議会では、こんなやりとりしています


動画で質問の様子をみることができます。
市議会HPの日程平成22年6月9日をご覧下さい。

2010年6月議会・本会議(6月9日)、市長への質疑


































 おはようございます。
 藤野英明です。よろしくお願いします。



 1.「性的マイノリティ」とされる方々への理解の向上と支援について

 思春期における自殺の犠牲や自傷行為へと追い込まれる方々の中には、
 いわゆる「性的マイノリティ」とされる方々の割合が高いことが
 調査によって分かってきました。

 こうした犠牲を無くす為にも
 「性的な多様性」を保障する取り組みが不可欠ですが

 特に、思春期が対象の為、
 学校現場での取り組みが重要になります。

 これまでも、僕は学校現場における取り組みの必要性と共に
 何よりもまず国による「明確な指針」の策定を訴えてきましたが

 この4月23日に、文部科学省の
 初等中等教育局児童生徒課と
 スポーツ・青少年局学校健康教育課によって

 性同一性障害のある児童・生徒について
 初めて全国の学校へ通知が出されました。

 これは明確な指針とは言えませんが、良き第一歩と言えるでしょう。

 通知では、各学校において
 教育相談を徹底して本人の心情に十分配慮した対応をとることや、

 学級担任や養護教諭の他にも
 スクールカウンセラーや関係の医療機関などとの
 協力・連携をとることが求められています。

 そこで本市の対応について、教育長にうかがいます。 

 (質問1)
 この通知を受けて、本市では教育委員会と学校の現場で
 どのような取り組みを行ったのでしょうか。


 次に、研修を受ける「対象の拡大」についてうかがいます。

 児童・生徒への適切な対応を可能とする為には
 正しい知識に基づく理解が必要です。

 そこで本市では教職員を対象にして
 すでに2年間にわたる取り組みがなされています。

 しかし、教職員の方々に全てをゆだねるのではなく
 様々な職種を超えた支援者たちが共通の理解を土壌にして
 協力と連携が可能となるようにすべきではないでしょうか。

 そこで市長にうかがいます。

 (質問2)
 性的マイノリティとされる方々の支援を進めるためにも
 本市の研修の対象を教職員から広げて、
 スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、
 教育相談の担当者、市長部局の相談窓口担当者などにも参加を求めて
 理解を深めて頂くべきではないでしょうか。

 お答え下さい。




























 2.谷内六郎作品の返還問題と横須賀美術館の在り方について

 (1)谷内六郎作品をご遺族に返還すべきではないか


 寄贈された谷内六郎作品の返還をご遺族から求められている件について
 5月20日の全員協議会に続いて、市長の考えをうかがいます。

 6月4日に吉田市長は谷内六郎氏のご遺族を訪れて、
 今回の問題に関する話し合いを行いました。

 しかし、この話し合いを終えた後に
 ご遺族が運営しているホームページで発表されたコメントでは
 次のように記されていました。

 「吉田市長のとられた言動は明らかに『捏造』によって
  谷内家の善意を悪意にすり替え、自らの政争の具として、
  絵画の寄贈と谷内六郎館の設立をターゲットとして
  利用したとしか思えない」

 こうしたコメントを読むにつけても本当に残念ですが
 ご遺族には真意が伝わっていないのだと感じました。

 そもそも7年前、美術館建設反対運動がまきおこったのは
 政争などではありません。

 見直しの署名が7万人も集まったことは
 あくまでも危機的な市の財政状況に
 多くの市民の方々が共感したからなのです。

 谷内作品だけでなくどの作品に対しても
 さらに美術や文化そのものも否定したことは一切無いということが
 ご理解いただけなかったことは、とても残念です。

 このように吉田市長とご遺族との
 そもそも根本的な認識が全く異なっている以上は、
 今後も和解は不可能だと思います。

 マスコミ報道を見る限り、吉田市長は
 「それでも谷内六郎館の運営を継続したい」と表明しています。

 それは市長という肩書や立場が
 そう言わせているのかもしれませんが、

 まちに出て率直に市民のみなさまの声に耳を傾ければ
 このまちの市民の多くは
 そもそも谷内六郎作品に特別な思い入れはありません。

 当然ながら、ご遺族とトラブルを起こしてまで
 谷内六郎館をむりやり継続することも望んではいません。

 むしろ市民のみなさまの最大の願いは
 訴訟などこれ以上の泥仕合にならないことです。

 おもしろおかしいゴシップとして
 週刊誌に横須賀市が悪く書かれることは
 市民のみなさまにとって本当に不快でたまらないことです。

 そうした民意に沿うならば、市民の代表として
 吉田市長がやるべきことは、一刻も早い問題解決です。

 つまり、寄贈された谷内六郎作品を
 ご遺族に返還すべきではないでしょうか。



 作品を返還してトラブルが解決するならば
 責める市民の方は少ないでしょう。

 むしろ、ご遺族に作品が戻ることで
 より良い活用がなされるようになれば
 美術界にとっても良いことでしょう。

 もちろん、法的には返還すべき義務もありませんし、
 寄贈された作品は市の財産ですから、
 それを無償で返還(譲渡)するには地方自治法に基づいて
 市議会の議決が必要ではあります。

 けれどもあえてここではその点への言及は留保して
 市長としての考えを答弁していただきたいと思います。
 

 (質問3)
 迅速な問題解決の為に、寄贈作品を返還すべきではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。







































 (2)谷内六郎館を廃止・休館させることで本市に損失はあるのか

 続いて、市民の方々の関心を率直に市長にうかがいます。

 作品を返還すれば
 谷内六郎館は「廃止」あるいは「休館」とせざるをえない訳ですが、
 それによって本市に何らかの「損失」は起こりうるのでしょうか。

 ちまたで言われている1つの噂があります。
 それは、美術館を廃止したら国に借金の返済を迫られるというものです。

 オープンから3年間の実績を見ても
 横須賀美術館は毎年入場者数が減っていて、

 目標であった10万人さえも下回るなど集客力も低く、
 周囲へ波及する経済効果も低く
 税金の持ち出しばかりという実態があります。

 それにもかかわらず、そもそもは「建設見直し派」であった吉田市長が
 「それでも存続せざるをえない」と判断した理由には、

 建設の際に国から補助を受けたり
 借金を行った建物を廃止したり別の目的で使用する場合には
 一括で返済しなければならない為に

 美術館を廃止したら現在の本市の財政状況では
 返済するのは不可能だと判断したからではないか
 と言われています。

 横須賀美術館には建設時の借金だけでいまだ39億円も残っていますが
 これを一括で返すことはとうてい不可能です。

 吉田市長が「1度作ってしまったものを壊すことはできない」
 と述べていることの真意がどこにあるのかはともかく、

 一括返済の請求などの「損失」が法的に本当に起こりうることなのかを
 ぜひ市民のみなさまに説明していただきたいと思います。

 (質問4)
 谷内六郎館を「廃止」して別の展示館等に利用する場合、
 本市は建設に要した補助や市債などを
 一括で返済しなければならないのでしょうか。

 (質問5)   
 同じく「廃止」ではなく「休館」とした場合には、
 本市は一括で返済しなければならないのでしょうか。

 この2点についてお答えください。






























 (3)責任の所在を徹底して明らかにすべきではないか

 今回の問題について、一部の雑誌や新聞の中には
 全てが吉田市長の責任であるかのように記しているものがありますが
 それは的外れだと僕は考えています。

 むしろ、吉田市長は放置されてきた問題を世間に明らかにしたのであって
 そもそも問題をつくったのは歴代の市長だったのではないでしょうか。

 5月11日付けで谷内六郎氏のご遺族が
 作品の返還を求めてきた通知書を見ると

 これまで市議会も全く知らなかったこと、
 例えば谷内六郎氏だけの独立した美術館を作ると市長が約束したとか、
 谷内氏のご遺族に報酬を支払ってアドバイザー就任を依頼したのは
 市長であるといったことが
 複数にわたって記されていました。

 仮にこうしたことが事実であるならば、
 本来ならば地方自治法に基づいて市議会の議決が必要であるにも関わらず、

 議会の議決も無いままに
 「負担付き贈与」あるいは
 「負担付き寄附」などの
 「契約行為」がなされたと「ご遺族に誤解を与えてもしかたがないような行為」が、
 歴代の市長をはじめ、行政の対応として成されてきたことになります。

 これが事実ならば重大な問題です。



 こうした問題を今後2度と起こさない為にも
 今後の訴訟の有無にかかわらず、吉田市長は事実関係の確認を含めて
 しっかりとした調査を行なう必要があります。


 (質問6)
 例えば、外部の第三者を中心とした調査委員会を立ち上げて
 歴代の市長に事実確認を行なうなど、
 過去にさかのぼって「責任の所在」を
 徹底的に明確にする措置を取るべきではないでしょうか。

 市長の考えをお聞かせ下さい。  









































 (4)美術館そのものの在り方を見直すべきではないか

 今回の問題は、美術館の在り方を見直す良いきっかけです。

 横須賀美術館はオープンから3年が経ちましたが
 観覧者数は減少を続けています。

 集客効果も弱い、市民の雇用の場にもならない、
 それではいったい何の為にたくさんの税金を使ったのでしょうか。

 確かに、「教育・研究機関」でもある美術館は
 そもそも黒字化を期待すべき性質の施設ではありません。

 また、学芸員をはじめとする現場の職員の方々にも
 全く非はありません。

 けれども、財政危機の本市において
 市民の税金で運営されている以上は、
 効率や採算を重視した経営や税収が増えるなど
 市財政に対する明確な費用対効果を強く求めざるを得ないのです。

 今回の問題を契機に、横須賀市の今の現実に照らして
 横須賀美術館の在り方を根本的に見直すべきではないでしょうか。

 そこでうかがいます。

 (質問7)
 現在の横須賀美術館は「博物館法に基づく施設」として
 「教育委員会」が所管をしていますが、
 この位置づけではもはや限界ではないでしょうか。

 マーケティングや資金調達や
 営業の強化などのより柔軟な経営を可能にするためにも
 博物館法に基づかない「博物館類似施設」へと変更すべきです。

 指定管理者制度への移行も視野に入れていると
 吉田市長からはすでに答弁を受けていますが

 民間への移行に時間をかけるならば
 まず、せめて行政内部での移管を迅速に行うべきです。

 もしも吉田市長が観光による集客の為に
 あえて税金を投入し続けてもこの美術館を存続させたいと考えているならば、

 所管を教育委員会から市長部局へと移管して
 強力な全庁的支援と介入が必要ではないでしょうか。

 お答えください。
































 最後の質問に移ります。
 質問にあたって1人の市民の方のことをお話ししたいと思います。



 6才のこどもを持つ20代のシングルマザーの方が
 この5月末にさいか屋本館の閉店と共に仕事を失いました。

 そもそも介護の現場で一生懸命に働いてきましたが、
 長時間勤務にもかかわらず収入が少なく、
 さらに腰を痛めてしまった末に保障もなされず、退職しました。

 失業手当を受ける時間ももったいないので
 必死に仕事を探しました。

 そうして1年半前、さいか屋のテナントに仕事が見つかった時は
 横須賀の大手に正規社員の仕事が決まったことを
 本当に良かったと喜びました。

 しかし、今年、さいか屋本館の閉店にともなって
 そのテナントが撤退することになり、再び正規の職を失ってしまいました。
 彼女は今パートの仕事を2つかけもちしながら休みなく働いています。

 6才になったこどもは小学校にあがったばかりです。
 「友達のようにゴールデンウィークには
 ディズニーランドに行きたい」と言いました。

 けれど、時間も生活費の余裕もない彼女には
 ディズニーランドにこどもを連れていくことはできませんでした。

 ようやくとれた休暇には
 「野毛山動物園ならば入場料が無料だから」と連れていくことにしましたが、

 行き帰りのバス代と電車代を払って、
 園内でお昼ごはんを食べて、アイス1本を2人で分けて食べたら
 もう予算は無くなってしまったので、
 どんなにせがまれても
 ささやかなおみやげさえ買うことができませんでした。

 彼女の望みは、こどもが元気に育つことです。
 まじめに、一生懸命、仕事と子育てをがんばっています。

 休みなくパートの仕事をこなしても
 生活費だけで精いっぱいで貯金はできません。
 こうした暮らしが毎日続いています。

 そんな彼女は、横須賀美術館に行ったことはありません。
 それ以前に、谷内六郎さんの存在すら知りませんでした。

 けれども、彼女が働いたお給料の中から必ず税金は引かれ続けていきます。

 利用したことが無い、行く気持ちさえない美術館の為に
 その税金が使われているのです。

 美術館を含めて、税金でまかなわれている「公の施設」とは、
 その施設が存在することで地域全体に利益がもたらされねばなりません。

 しかし、今このまちに美術館があることが、
 市民全体の利益に本当になっているのでしょうか。
 彼女やそのこどもの利益に本当になっているのでしょうか。

 かつては美術館をつくれば
 観光による集客が増えて税収もあがるとか
 高齢化社会に喜ばれる施設になるとか
 文化度が高まるとか言われたこともありましたが
 3年間が過ぎて今それらが実現しているとは思えません。

 この女性の話を持ち出したのは、彼女のような暮らしをしている方が
 このまちには本当にたくさんいらっしゃるからです。
 ある意味、典型的な市民像の1つと言っても過言ではありません。

 吉田市長もそうした方々の姿を目の当たりにしてきたはずです。

 そうした方々の暮らしに視点を置いた時に
 一体どれだけの市民が巨額の税金を投入してまでも
 このまちにいま美術館が必要だと願っているでしょうか。

 もっとこどもの暮らしの為に税金を使ってほしい、
 一生懸命がんばっている人が報われるように税金を使ってほしい、
 誰もがそう強く願っているのではないでしょうか。

 吉田市長もそうお考えになりませんか。



 今からちょうど7年前この本会議場で沢田元市長は、
 かつて市議であった吉田市長と僕に対して
 「美術館に対して思想や哲学を語れ」と発言しました。

 その発言に対して僕は、
 7年前も、今もハッキリと同じ想いを持っているのですが

 横須賀市内の現実に目を転じれば、
 思想や哲学を語っている場合では無いのです。

 明日もメシを食えるかどうか、
 いや、今日のメシをまず食えるかどうかで精いっぱい、
 そんな暮らしの市民の方々がたくさんいらっしゃる。
 その現実を少しでも良い方向に変えることこそが僕たちの仕事のはずです。

 しかし今、財政危機の中では本当に必要な福祉サービスでさえ
 カットせざるを得ないような状況が続いています。財源が無いからです。
 さらには介護保険料も上げざるをえないような厳しい状況にあります。

 その厳しい現実を吉田市長は今、
 市議会議員時代よりもさらに身にしみておられるはずです。

 1990年代の沢田市長によって計画された美術館は
 2010年の横須賀の現実にはそぐわないものとなっています。

 市民のみなさまに説明責任を果たせるような
 具体的な社会的役割やリアリティのある存在意義は見えません。

 「存続」どころかむしろ「廃止」も含めた根本的な見直しが必要なはずです。
 福祉サービスに必要な「財源」を生み出すのです。

 そうすることでしかもはや財源は見つけられない、僕はそう考えています。

 そこで市長にうかがいます。

 (質問8)
 かつて「美術館基本計画」で示された
 目的・特色・基本的機能・事業活動など全てについて、

 現在の経済・社会状況と市民生活の観点から乖離した
 美術館の在り方をゼロから見直すべきではないでしょうか。 

 市長の率直な考えをお聞かせ下さい。



 以上で僕の1問目を終わります。



市長の答弁は後日掲載します。



朝日・神奈川・読売の3紙がフジノの質問をとりあげてくれました

 谷内六郎作品の返還問題についてのフジノの質疑を
 3つの新聞(朝日・神奈川・読売)が取りあげてくれました。



 (2010年6月10日・神奈川新聞より)

 (2010年6月10日・神奈川新聞より)

 (2010年6月10日・読売新聞より)



→本会議での質問のページへ
→はじめのページにもどる