから他人事として書ける文章だよ。

 かれこれ何日、徹夜しただろう。
 咳もとまらないし、ノドの病院もまだ行けないし、やれやれ。

 イヤなら辞めろ、みたいな単純な論理で
 投げだしてしまえるような仕事では無いのです。

 どんな時だって話しかけてくる人がいれば
 明らかに悪意が見えても
 それでも僕は逃げたくない。

 耳を傾けたいと思っている。

 できる限り、電話も出たいと考えている。

 だけど体力にはやがて限界があるし、
 精神力だけではのりこえられないこともあるわけです。

 その忙しい時間の中でも
 どうやったらいつもみんなにとって身近な
 サービス業としての政治家でいられるかをやりくりしているんですね。

 まあ、そんなことはどうでもいいんですけれど...。
 うーん、発言通告書の話から大きく話がそれてしまいました。

 とにかく、莫大な資料を読んで
 その内容を消化して
 過去の質問と重ならないようにしながら
 少しでも道をひらくための質問を考えてつくっていくわけです。




2003年5月25日(日)のフジノ
● かわいそうな人たち

 神奈川新聞は購読していないので
 そこにどんなことが書かれていたのかはフジノは知りません。

 精神保健福祉に関心があった鈴木記者が
 この4月であっという間に転勤になってしまって、
 どなたが新しく横須賀市の担当になったのかもフジノは知りません。

 神奈川新聞は朝刊しかないから
 うちでは取っていないんですよ。

 記事を書いた方、はじめまして。
 インタビュー、待ってるよ。

 さて、議会運営委員会でのフジノの一件は
 すでにみなさんご存知かと思いますので詳しくは書きません。

 それにしても、たくさんの人々が
 このHPを読んでいるということに改めて驚きます。

 たとえば、市役所のある部では
 非公式な会話の中ではありますが
 上司が部下にむかって
 「このHPを読んでおくように」と指示を出した
そうです。

 あの、上司の言葉をまにうけて
 あんまり読まなくていいですよ。

 汚い言葉がとびかっているHPなので。
 なんといっても議会運営委員会で
 いろいろ指摘されてるくらいのHPですから。


 あるいは、市議会議長の神保さんも読んでます。
 議長、けさも読んでますか?
 こないだはお昼をご一緒できて楽しかったです。
 また新自由クラブや田川さんのお話を聞かせてくださいね。


 ほかにも毎日読んでくださっている議員が
 たくさんたくさんいるそうです。

 好意的な議員も、
 そうでない議員も。

 「おい、この濁点のつかいかたはおかしくないか」
 「いや、こっちの読点だっておかしいぞ」
 「あ!この過去形は違うぞ」
 「やった、これで今度の委員会でもとりあげられる」
 「ほんとだ、事実無根だ」
 「いや、誹謗中傷だ」
 「誹謗中傷、発見したぞ!」
 「2ヶ所だ」
 「いや、3ヶ所だ!」
 「多ければ多いほどいいぞ」
 「やった、多いね、今日は」
 「よし、委員会だ!」
 「よし、委員会だ!」
 「あの若造もっと痛い目にあわせた方がいい!」
 「そうだ、そうだ。はねっかえりものめ」

 一生懸命にHPを紙にプリントアウトして
 こんなことをしているのかね...。

 さて、今回は想像で上の会話を書きました。
 事実無根ですか。誹謗中傷ですか。
 次の議会運営委員会でもとりあげますか。

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 今回の件について
 神奈川新聞の記者がインタビューに来てくれないので
 正直なフジノの感想はこのHPをつうじて
 初めて世間に言います。

 おい!

 議会運営委員会っていう場所は
 こんなことを話し合ってていいのですか?

 時間のムダづかいじゃないですか。
 税金のムダづかいじゃないですか。

 話題にすべきことは他にありませんか。
 話題にすべきことは他に本当に無いのですか。


 30日の議会運営委員会に呼び出されたからには
 いくらでもフジノはご質問にはお答えしましょう。

 でも、納得がいかないことがあるんです。
 僕も、議会運営委員会のメンバーも、市議会事務局の方々も
 税金(=みんなのお給料)で雇われているわけです。

 雇い主であるこのまちに暮らしている人は
 こんなHPの3つの文章がどうとか
 そんなことを議員に話しあってほしいのでしょうか。

 少なくとも僕に投票してくれた5000人は

 「福祉をやれ、フジノ」
 「福祉だ、今すぐに福祉をやれ!」

 そう願っている気がしてたまりません。

 それがフジノの今回の一件についての
 正式なコメントです。


● カッコいい人

 ある精神保健福祉施設の施設長だった方が亡くなりました。

 その方は、ガンにおかされていて
 医者からはすでに
 「余命2年ですよ」と宣告されていたそうです。


 その方は「あと2年」と聞かされて
 残りの人生をどうやって生きようかと考えた時に
 やけくそになることなんかなく、
 あらためて福祉のボランティアをしようと決心したそうです。

 もともと福祉畑の方だったのですが
 あらためて福祉に戻ってこられたわけですね。

 そして、施設長にもなられて
 精神保健福祉のために一生懸命努力をしてくださった。

 その方が、先週、亡くなられた。

 残念ながらフジノはその方と
 お互いにお互いのことを情報としてはすごく知ってたのに
 直接お会いすることは最期まで叶いませんでした。

 だけど、リスペクトしています。
 できるなら、僕も最期まで同じように生きていきたい。

 明日死ぬかもしれないと思って生きてると
 ケツがまくれて生きていける。

 福祉はすごい、カッコいい、やりがいがある、
 サイコーの仕事だとつくづく思う。

 だって、自分の命があと2年だと知ったら
 あなたはびびって遊びほうけたり酒飲んだりしませんか。

 だけどその方はしなかった。
 たぶん、おれもしない。

 それが明日か来年か分かんないけど
 いつも目の前に意識しながら働いてる。

 懸けてもいい仕事なんだよね、福祉は。
 プライドを持ってやれる、サイコーの仕事なんだから。

 そんなすごい仕事なのに
 現場で働いている人たちはみんなして
 自然体で動いてる。

 時には笑顔で、時には怒り顔で、時には涙顔で。
 すっごく貴重な仕事なのに、眉間にしわをよせながらじゃない。

 人の命を預かってる時だってあるけど
 基本は自然体でやれる仕事。
 背伸びしない。いや、背伸びなんか通用しない。
 自分の生身(こころすっぱだか状態)で自然体でやれる
 リアルな仕事。

 若者はいつの時代でも
 「生きてる実感が無い」とつぶやくけれど、
 福祉においで。リアルだよ。リアルが待っている場所だよ。

 もちろん食うためだけに働いてる人だっている。
 だけど、そういう人もすべて含めて
 それでもなお、カッコいい仕事。やりがいのある仕事。
 懸けてもいい仕事。僕はそう信じている。

 それが福祉だと僕は信じてる。
 少なくとも僕が見てきた、現場のたくさんの人々はみんな、
 深刻な顔して嫌そうにしている人なんていなかった。

 それが福祉なんだと思う。

 亡くなられた方に、こころから尊敬の想いを抱きます。
 あなたが育てた下の世代は立派に育ってると感じます。
 やんちゃなヤツらを信じてくださいね。
 一緒に僕もがんばりますから。



2003年5月22日(木)のフジノ
● どなりこみ

 市議会事務局や議員の控え室や議長室など
 市議会カンケーの施設はみんな
 市役所の中の、9階から11階にあります。

 もちろん市役所なので、誰でも出入り自由です。
 警備員も立っていません。エレベーターを降りればすぐそこは
 議員の控え室や市議会事務局があります。

 神保議長と昼メシを食べて、
 歯をみがくためにトイレに行こうとしたその時、
 1人の男性がエレベーターから降りてきました。

 そして、おもむろに僕に近づいてくると
 「あんたが藤野英明か?」と言いました。

 野球帽をかぶった、170センチくらいの男性です。

 「そうです」と僕が答えると、
 いきなり叫びつけられました。

 「美術館づくりを止めるなんておまえにはムリだ!」

 あっけにとられている僕に向かって
 彼は一方的にわめきつづけます。

 「選挙公報を読むと、美術館づくりに反対しているのは
  藤野さん、あんただけだ」

 「あんた1人の力で何ができる!」

 「前からあんたに一言いいたくて
  市役所に来るたびにランプが点いてるか見てたんだ。
  
(注:議員が市役所にいると、市役所の1階に名前のランプが点きます)
  そしたら今日、あんたがいるって分かったから来たんだ!」

 「横須賀の文化レベルは低い。
  だからおれはまだ横須賀には美術館がいらないと思ってる。
  だけどあんたには美術館づくりを止められない!」

 「美術館づくりを止めるなんておまえにはムリだ!」

 鼻と鼻が触れそうなくらいに近よってきて
 だけどお酒の臭いはしていなくて
 髪には白髪がたくさんあって洗っていないみたいで
 時間は12時40分くらいで、そして僕は怒りがこみあげてきました。

 エレベーターから市役所の人が降りてきましたが
 一方的にどなられている僕のわきをすりぬけて
 「こんにちは」と言いながら、トイレに入っていきました。

 まだ男性はわめいています。

 「おれは無職になってから11年だ。
  貧乏暮らしだから美術館なんていらない!
  だけど、あんたには何もできない!」

 あー、うぜえなあ!キレたぞ、このクソジジイ。

 「あなたがどんな現実を見て
  これまで生きてきたかなんておれは知りません。
  でも、やる前からムリだなんて何決めつけてんですか!」

 「おれがこれからやることを見ててくださいよ!
  あなたは美術館に反対だとか言ってるけど
  ほんとは賛成派でただの嫌がらせにしか見えないんですよ!」

 「用件がそれだけなら分かったから
  もう帰ってください!」

 雄人が控え室から出てきて
 心配そうな顔をしながら僕の脇に来て、トイレに入りました。

 「おまえには何もできない!
  おまえには美術館をとめるなんてムリだ!」

 「だから、見てろって言ってるんです!」

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 もう、こういう人ばっか。
 でも今までは、議会の中までは来なかった。

 Yデッキに立っている時にいきなり叫びつけられたりだとか
 歩きだしたうしろをいつまでもつけてくるだとか
 PHSに真夜中でも明け方でもおかまいなしの電話はあったけど
 議会の中まで来るとは思わなかった。

 ケツまくってるから
 いきなり刺されても別に平気だと思う。

 だけど、議会の中は安心だと勝手に思い込んでたから
 今日はすこしショックをうけた。

 控え室に戻ると、
 絵美さんと雄人が心配して声をかけてくれた。

 「2人の怒鳴り声が聞こえてたよ」と絵美さん。
 「藤野さん、大丈夫ですか」と雄人。

 「うん、ぜんぜん大丈夫。
  しかしそんなに美術館つくりてえのかよ。すげえむかつく」

 そう返事しながらも考えてたのは
 事務所を借りたとしても絶対に住所は明かさないようにしよう、
 ということだった。

 僕がほしかった事務所というのは
 市役所の9階になんかみんなはなかなか来づらいと思って
 16号ぞいの道路にめんした、ガラスばりの
 いつでも誰でもご自由にどうぞ、ってな感じのする
 開放的なものだった。

 だけど、こんなのやってたら
 いつか犬死にしてしまう気がする。

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 ふだんなら、Yデッキの上とかでは
 怒鳴りあいになっても最後は結局のところ、和解する。
 途中でうんざりした僕が折れて、おだやかな話し方に切り替えるから。

 でも、今日は相手が一向に止まらない気配だった。

 「じゃあ、あんた、公約守らなかったら死ぬか」と言われた。

 これはおだやかな話し方にしてもダメだ、と直感的に思った。
 だからもう言葉でねじふせるしかなかった。

 「そういうあなたは、今まで生きてきて
  こうしたいとか思ったこと、ぜんぶ叶えてきたんですか!
  それができなかったら、あなたは死にますか!
  だいたい自分の名前も言わないで
  一方的にまくしたてて
  これ以上話してても時間のムダだから帰ってください!」

 にらみつけてガーッと怒鳴りつけて
 エレベーターのくだりボタンをたたきつけて
 そして、もう1度、その人をにらみつけました。

 かなり長い時間にらみつけました。
 こんなにガンくれてんのいつ以来だろうと思いました。
 早くこいつ消えてくれよ、帰れよ、とこころの中で強く願いました。

 「警備員さん、呼びますよ」

 そう言うと、やっとその人は
 エレベーターへとのりこんだのでした。

 なんか、どっと疲れが出ました。
 おれはこんなことやるために議員になったのかよ...。


 フジノはキレやすいので
 読者のみなさんの中にも怒鳴りあいしてる僕を見た人が
 きっとたくさんいるのではないかと思います。

 汐入駅前でチンピラと怒鳴りあった時には
 20人くらいの野次馬がいました。
 追浜駅でヒステリックなおばさんと言い合う姿だとか
 Yデッキの上でからんできた外国人に向かって
 「Get out of here!」と叫んでる僕を見た人もいるでしょう。

 たぶん、外見的な『やわさ』から
 フジノなら文句言っても大丈夫だろうとなめられてるんだと思います。

 売られたケンカはぜんぶ買いますけど、
 でも、できれば時間のムダなので仕事をさせてください。

 みなさんが、毎日の暮らしの中でイライラしていたり
 誰かにうっぷんをぶつけたいのはよく分かります。
 けれども、そのほこさきが僕というのは明らかにまちがいです。

 何故なら、フジノはそのあなたのイライラをとるために
 このまちで暮らしていくあなたの生活を少しでも守っていくために
 フジノは政治家になったのです...。

 美術館づくりが止まってしまったら、困る人もいるでしょう。
 だけどそれは。短い目で見れば公共事業のカットですけれども
 長い目で見れば福祉や暮らしを守るために
 絶対に必要なことなのです。

 政治家はサービス業だから
 文句も批判も嫌がらせもぜんぶ引きうけて僕はここにいます。
 掲示板へのかきこみも2ちゃんねるの誹謗中傷も
 嫌がらせのメールも明け方の電話も
 ぜんぶ耐えています。

 だけど、仕事をさせてください。

 フジノに十分な仕事をさせてくれなければ
 それは税金のムダづかいです。

 フジノに仕事をさせてください。

 聖人君子でもなんでもないフジノは
 ろこつに敵意むきだしでいきなり怒鳴りつけ続けられたなら
 最初はおだやかに聞いていますけれども
 やっぱり怒鳴りかえしてしまいます。

 でも、それは時間と税金のムダなのです。

 あなたのお給料を、きちんとあなたのためにつかうために
 フジノに仕事をさせてください。お願いします。

 僕に福祉をやらせてください。お願いします。


● イヤなことはつづくのだ

 夜、100円ショップからの帰りにYデッキを歩いてたら
 僕のことを僕だと気づいた酔っ払いが
 しばらく後をつけて歩いてきた。

 これはもうサイアクだった。

 一緒にいた友達が
 途中から自分の体で必死に僕をかばってくれて
 その酔っ払いはやっといなくなった。

 ほっとして階段を降りようとしていると
 「ああ!フジノさんだ。お元気?」と
 おばさんに話しかけられた。

 「今日は議会で1日書類をつくっててクタクタです」と答えると
 「ふうん、それで今日はどこに行ってきたの?」
 
 「だから、今日は議会に1日行ってきたんです...」
 「ふうん、議会。で、今はどこから帰ってきたの」
 「市役所の9階です。議会です...」

 誰がじゃ、何がじゃ、誰がじゃ、何がじゃ、コントかよ。

 友達が同情いっぱいのカオで
 「フジノって、けっこうかわいそうだよな」と言いました。
 「でも、いつもこんなだよ」と僕は答えました。

 「議員って、みんなしてこんななのか」
 「知らねえよ、おれだって議員になったばかりなんだから」
 「なんか疲れる仕事だな」
 「しかたないよ、公人だから...」

 その後、カプリチョーザで2人で食事をとる時も
 友達は気をつかって
 すみっこのまわりから見えない席に
 フジノが通路に対して背中むきになるようにしてくれたのでした。


● 知られてないよろこび

 でも、今日は1つだけ、いいことがあった。

 議会からの帰り、駐車場で職員さんに怒鳴られたのです。
 これはものすごくうれしかったなあ。

 市役所の北口駐車場は
 市議会議員は無料で使用できるのですけれど
 出入りにはパスカードというカードを提示しなくてはいけません。

 でも、職員さんは僕たちの顔と名前を覚えてくれてて
 だからいつも「おはようございます、フジノさん」とか
 あいさつしてくれてパスカードも出さなくても平気な時もあるんです。

 今日はいつもと違うスーツを着てて
 パスカードをいつものように胸ポケットに入れてなかったんです。
 見せなくてもきっと分かってくれてるだろうからまあいいや、
 そう思って僕はバイクを駐車場から出そうとしました。

 そうしたら。

 「おにいさん!駐車場代、払ってないよ!!」

 怒鳴られたんですね。
 もう、これが本当にうれしかった。

 うれしくて、バイクを停めて、事情を説明にいきました。
 こんな外見ですけど実は議員をしてて、
 パスカードを今日は忘れてしまって、
 本当にごめんなさい、って。

 自分の顔と名前が知られていないことがうれしかった。

 たくさんの他の議員たちは
 顔と名前の入った看板をまちに出している。
 これはまちに暮らしている人たちの声をいつでも聞けるために
 顔と名前を知ってもらう必要があるからなのだと思う。

 だけど僕はできるなら顔も名前も知られたくない。
 だから僕は1つも看板を出していない。
 できれば名刺も配りたくない。
 名刺には顔写真と名前と電話番号まで出ているから。

 選挙の時だって、マイクをとおして自分の名前を言うことも
 本当にすごく嫌だったから、1日に5回くらいしか言わなかった。
 言わなかった、というよりも、言いたくなかったのだ。

 来賓として呼ばれた勉強会とかでも
 隠れて参加して会費をちゃんと払って
 「あいさつしてください」と言われてもできるだけ断ってしまう。

 そんなことでは議員としてダメなのかもしれない。
 お祭りだとか運動会だとかソフトボール大会だとかいろんな式典に
 どんどんどんどん飛び込んでいって
 あいさつしないといけないのかもしれない。

 だけど僕はできるなら放っておいてほしいと思ってしまう。

 職員さんにあんちゃん扱いされたのが
 ものすごくうれしくて、そしてホッとしたのが、僕の本音です。

 駐車場の方、本当にありがとうございました。



 (ごめんなさい。昨日お約束した
  『市議会だより編集委員会』の様子や
  掲示板に書かれていた「フジノの本会議での反対の理由」などは
  明日書きたいと思います)


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