議会では、こんなやりとりしています


動画で質問の様子をみることができます。
市議会HPの日程平成15年12月8日をご覧下さい。


2003年・12月議会での一般質問






 藤野 英明です。よろしくお願いします。

 まず最初に、今回の一般質問にあたって
 『自殺』という単語について
 一言述べさせてください。

 自らの手で命を絶つ、という行為に対して
 私はふだんは『自殺』という単語を使いません。

 そして、精神科などのケアの現場でも
 『自殺』という単語はとても慎重につかわれています。

 自死、という単語を用いる人もいますが、
 僕の経験から言えば、
 まず自殺という単語は現場ではつかいません。

 何故なら、この言葉で連想されるイメージが
 あまりにも強烈すぎるために、
 遺された人々が
 きわめてショックを受けやすい
 敏感な状況に追い込まれているからです。
 ケアをおこなうはずが、
 そこで用いている言葉で相手を傷つけてはいけません。
 現場では、さまざまな表現を用いて、
 遺された家族や友人などが
 あらたな痛手を負わないように
 できる限りの配慮をしています。

 けれども、今回の一般質問をおこなう上で、
 ケアの現場のように、言葉を使い分けるのは不可能です。

 そこで、今回の一般質問では、
 あえて『自殺』という単語を使うことにしました。

 インターネットで全世界に流れている
 この一般質問を観ている方々、
 市役所内のテレビを見ている方々、
 市役所の職員のみなさん、
 そして議会のみなさんの中にも、
 愛する大切な人を失った方がいるはずです。

 そんなみなさんに対して、
 『自殺』という言葉は
 あまりにも過酷に響くことと思います。
 こころがはりさける痛みを感じる方がいるはずです。

 けれども、議会の質問の中では、
 現場のように配慮をするのは不可能です。

 今回の質問は、あなたが感じているような痛みを、
 もう2度と他の人々に体験させないために
 おこなう質問なのです。

 だから、どうか今回の一般質問では、
 この言葉をつかうことを、ご理解ください。





 





















 では質問1.にうつります。

 憲法25条に定められている通り、
 わが国では『生存権』は国民の基本的人権であり、
 それを守るのは
 国の社会的使命です。

 けれども、不況・価値観の多様化・文化の変化によって、
 現実の社会の中ではあらゆる側面で
 生命が軽んじられていると私は感じています。

 例えば、経済について。
 国は財政再建を最大の目的に定めて、
 市場原理を至上の手段として改革にのりだしています。

 私自身、市場経済の下で企業が努力を続けて
 努力をした者が勝者として評価され、
 結果を出せない者は市場から退出すべきだと考えています。

 その流れは必然だと考えていますが
 けれども、十分なセーフティネットの確立が無いままの現状では
 国による『生存権の軽視』だと私は感じています。

 敗者もまた挑戦できることが
 本来の健全な競争の姿である。
 それができない現状があると私は思います。
 ひるがえって横須賀市の状況はどうでしょうか。

 本来、横須賀市民憲章の第3・第4条に定められているように、
 また横須賀市の高齢者虐待防止ネットワーク事業が
 全国でたった2ヶ所の
 全国の見本となるモデル事業として
 指定を受けたことからも分かるように
 横須賀市の基本路線は『生存権』を重視してきました。

 しかしながら、平成15年第2回定例会本会議での
 角井議員の一般質問への市長答弁を聞いて、
 不安に感じている市民もいます。

 市長は、電子入札改革を断行して高く評価されています。
 しかし「横須賀で仕事が無いなら横浜へ行け」と言うような
 市長は冷たい、そう答弁を受けとめた人も多くいます。

 けれども、市長の発言の真意はそうではない、
 市長は市民に誤解されている、そう私は思います。

 例えば、子ども虐待防止センターの設立などを見ても
 本来、市長は福祉に熱心なのでありますが
 全国的に『改革者』のイメージだけが
 先行しすぎているように思います。

 横須賀市は改革を断行するけれども
 同時にセーフティネットを確立しようと努力しているし
 今後もその姿勢は変わらないものと信じています。

 横須賀市は過去から未来にかけて
 決して変わらずに『生存権』を重視しており
 今後も行政の使命として『生命権』を守り続ける、
 最大の行政目標として『生命権』を掲げる、はずである。

 その姿勢が決して変わらないと信じてよいか、
 ぜひ市長ご自身の口から
 改めて市民に伝えて欲しいと思います。










 











 <質問2(1)>
 自殺の現状と自殺予防対策の必要性について、に移ります。

 (1)自殺の現状について
 ア.「交通事故犠牲者数の約7倍にもおよぶ自殺者がいる
 本市の現状についての認識」を市長にうかがいます。

 わが国の自殺の現状は、警察庁の発表によると
 平成9年までの10年間は
 年間平均自殺者数は2万2410人でした。

 しかし、平成10年になると
 前年にくらべて年間の自殺者総数が一挙に1万人以上も増えて
 3万人を超えてしまい、以後ずっと
 3万人台という状態が今も続いています。

 公衆衛生の考え方では、
 何らかの病気での死亡者数が
 交通事故の犠牲者数を超えるようになると
 深刻な問題と捉えて現実的な対策に取り組みはじめるのが
 世界の常識となっています。

 けれども、わが国では
 自殺問題については
 ほとんど対策がなされてきませんでした。

 交通事故の犠牲者数が1万人を割っている現在では、
 自殺による死亡者数が3倍以上に達するという
 すさまじい状況になっています。

 『警察庁 平成14年中における自殺の概要資料』によると

  H10 3万2863人
  H11 3万3048人
  H12 3万1957人
  H13 3万1042人
  H14 3万2143人

 さて、それでは、横須賀市の現状はどうでしょうか。

 自殺者数の統計は2種類あって、厚生労働省によるものと
 警察庁によるものがあります。

 今回の一般質問では、あえて実態に近いと思われる
 神奈川県警本部に確認した
 横須賀市内にある、横須賀・田浦・浦賀の
 3署の所管合計を使用します。

 厚生労働省のデータは住民票所在地を基本としているために
 生前の最後の現住所が
 横須賀市では無いデータも含まれているからです。
 さて、横須賀市の現状はどうでしょうか。

  H10  72人(交通事故犠牲数 21人に対して 3.43倍)
  H11  88人(交通事故犠牲数 20人に対して 4.40倍)
  H12  81人(交通事故犠牲数 12人に対して 6.75倍)
  H13 104人(交通事故犠牲数 15人に対して 6.93倍)
  H14 102人(交通事故犠牲数 16人に対して 6.38倍)

 このような結果になっています。

 つまり、横須賀市の自殺者数はとても多く、
 交通事故の約7倍にも及んでいるのが現状です!

 すさまじい状況です。

 この横須賀市の自殺者数は、
 神奈川県内で比較すると
 県内では第4位です。

 352万人の横浜、129万人の川崎、
 といった大規模な政令指定都市を除くと
 県内では第2位になります。
 非常に残念な結果となっています。

 自殺での死亡率を全国平均と比較しても、
 横須賀の自殺死亡率は高いのです。

 H13 全国23.3 横須賀 24.4
 H14 全国23.8 横須賀 25.1

 これが横須賀の現実なのです。

 最初に述べたとおりで
 交通事故の犠牲者数を越えた疾病については
 対策に取組むのが世界の常識なのですが
 わが国では自殺対策を長年にわたり放棄してきました。

 国が何もしてこなかった以上
 横須賀市のみに責任があるとは思いません。

 けれども、交通事故犠牲者数の約7倍にもおよぶ
 自殺犠牲者がいる現状を
 横須賀市の政治と行政の
 『最大の汚点』だと私は考えています。

 子どもの虐待を予防したり、
 高齢者の虐待を予防しようとしてきた
 生存権を重視してきたこの横須賀市であるにもかかわらず
 これだけの自殺者がいるというのが現実です。
 この現実は、
 『政治と行政』の敗北だと言っても良いと思います。

 市長は、横須賀市のこの自殺の現実を
 どのように受けとめていらっしゃいますか。






















 <質問2(1)イ>に移ります。

 精神医学の世界では、
 1件の自殺があれば、少なくとも
 その10倍におよぶ自殺未遂があるというのが
 定説になっています。

 したがって、横須賀市の現状にあてはめてみると

  H10  720人
  H11  880人
  H12  810人
  H13 1040人
  H14 1020人

 つまり、現在も1000人を超える
 自殺未遂がある、と推定できます。

 つまり、人口43万人の横須賀市で考えると
 「自殺未遂者は430人に1人の割合で存在する」と
 推定できるわけです。

 これだけたくさんの人々が
 自殺未遂に追い込まれている現状を
 市長はどのように認識されていますか?























 <質問2(1)ウ>に移ります。
 「自殺者の遺族が自殺する危険性は3倍に上昇する為、
 さまざまなケアを行なうべき対象である事実」について、です。

 まず、ここで私が述べる『遺族』という言葉は
 単に『家族』だけを指しているのではありません。

 1件の自殺に対しては
 少なく見積もっても
 5人は深刻なダメージを受ける、と言われています。

 そこで今回の一般質問では
 遺族という場合、家族、親友、恋人、友達、職場の同僚など
 自殺者と身近なつながりを持っていた人々すべてを
 指しています。

 遺族への対応については、これまで強い偏見がありました。

 「大切な人が自殺したのだからショックを受けるのは当然である。
  それを他人が癒すことなんてできない。
  ただ時が経つのを待つしかない」

 こんなふうに信じられてきました。
 けれども、これは明らかに間違っています。

 病気や事故死よりも、自殺は強烈なメッセージを残します。
 たとえ十分な介護の末に高齢の親を失った場合でも
 それをのりこえるのには、時間も努力も必要です。

 またある日突然に、大切な人を交通事故で亡くした場合は
 病気による別れよりも、さらに複雑な死別の過程を
 経験します。

 まして、自殺となれば
 遺された人のこころの傷はさらに深くなります。
 
 自殺した人をしばしば思い浮かべる。
 悲しくなる。いつも自分を責める。
 胸の中がぽっかりとあいてしまったように感じる。
 涙もろくなる。自分もしばしば死を思う。
 仕事をしていても能率が上がらない。
 何をするのも億劫になる。簡単な決断さえ下せなくなる。
 注意が集中できなくなる。人に会うのがイヤになる。
 趣味にも手がつかなくなる。眠れない。食欲が出ない。
 体重が急に落ちてしまう。疲れやすい。
 身体の不調が続く。
 このような症状が出てきます。

 はじめはへっちゃらに振舞っているように見えても
 何年も経った後に、不安障害・うつ病・PTSDなどを発病して
 専門的なケアが必要になる人もたくさんいます。

 さらには深刻なダメージの結果、
 最悪の場合は「後追い自殺」「群発自殺」が起こります。
 こうして遺族の自殺率は、そうでない人々と比較すると
 3倍にもなると言われています。

 日常生活の困難さや、さらには命の危険もあるという意味で
 遺族は、ケアが必要な対象であることがお分かりでしょうか。

 では、横須賀市の場合、どれくらいの数の人々が
 そんな状態に追い込まれているのでしょうか。

 1件の自殺に対しては、少なく見積もっても
 5人は深刻なダメージを受けるというのが定説です。
 これを横須賀市の平成14年のデータにあてはめると
 102人の犠牲者に対して、遺族数は510人にもなります。

 同じ年の交通事故・犠牲者数と比較すると
 31.9倍にもおよぶ人々が
 ケアの必要なハイリスクを背負うことになっているのです。
 自殺は毎年起こるので
 同時に毎年約500人もの遺族が新たに生まれています。
 遺族のダメージは時間の経過とは無関係であり
 自殺の30年後も深刻な精神的危機を抱えている人々が
 報告されています。
 そう考えると横須賀市でも
 累積された遺族の人数はかなりな数にのぼるはずです。

 ところで、市役所の職員の方とのヒアリング中に
 「市民ニーズとして、遺族から自殺予防の声はあがっていない」
 という声を聞きました。
 これは、把握できないのは当たり前です。

 わが国の文化や風土を考えた場合、
 自殺はタブー視され、家族は隠そうとします。
 表立って「うちの子は自殺した」なんて
 ただでさえ行政アレルギーがあるのに言うはずがありません。

 この「ニーズが無い」=「施策をする必要が無い」、
 そう考えているならば、それは明らかな間違いです。

 明らかな欲求として
 自殺予防を求めるニーズの声はあがりません。

 けれども、潜在化したニーズ、決して表には出ないニーズ、
 つまり、ディマンドとしての自殺予防の需要は
 非常に高いと私は断言します。

 遺族には積極的なケアが必要な対象であるということと
 自殺予防はそもそも顕在化しないニーズではあるが
 需要は確実にある、ということについて
 市長はどのようにお考えでしょうか?























 <質問2(1)エ>に移ります。

 ところで、自殺予防というと
 民間団体の『いのちの電話』を相談先として
 紹介することが非常に多い、多いというよりも、
 ここしか無いという状況になっています。

 けれども、「助けて欲しい」という叫びの声の、あまりの多さに
 対応しきれていない現実があります。

 いのちの電話では、毎年12月1日から7日まで
 『自殺予防いのちの電話』と銘打って
 全国50ヶ所の『いのちの電話』支部を1つの番号でつないで
 あいている支部にどんどんつながるという
 フリーダイヤルのキャンペーンをおこなっています。

 平成13年は、51台の電話、3208人の相談員が対応しました。
 NTTコミュニケーションズによる調査の結果、
 通信結果レポートによると
 1週間でかかってきた件数は、9万3071コールです。
 そのうち、相談員が出ることができたのは
 わずか1万2487コールです。

 つまり、かけてもかけても
 わずか13.4%にしか
 出ることができなかったのです。

 今年の12月2日、東京の事務局に電話して
 キャンペンーン1日経過後の様子を
 私は尋ねてみました。

 やはり、多くの電話が殺到し、なかなかつながらず
 10%程度しか受信できていない、とのことでした。
 これが現実なのです。

 世間ではすぐに24時間365日対応の専門家として
 『いのちの電話』を安易に紹介して薦めますが、
 現実的にはパンク状態なのです。

 今述べたのはキャンペーン期間の話ですが
 ふだんの状況も同じです。

 私自身、『横浜いのちの電話』の現場を見学して
 とぎれることの無い電話の多さを
 少人数で対応している苦労の現場を見てきました。

 市長はこのような現状をご存知でしょうか?

 以上、(1)のアイウエそれぞれと
 生命権を重視する横須賀市である、との根拠から
 自殺予防は国に任せるべきではなく
 また民間団体に任せるべきでもなく
 『横須賀市独自の問題』に取り組むべきだと
 私は考えていますが、市長はどのようにお考えでしょうか?


























 <質問2(2)>
 (2)自殺予防への取組みの現状について、に移ります。
 まずア.についてです。

 横須賀市では
 『自殺予防』とは銘打っていなくても
 現在も高く評価すべき業務をいくつも行なっています。

 例えば、児童・青少年ならば
 青少年相談センター(実際に自傷や自殺の相談をうけている)、
 ヤングテレホン(小中高・専門学校の生徒全員にカードを配布)、
 健康手帳(来年度改訂版より
 こころの健康が小学校低学年から記述される) 

 母親ならば、子ども虐待予防相談センター
 (産褥期うつ病や子育て苦による自殺の予防) 

 高齢者ならば、
 福祉電話(高齢者の孤独感を減らしている)
 痴呆高齢者の介護者の集い(介護苦による自殺減に貢献)

 うつ病・統合失調症など自殺へのリスクが高い人々ならば、
 精神保健相談(窓口・電話・Eメールで相談を受けている)

 などが高く評価できます。

 しかしながら、これらの施策は
 部ごとに、また人生のライフステージごとに
 独立しておこなっているために
 データや成果の共有がなれさていません。
 そのことが結果的に、効果を減らしていると言えます。

 部を越えた横のつながりも見られますが
 それはあくまでもインフォーマルなつながりに留まっています。
 個人としての職員Aと職員Bが親しいなどの
 信頼関係にもとづいての『連絡体制』であって
 公式な形での連絡調整体制は存在していません。

 市長はこの点についてどうお考えでしょうか?




























 <質問2(2)イ>
 イ.に移ります。

 今、すでになされている自殺予防の取組みを挙げましたが
 残念ながらこれらの取組みの大半は
 『受身』であり『間接的』なものである、と思います。

 『受身』の定義は、
 相談したい人が市に働きかけてもらって
 つまり、相談者が電話をかけてくるなどして初めて
 相談が成立するものを指しています。

 『間接的』の定義は、
 自殺予防という観点からは
 直接的ではない取組みを指しています。

 そもそも、自殺予防とは3つの対策に分かれています。
 1.普及啓発・教育  2.危機介入  3.事後対策、です。

 普及啓発・教育とは、
 正確な知識を与える、相談窓口の連絡先を伝える、
 そんな事前の活動のことです。

 危機介入とは、まさに今この瞬間の危機を救うことです。

 事後対策とは、不幸にも自殺が起こってしまった場合に、
 遺族のケアなどに取り組むことによって、
 悲劇の拡大を防ぐことです。

 これらの観点から
 現在なされている取組みを分析すると、

 児童・青少年への取組みである、
 青少年相談センターは、危機介入、受身、直接的
 ヤングテレホンは、危機介入、能動的、直接的
 健康手帳は、普及啓発、受身、間接的です。

 母親への取組みである子ども虐待予防相談センターは
 普及啓発と危機介入、受身、直接的です。

 高齢者への取組みである
 福祉電話は、普及啓発と危機介入、能動的、直接的、
 痴呆高齢者の介護者の集いは、普及啓発、受身、直接的です。

 保健所の精神保健相談は
 危機介入、受身、直接的、と分析することができます。

 このようにせっかくの素晴らしい業務ではありますが
 ヤングテレホンのように学齢期全員にこちらから
 カードを配って存在を知らせるといった
 能動的かつ直接的な対策はわずかしかありません。
 そのほとんどが相談者からの相談を待つものであり、
 こちらから打ってでる対策ではありません。

 自殺の原因には激しい孤独感と、
 追い込まれた視野のせまさがあるために、
 こちらから積極的に苦しんでいる人々へ
 つながりを取ろうとしなければ予防対策としては不完全です。

 自殺予防については、能動的で、直接的な
 より「うってでる」対策こそが必要ではないでしょうか。

 また、現在の横須賀市には
 予防における3つ目の対策である
 『事後対策』の視点が全く存在していない点も
 指摘したいと思います。

 市長はこの点をどのようにお考えでしょうか?





















 <質問2(2)ウ>ウ.に移ります。

 これまで取組みの現状をお話してきましたが
 横須賀市がすでに行なっている自殺予防対策の中には
 『中高年への対策』が全く存在していません。

 そもそも中年期というのは
 こころのバランスを崩しやすい年代です。

 一般的には、40代から50代というと働きざかりで、
 家族があれば一家の大黒柱的イメージが強いのですが
 実際には、自分自身だけでなく、
 家族や周囲にも大きな変化が起こる時期と重なって
 さまざまな問題を抱えやすい世代なのです。
 思春期と同じくらい、精神病にかかりやすい年代です。

 その証拠に、中高年の自殺率は現在最も高く
 他の年代の3倍にもおよびます。

 特に50代の男性の自殺は増加が激しくて
 全国のデータを見ると、平成10年には前年と比べて
 一気に53.8%も自殺者数が増加しています。
 中高年の男性とは、最も対応が必要な年代なのです。

 横須賀市の状況を見ていただいても
 中高年の状況は、深刻だと言えます。

  <本市>      H13年   H14年
   19才以下      1人     2人
   20代        13人    14人 
   30代        12人    17人
   40代        18人    15人
   50代       26人   28人
   60代        16人    18人
   70代        13人    11人
  80代以上       6人     3人
                  (厚生労働省『人口動態』より)

 そもそも勤労者については
 『産業保健』という考え方が通念となっており
 勤労者の保健面は「企業の責任である」とされてきました。

 しかしながら、責任を果たして
 診療所や産業医の嘱託をしているのは
 ほぼ一部の大企業のみであり
 日本の全企業の90%をしめる中小企業では
 現実的に考えて、
 産業保健の考え方では現状に対応できていません。

 このことが中高年の自殺率を高くしている
 原因の1つではないかと私は考えています。

 また2000年6月に労働省が発表した報告書
 『労働の場における心の健康づくり対策について』の中でも
 4つのケアが必要だと述べていますが

  1.セルフケア(自分自身)
  2.ラインによるケア(管理監督者が部下をみる)
  3.産業医などによるケア
  4.事業所外の社会資源によるケア

 このように、
 基本的に自己責任に重きを置いており
 中高年男性の特性である
 「精神科受診へのいまだ根強い抵抗感」
 「職場内や家庭では弱音を見せない」
 「仕事以外に趣味などの場を持たない」
 こういう傾向を持つ人々へ
 積極的に働きかけるような対策になっていません。

 このようなものが国の労働行政のしくみであるため
 市の責任を追及するつもりは全くありません。
 しかも、本市の経済部では
 安全衛生セミナーという(一部メンタルヘルス的な)業務を
 昨年から実施しています。
 これは中高年対策の1つとも
 言えるかもしれません。

 しかしながら、中高年への自殺予防対策は
 横須賀市では皆無だと言わざるをえません。

 学齢期は教育委員会と青少年課、
 青年期は青少年課、
 高齢期は長寿社会課、
 というようにライフステージ別に対応する課があるが
 そもそも中高年に対応する課が存在していません。

 保健所の精神保健班は
 精神障がいを持つ方々への対策に特化していて、
 中高年への対策は特に取っていません。
 経済部あるいは市民部社会課が
 積極的に対応すべきでは無いでしょうか?

 これらの点について
 市長はどのようにお考えでしょうか?
































 <質問2(3)>総合的な自殺予防ネットワークづくりの
 必要性について、に移ります。

 (1)と(2)で述べてきたことから
 横須賀市がより積極的に自殺予防を進めていくには
 『総合的な自殺予防ネットワーク』づくりが必要だと
 私は考えます。

 市長をトップに『自殺予防対策本部』を設置します。
 市役所内部は、健康福祉部をはじめ7部の連携を行います。

 市役所外部は、神奈川県警、県労働局、
 商工会議所、市医師会の協力を要請し、
 また、民間の相談機関、社会福祉協議会、遺族会、NPOなどの
 協力も得ていくのです。

 自殺の現場に最も近いのは
 県警と消防の救急といのちの電話です。

 また、中小企業の経営者にとって
 商工会議所や労働局の存在はとても身近です。

 かかりつけの内科医に
 よりメンタルヘルスに関心を持ってもらうには
 医師会の協力も欠かすことができません。
 このような形で公式なネットワークを作り、
 自殺予防という目的のもとで
 情報を共有し、対策を共に練り、
 危機介入時にはすみやかな連携が取れるようにすることが
 自殺予防対策の上でより有効ではないでしょうか。

 この提案について市長はどのようにお考えでしょうか?




























 <質問2(3)イ>イ.に移ります。
 個人情報保護は、非常に重要な施策であり
 個人のあらゆる情報が保護されることは
 いまや基本的人権の1つとも言えるものです。

 しかしながら、市役所の部局間で
 有機的な意味での『データ』の受け渡しが可能になれば
 自殺予防対策は、より有効に機能することができるはずです。

 例えば、自殺の通報があって消防局と県警が出動したとします。
 現在では、神奈川県警がこのデータを
 他の部署に渡すことはありえません。
 しかし、遺族のケアということを考えた場合に
 このデータを保健所に受け渡すことは果たして問題でしょうか。

 その後に行なわれる介入の効果と
 遺族のケアの必要性を考慮すると
 個人情報保護をつらぬくことよりも重要ではないでしょうか。

 別の例としては自殺未遂者の場合があります。
 自殺未遂者は助かっても頻回の自殺未遂をし、
 ついには自殺してしまうリスクがあります。
 自殺の通報を受けて救急出動した消防局が
 一命をとりとめた自殺未遂者のデータを
 保健所に受け渡すことは、果たして本当に問題でしょうか。
 確かに個人情報保護という観点では問題です。
 けれども、人命というリスクを考えた際には
 ケアの対象に働きかける機会を作ることの方が
 より重要ではないでしょうか。

 市民部青少年課では4者協議会という公式な形で
 家庭裁判所や警察などと共に事例の研究や
 連絡調整をおこなっています。
 こういった形で事例研究を含めて
 データの受け渡しを行なえないものでしょうか。

 また、今述べた2つの例は個人情報保護という意味で
 極端なケースではありましたけれど、
 日常的な部局間のデータ受け渡しも成されるべきです。

 例えば、経済部に経営相談に来た市民であっても
 うつ傾向が強いと担当者が判断したならば
 保健所につなげていくことなどは
 徹底されなければいけません。

 個人情報の保護とケアの重要性を
 はかりにかけた場合のデータ受け渡しの可能性と、
 部局間の日常的なデータ受け渡しの積極化について、
 この2点について
 市長はどのようにお考えでしょうか?




































 <質問2(3)ウ>ウ.に移ります。

 自殺予防本部としての計画を作るだけでなく、
 市役所内に『自殺予防マニュアル』を作成して
 対応の統一化をすべきではないか、と私は考えます。
 現在そのマニュアルはありません。これは問題だと思います。

 例えば、長寿社会課でおこなわれている
 福祉電話という素晴らしい業務があります。
 ここでは、非常勤職員2人が連日55人ずつ
 計110人の高齢者へ電話をかけて、安否を確認したり、
 雑談をすることで孤独感を和らげているのです。

 また、個々の職員は経験を積んだ方であるということで
 特にマニュアルが無くても自殺念慮のケースにも
 いざという時の対応は十分できる、ということになっています。

 熱心な業務の成果によって
 今では職員と高齢者の信頼関係は
 親子のようにとても強いものになったと聞いています。

 けれども、もしもそこに高齢者の自殺というケースが
 起こってしまった場合、
 それだけ強い絆があった職員は
 遺族と同じようなダメージを受けることは避けられません。
 その状況に対して
 統一した対応マニュアルを作成して実践することは
 2つの点で意味があります。

 1.迅速かつ適切な対応ができれば
   自殺を防ぐことができる。

 2.統一マニュアルが無く
   個々の職員の資質に対応を任せてしまった場合、
   自殺が起こった時にその職員のみが
   自責感を抱く恐れがある。
   相談担当職員の大きなダメージを防ぐためにも
   統一マニュアルが必要である。

 このようなことから
 対応の統一化をはかる自殺予防マニュアルの作成が
 必要だと私は考えていますが、
 市長はどのようにお考えでしょうか?









24














 <質問2(4)>さらなる個別的な施策の必要性について、
 に移ります。

 当然ながら、総合的ネットワークを作るだけで良い訳では無く
 さらなる個別的な施策を展開していく必要があります。

 まず、最も重要なのが
 24時間の相談体制を作ることです。

 現在、神奈川県精神保健福祉センターの電話相談は
 夕方16時で終了してしまいます。
 また、精神科救急を土日のみ24時間体制にしたが
 それは精神障がいを持つ方の緊急時の搬送が中心です。
 また『いのちの電話』の需要が多すぎて10%しか
 対応できていないことからも、
 『横須賀市独自の24時間相談体制』をつくることが
 市民のために必要だと、私は考えます。

 電話、Eメール、ファックスなどの
 相談体制を夜間もおこなうことが必要では無いでしょうか?

 現在、青少年相談センターでは
 Eメールによる相談という
 素晴らしい業務を受け付けているものの
 そのメールが真夜中に送られてきたとしても
 職員が見るのは翌日の朝なのです。
 これではいつでも送れるというEメールの特性が
 活かすことができていません。

 また、保健所の精神保健班でも
 Eメール相談を受け付けていますが
 7人のメンバーに対して、パソコンの支給が3台しかありません。
 これで本当にスピーディーな
 危機介入が本当にできるのでしょうか?

 これらについて、市長はどのようにお考えでしょうか?

 また、現在は民間でコールセンター業務を
 外部に委託することで
 コストをさげつつも
 良質な相談体制を組むことができています。

 複数の市町村と共に広域で共通のコールセンターを
 持つように働きかけることで
 さらにコストを下げることが可能です。

 市長はこの点についてはいかがお考えでしょうか?






















 <質問2(4)イ>イ.に移ります。

 民生児童委員をはじめとする、
 さまざまな地域での
 相談活動を担当していらっしゃる方々に対しても
 自殺予防の研修を行なうことが
 効果的だと私は考えています。

 地域に最も根づいている方々に
 普及啓発・教育、危機介入、事後対策の在り方を
 学んでいただくことで
 行政機関による対応よりも
 市民という同じ立場での身近なアプローチによって
 より効果的な対応ができるのではないでしょうか?

 この提案について市長はどのようにお考えでしょうか?






















 <質問2(4)ウ>に移ります。
 自殺へ衝動的に追い込まれる人々は
 事前に何らかの精神的疾患(主にうつ病)の傾向を示します。

 過去数年間で、急激にメンタルケアについての認識は高まり
 通院することについても、かなり抵抗感が無くなっています。

 けれども、まだまだ、うつ病をはじめとする
 精神疾患への理解が足りないために
 医療機関への出足が遅くなったり
 全く医療機関に行くことなく、自殺へと向かうことがあります。

 これらを無くすためにも
 病気のより正確な知識を広めるための
 一般向けの講演会、リーフレット配布、広報への掲載、
 などをさらにすすめるべきではないでしょうか。

 この点、市長はどのようにお考えですか?





























 <質問2(4)エ>に移ります。

 日本の文化であり、風土的な在り方なのですが、
 自殺をタブー視し、身内に自殺者がいることを隠すことが
 社会的な通念になっています。

 しかしタブー視することによって
 人々は自殺の正確な知識も予防策も持たないまま
 状況によっては自らが自殺に追い込まれていきます。

 あるいは本来ケアが必要な対象である遺族は
 隠すことによって誰にも相談ができないままに
 さらに苦しみを深めていくのです。

 こういう状況を変えるためにも、啓発活動が必要です。

 具体的には、あしなが育英会などのように
 積極的に啓発活動を進めている遺族会などの
 講演を支援したりすること、
 また、横須賀市の自殺の実態を知ってもらい、
 自殺は必ず予防できること、
 遺族はケアが必要であること、
 危機の時にはどういう連絡体制があるかなどを
 講演・リーフレット配布・広報掲載などを
 行なっていくことが必要だと考えています。
 この点について、市長はどうお考えですか?





























 <質問2(4)オ>
 学校教育の現場での自殺予防教育の必要性について
 教育長に質問します。

 まず、このようなデータがあります。

 1.これまでに手首を切る等何らかの自傷行動をした高校生は
   1割ほどもいる。

 2.深刻に自殺を考えたことのある高校生は半数を超えている。

 3.同じ世代の仲間から、自殺について
   相談をもちかけられた青少年もやはり半数を超えている。

 そもそも思春期とは、
 誰もがこころ悩む時期で、精神的な危機を迎えます。
 15才から19才の死亡原因の中で
 自殺は第2位という高さです。

 しかも死因の第1位は『不慮の死』というものであり
 この中には実際は「自殺」が含まれている可能性が
 とても高いです。

 さらに、1件の自殺の背後にある自殺未遂者の数は
 青少年の場合では、100倍から200倍にも及びます。
 つまり、青少年の場合、
 1件の自殺があれば、100人から200人もの
 自殺未遂者が存在している、というのが現実です。
 くわえて現在ではインターネットで
 誰もがカンタンに、自殺をすすめるようなHP、
 いわゆる『自殺サイト』を見ることができます。

 『完全自殺マニュアル』という本が
 かつてベストセラーになったことがありますが
 テレビをはじめ、あらゆるメディアから
 自殺についての圧倒的な量の
 「不正確な情報」に子どもたちはさらされています。

 こんな現状に対して強く不安を抱いた私は、
 6月20日付けで教育委員会に対して質問書を出しました。

 「現在の横須賀市では
  自殺予防教育をおこなっているか」という内容です。

 学校教育課、学校保健課、教育研究所の連名で
 頂いた回答によると、
 現在の学校教育の中では
 具体的に自殺についてとりあげた自殺予防教育は
 おこなっていない、ということでした。

 けれども、総合学習や道徳や生活科などの時間を利用して
 「生命がかけがえのないものであることを知り、
  自他の生命を尊重するこころや態度を育てる」教育、
 つまり「命の大切さ」の理解をすすめる授業が
 生徒に対して日常的に行なわれている、ということでした。

 あるいは、スクールカウンセラーの配置や
 教育研究所の教育相談なども行なわれているとのことでした。
 これは確かに良いことだと思います。

 また、学校保健課の尽力によって
 小中学校に配られている健康手帳の来年度改訂版からは
 こころの健康についてのページが
 新たにつくられることになった、ということも
 高く評価しています。

 しかし、こういった取組みを高く評価はしているのですが
 物事には全て長期的視野でなされる行動と
 目の前にある問題に対してなされる行動とがあります。

 生命の大切さを教える現在の学校教育は
 長期的視野で「こころを豊かにしていこう」という行動であって
 いつの日にかは自殺予防にもつながるものでしょう。

 今年の3月には文部科学省が
 『心の健康と生活習慣に関する指導』という
 実践事例集を発行しました。
 このような国の対応も長期的視野での取り組みです。

 けれども、今この瞬間に迫っている危機に対しては
 それだけでは足りません。

 同時に「直接的な対策も必要だ」と私は考えています。

 つまり、自殺予防を直接の目的とする教育に
 取組む必要があると私は思います。

 交通事故から身を守る安全教育は
 幼稚園の頃からくりかえしくりかえし行なわれるのに
 何故、自殺予防教育は
 これまで全くおこなわれてこなかったのでしょうか。
 大きな疑問を感じます。

 学齢期の子どもたちが
 苦しみや悩みを相談する相手の第1位は
 同じクラスメートや友達です。

 けれども、子どもたちは
 自殺の相談をうちあけられたとしても
 どう対応してよいか、全く分からないのが現状なのです。

 そこに正しい知識を与えて
 どう対処すべきかを教えてあげるべきなのです。

 平成15年第2回定例会での
 原島浩子議員の質問におけるCAPプログラムと同様に
 アメリカやヨーロッパでは
 自殺予防教育が子どもの段階から
 学校で行なわれている国々があります。

 例えば、

  (1)自殺の実態について知る

  (2)自殺につながるような危険な状態が
     人生の中で起こりうることを知る

  (3)友人の自殺の危険に気づいた時の対処法を
     ロールプレイ等の手法を用いて考える

  (4)地域にどのような社会資源があるかを知る、などです。

 こういった取組みを実践的に行なっていくことが
 必要だと私は考えています。

 そもそも子どもたちに行なうだけではなく、
 まずは教員に対してより積極的に
 自殺予防教育をおこなうことが実践的で
 必要なことだとも私は考えています。

 教育長はこの点についてどのようにお考えでしょうか。





























 <質問2(4)カ>経済部による中小企業に対する
 自殺予防の取組みの必要性、に移ります。

 先に述べたとおりで、『産業保健』という考え方では
 中小企業に勤めている人々への
 自殺予防の取組みが空白になっています。

 さて現在、経済部では中小企業633件を把握していて、
 ダイレクトメールなどによって
 経営に関するセミナーの連絡を行なっています。

 また、日常的に窓口で
 金融相談や経営相談などの相談業務を行なっており、
 1日に5件から10件の相談を受けています。

 この経済部の業務の現在の『長所』を最大限に活かせば、
 最も自殺率が高い中高年の人々を雇用しており
 かつ産業保健の空白地帯である
 中小企業に対して
 効果的な自殺予防対策を行なうことが可能になります。

 例えば、このような方法が考えられます。

 1.昨年から行なわれている安全衛生セミナーを
   さらに発展させて、メンタルヘルスについての
   中小企業の雇用主・労働者への啓発を行なう。

 2.経済部の依頼で市内の中小企業の経営診断を行なっている
   中小企業診断士11名に対して
   メンタルヘルスの重要性をご理解いただき
   企業訪問の際には中小企業のメンタルヘルス面にも
   関心を持って診断報告・助言を行なっていただく。

 3.保健所健康づくり課と共同でリーフレットなどを作り、
   ダイレクトメールを送付する際に同封する。

 4.市内各職場へ、メンタルヘルスのマニュアル作成を
   義務づけてしまう。そして、消防法の点検のように、
   最低基準を守れない中小企業には
   何らかのペナルティを課す。

 こういった対策を
 経済部主導で行なうことが効果的な
 自殺予防対策に結びつくと私は考えていますが、
 市長はどのようにお考えでしょうか?





























 <質問2(4)キ>自殺リスクが最も高い『中高年男性』を守る
 しくみづくりの必要性に移ります。

 先に述べたとおり、
 自殺率が最も高い『中高年(特に男性)』への対策が
 横須賀市ではまったく行なわれていません。
 中小企業で働く人むけの対策とは別に
 中高年男性を守るしくみづくりが必要ではないでしょうか。

 市民健康診断の中に、
 自殺に結びつきやすい『うつ病の傾向』をはかるための
 うつスケールを取り入れるなどの取組みもありますが、
 より積極的な「うってでる」対策を取るべきだと思います。

 現在、保健所では依頼があれば
 出前トークのかたちで地域に出て行って
 メンタルヘルスについての啓発をしています。

 けれども、これからは、あえてこちらから
 うってでる方針に転換すべきだと思います。

 例えば、神奈川県知事が現在おこなっている
 タウンミーティングのように
 保健所が市内各地域にうってでるのです。

 女性の更年期障がいと同じように
 男性にも『中高年危機』があることを
 積極的に講演してまわるのです。

 これにはもちろん町内会に協力してもらうことも必要です。
 そもそも町内会の場などにも、こちらから
 積極的に広報・啓発していくべきではないでしょうか。

 この点について市長はどのようにお考えでしょうか? 

 また、横須賀市でも
 40〜50代の自殺率が最も高い現状について
 市長の対策案があればお聞かせください。



























 『遺族へのケア体制の確立の必要性』に移ります。

 遺族へのケアの重要性については
 既に述べたとおりです。

 しかしながら、これまでは対策が全く行われてきませんでした。

 例えば、神奈川県警では
 強盗・強姦・レイプなどが起こった場合、
 被害者の方々のもとを
 事件の後も訪れて、心のケアを行う
 というすばらしい取り組みが行われています。

 けれども、自殺の場合には、
 遺族に対して何も行われてきませんでした。

 したがって、自殺によってひどく傷つきながらも
 むしろ、遺族は自殺の事実を隠して
 誰にも相談できずに傷を深めてきました。

 僕が今日、何度も遣っている『自殺』という言葉1つにも
 大きく傷つけられるのが遺族なのです。

 市役所の身近な例を挙げれば
 窓口の対応1つでさえも
 遺族は傷つけられてきたと言えます。

 例えば、これが死亡届のコピーです。(コピー掲示)

 遺族は、この死亡届を提出しなくてはいけません。

 行政センターの窓口では
 赤ちゃんが生まれたことも
 結婚も、離婚も、死亡届も
 すべて同じ窓口が受け付けています。

 しかも、窓口ごとにパーテーションがあるわけでもありません。

 個人情報の保護が叫ばれていながらも
 対応する職員の声は筒抜けなのが現実です。

 「いらっしゃいませ」の明るい声でさえも、
 これはサービス業としては当然なのですが、
 死亡届を出しに行く遺族にとっては痛く響くものなのです。

 個室にしろとまでは言いませんが、
 すべての届が同じ窓口であるならば
 せめて窓口ごとが仕切りなどで区切られていれば、と
 そう切実に願います。

 そうすれば遺族が無用な痛みを受けることはないはずです。

 そういった配慮さえも現状では行われていません。

 そこで、提案がございます。

 1.行政サービスの中で
  遺族の気持ちを最大限配慮するための
  窓口での対応を心がける。


 2.あしなが育英会のように遺族が体験を語り始めてはいますが、
  それはまだ一部です。
  遺族が気持ちを吐露できる、相談してもよい、
  そういう気持ちは当然なのだと
  そういうことを普及啓発していくべきです。


 3.現在行われている痴呆高齢者の介護者のつどいのように
  語り合える場をつくっていくことが必要です。


  あえて自殺と大きく銘打つ必要はありません。
  『広報よこすか』に 
  このように載せるのです。

  大切な人を死によって失った方々の
  想いを聞く場をつくりました。

  そして、毎月1度、総合福祉会館の1部屋を2時間ほど借りて
 ちょうど介護者のつどいのように
 保健師さんを1人、そこに座らせておくのです。

 遺族の方々が自由にそこに来て
 想いを語ることができる場をつくるのです。

 もしかしたら、数カ月間は誰1人として来ないかもしれません。

 けれども、死別の悲しみを語り合える場をつくる。
 そこに行けば語れる場を設けるということはとても大切です。

 いずれは、その中で自然発生的に
 自殺による遺族会もできるかもしれません。

 4.個人情報保護という観点から非常に難しいことですが、
  遺族であるということを把握できた時点で、
  保健師などの派遣の取り組みを行う。

 これらの提案について市長はどうお考えでしょうか。

 また、遺族へのケア体制の確立について、
 市長のお考えがあればお聞かせください。

























 1件の自殺の背後には、
 その10倍の自殺未遂者がいる、とさきに述べましたが、
 自殺未遂者は
 何度も自殺未遂を繰り返したり、
 最終的には自殺を遂げてしまうことがとても多くあります。

 この意味で、遺族と同様に
 ハイリスクであり、ケアを行うべき対象である
 と捉えなければいけません。

 個人情報保護の観点からの難しさは
 重々理解しております。

 けれども、救急などで自殺未遂者を把握できたならば、
 それを保健所につなげていくなどの体制が
 必要ではないでしょうか。

 この点について市長はどうお考えでしょうか。

 また、自殺未遂者へのケア体制の確立について、
 市長のお考えがあればぜひお聞かせください。



























 ボランティアセンター市民活動サポートセンター
 横須賀警察署に確認しましたが、
 現在のところ、横須賀市には
 自殺者の遺族会は存在していないそうです。

 また、24時間の相談などの危機介入や
 普及啓発に取り組んでいる
 ボランティアやNPO団体もありません。

 自殺数が県内4位ということからも
 遺族会や自殺予防ボランティア団体などの
 潜在的なニーズは必ずあるはずです。

 このことから、
 自殺予防に取り組むNPOやボランティア団体を
 育成していくことが必要だと思います。

 この点について市長はどのようにお考えでしょうか。
































 心の健康を守る相談業務にあたっている
 市職員の『こころの健康』を守る
 セーフティネットづくりの必要性に移ります。

 この質問は特に重視していただきたいのですが
 先ほども述べましたが
 現在は相談業務に携わっている市職員さんの
 『こころの健康』を守るセーフティネットがありません。

 相談業務に携わっている職員さんは
 非常に熱心に
 相談相手との信頼関係を築いています。

 したがって、もしも相談相手が自殺をしてしまった場合、
 相談業務に携わっている職員も
 遺族と同じような状況になることは避けられません。

 現在、子ども虐待予防センター(YCAP)と
 青少年相談センターでは、
 相談業務を行っている市職員に対して
 精神科のドクターや
 心理相談の先生による相談員へのカウンセリング、
 つまりスーパービジョンが行われています。

 そこで提案です。

 1.このスーパービジョンの仕組みを
  相談業務に当たる担当職員すべてに対して
  共通の仕組みにすべきである。


 2.自殺をしたい自殺企図の相談を受けた場合の
  連絡対応方法を記した統一対応マニュアルをつくり、
  迅速な対応で危機介入を行えるように
  相談担当職員が1人きりで自責感を抱え込まない仕組みをつくる。


  この点について市長はどのようにお考えでしょうか。


 さて、3つの予防の観点から
 個別の施策を11点あげさせていただきましたが、
 たとえ1つであれ実現すれば、
 自殺のリスクが高い人々にとっては
 大きな助けになると私は信じています。

 個別の施策について
 市長のもっともっとよい提案があれば、
 そちらもぜひお聞かせいただきたいと思います。








10















 最後の質問に移ります。

 現在の横須賀市には
 自殺に対する数値目標が一切ありません。

 国の場合、2000年に策定された『健康日本21』では、
 2010年までに自殺死亡者数を
 2万2000人に減らすことを数値目標として掲げています。

 しかしながら、『健康日本21』の中での
 自殺予防の扱いは、わずか1ページだけです。

 1年半かけて作った、と
 報告書の文頭には誇らしげに書かれていますが、
 自殺についての担当部門である
 『休養・こころの健康づくり』分科会は
 完成の数カ月前に発足して
 分科会自体もわずか数回行われただけでした。

 これが実態です。

 このような国の施策のもとで
 横須賀市がつくり上げた『健康よこすか21』ですから
 自殺についてほとんど取りあげられていない
 のも仕方がないのかもしれません。

 例えば、36ページもある
 この(冊子掲示)『健康よこすか21』の中で
 歯医者さんの『歯』という単語が47回も使われているのに
 市民の死亡原因の第6位である『自殺』という単語が
 たった3回しか使われていないのも
 情けないけれども
 仕方がなかったのだと受けとめることに決めました。

 しかし、今日このように
 一般質問の場で
 このまちの自殺の現実をついに公にすることができた以上は
 もはや国がだらしがないからと
 国の責任にすることはもう終わりにすべきです。

 今日からは
 横須賀市の自殺の問題は
 横須賀市の問題として取り組むべきです。

 そこで、これまでの現状説明などを踏まえて
 市長に提案したいのは

 数値目標として
 自殺について横須賀市は10年間で自殺ゼロを
 掲げていただきたいのです。


 この数値目標は、
 フィンランドのレンクヴィスト教授の発言を根拠にしています。

 フィンランドでは、高い自殺率を深刻に受けとめて、
 自殺予防対策に取り組んできました。

 そして、自殺率を下げることに成功してきました。

 その指導的な役割を果たしてきたのがレンクヴィスト教授で
 彼がこう述べたのです。

 自殺の実態を把握して
 現実的な対策をとるのには、最低10年はかかる。

 ならば、私たち横須賀市もじっくりと腰を据えて
 10年間かけて自殺をゼロにしましょう。

 市長、市長もかつて思春期のころに
 きっとショーペンハウエルの『自殺について』
 読まれたことと思います。

 岩波文庫では、1952年の初版以来
 64回も版を重ねている
 そんな哲学の不朽の名著です。

 この偉大な哲学者は、
 自殺のことを自由意志で選べることのできる
 人間の崇高な権利だと述べています。

 人の真実は死によって消されることはない、そう述べています。

 ショーペンハウエルの『自殺論』は、
 時を越えて、今も若者の心をとらえて読みつがれ、
 私自身も思春期には確かに心をひかれました。

 しかし、現場を体験して
 今はっきりと言えることがあります。

 ショーペンハウエルの考え方は
 1700年代の哲学者の机上の空論であり、
 2003年の現実には全く即していません。

 自殺は人間に固有の権利などでは決してなく、
 人はみずから死を選ぶ権利があるなどといった
 なまやさしい現実は1件も存在していません。

 現実に、この国で自殺に追い込まれた人々は
 犠牲者です。

 みずから自殺を口にするような人々であっても
 「死にたい、死んでしまいたい」という気持ちと
 「痛みをとめてほしい、もう1度生きていたい」、
 そういう気持ちの間で
 激しく揺れ動いているというのが現実であり、
 自殺の本当の姿です。

 だからこそ、
 私たち政治と行政がしなければならないことは
 評論家のように複雑な社会背景を分析したりすることではなく、
 ワイドショーのようにセンセーショナルに騒ぐことではありません。

 私たちは政治家であり、
 市長を初めとする職員の皆さんは行政マンです。

 自殺の背景に存在する社会病理を解説したり評論することは、
 私たちのなすべき役割ではありません。

 そんなことは、
 社会学者やワイドショーでしたり顔でコメントをする評論家に
 任せておけばよいのです。

 私たち政治家、そして行政マンの本当になすべきことは
 あくまでも自殺の実態を正確に指摘して、
 自殺は予防することができる、
 そういう前提で徹底的に闘うことです。

 自殺とは、みずからの意思で選択した死というよりは
 絶望に圧倒されてしまった人々が、
 ほかに何も解決策が与えられずに
 強制された死である
 ということをどうか理解してください。

 政治と行政というあらゆる手段を駆使して
 現実的な予防対策をとっていくことだけが
 私たちに求められていることなのです。

 市長、どうか数値目標を設定してください。

 そして、あらゆる施策を実現して、
 神奈川県第4位という
 このまちをむしばんでいる絶望を取りのぞいてください。

 自殺の犠牲者は
 必ず私たちの手で減らすことができるはずです。

 どうか、自殺の犠牲者と
 その遺族を取り巻く状況についての真の理解をお願いいたします。

 遺族の1人として、心からお願い申し上げます。


 以上、長時間にわたりましたが、
 私の1問目を終わりにします。

 必要があれば2問目を行いたいと思います。
 ありがとうございました。

フジノの質問に対して
市長の答えはいかに!?


(市長の回答は、後日に掲載します)

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