まちの政治家は、こんなことしてます


2010年11月5日(金)のフジノその1
● 神奈川県公衆衛生学会に参加しました

 けさは、横浜・伊勢佐木長者町にある
 神奈川県総合医療会館へ。

 『第56回・神奈川県公衆衛生学会』が開かれました。

 今年の学会のテーマが
 「自殺防止の取り組み」に決まった段階から関心を持っていたのですが

 具体的なプログラム(タイトルや発表する方のリスト)が発表されて
 さらにフジノの関心は高まりました。

 横須賀市の自殺対策について
 わがまちの保健所からも2名が発表することになったのです!

 しかも、プログラムの一番最初です。
 これは期待の証ですよね。



 もともとこの学会を主催している『神奈川県公衆衛生協会』
 会長は神奈川県知事が勤めていますし

 5人の副会長は、神奈川県医師会長、
 横浜市立大学医学部教授
 神奈川県保健福祉部長、
 横浜市健康福祉局長、
 川崎市健康福祉局長
 となっていることからもお分かりいただけるように

 メンバーの大半は
 自治体の保健所関係の方々が占めています。

 つまり、この学会の発表はほぼ全員が自治体職員の方々なので
 横須賀市保健所の方々が発表するのは珍しいことではありません。

 けれども、自殺対策は全国に先駆けて横須賀市が
 あらゆる取り組みをしてきた、という想いがフジノにはあります。

 その取り組みの発表が、他のまちの担当者の方々に
 どんな風に受け止められるのか、とても関心を持ちました。

 さらに、他のまちの担当者の方々の発表も聴ける訳ですから
 フジノにとってものすごく良い機会でしたので、行くことにしました。

 (もちろん、わがまちの担当者の方々の晴れ姿を
  自分自身の目で見届けたいという気持ちも強くありました!)

--------------------------------------------------------

 午前中は、3つの会場で同時に発表がなされました。

 第1会場では『自殺対策・精神保健』について
 第2会場では『食品衛生』『感染症・疫学』『医療関連』について
 第3会場では『母子保健』『口腔保健』『健康関連』についてです。

 午後からは、河西先生(横浜市立大学准教授)による自殺対策の講演、
 各市の保健所長らによる自殺対策のシンポジウムでした。

 フジノは、もちろん第1会場に行きました。

 (第1会場の発表の一覧です)

 まず、先頭バッターは綿引さん。
 タイトルは『横須賀市における自殺未遂者対策』について。



 続いて、宮川さんの発表でした。
 タイトルは『自殺未遂者支援に関する一考察』。

 精神保健福祉相談員として
 実際に出会った方々との体験を通じての考察でした。



 お2人ともフジノにとって本当に心強い存在です。
 自殺対策にかかわる中で、いろいろな機会にお世話になっています。

 現場でのすさまじい忙しい毎日の中で
 さらに学会発表の準備をすることは
 その忙しさをさらに厳しいものにしたことと思います。

 けれども、他都市に横須賀の体験の蓄積が共有されることは
 本当に大切なことだと思います。お2人とも本当におつかれさまでした!

 今回はとても限られた時間の中での発表でしたが
 できれば日本自殺予防学会などでも発表していただきたいです。



 続いての発表は、横浜市衛生研究所の方による
 『横浜市における自殺の現状〜神奈川県警データの解析〜』でした。

 フジノも神奈川県警のデータをよく見るのですが
 お1人お1人の方の個票にもとづくものでは無いので
 分析をしようにも限界がありますね...。

 どんな方が、どんな想いで、どんな日々を生きてこられたのか、
 まとめられたデータからでは『人生』というものは見えてきません。

 だから、横浜衛生研究所の方のご苦労というのは
 強い実感をもってフジノは共感しました。

 警察がせめて研究機関に対してだけでも
 もっと詳しい情報開示をしてほしいです

 質疑応答の時にはフジノも質問させていただきました。

 分析結果をどのように対策に結び付けていくか、
 これはフジノもデータが公表されるたびに
 いつも必死になって考えていることです。

----------------------------------------------------

 その他に、横浜の自死遺族のわかちあいの会についてなど
 4つの発表がありました。

 どの発表もとても勉強になりました。

 午後からは、先日お会いしたばかりの河西千秋先生の特別講演や
 わがまちの保健所健康づくり課長も登壇してのシンポジウムもあったのですが
 残念ながら、午前中で退席してフジノは東京へ向かいました。

 毎年参加している自殺対策についてのフォーラムが
 開催される為、そちらに向かいました。

 自殺対策担当の自治体のみなさま、
 いつも本当におつかれさまです。

 自殺対策基本法が成立してから4年になりますが
 まだまだ地方自治体での対策が部署を越えての広がりを見せない中で
 毎日ご苦労されていることと思います。

 自分のまちの役所の中では自殺対策について
 共に語り合うことができる存在が全くいない、という方も多いと思います。

 だから、ぜひ自分のまちにとどまらず、
 県内で、全国で、ネットワークでつながっていきましょうね!

 これからも生きやすい社会へと変えていく為に
 どうか、みなさま、ご協力をお願いします。


 (*後日談)
 それにしてもこの学会は本当にマイナーで、
 公衆衛生に関わる方々くらいしか存在すら知らないものなのですが
 翌日6日の神奈川新聞では
 こんなにも大きく報道してくれました。

 (2010年11月6日・神奈川新聞より)

 この取材をしてくれた佐藤奇平記者といえば、
 確か平塚支局にいらしたようにフジノは記憶しています。

 平塚といえば、自殺対策条例を全国で初めて成立させたまちです。

 政治・行政に加えて、こうしてマスメディアにも
 こうして問題意識を強く持ってくれる方がいるからこそ
 条例化も実現したのでしょうね。

 本当に素晴らしいことだと思います。




2010年11月4日(木)のフジノ
● 今までの活動ではもう福祉を改善できないのではないか

 今日は、横須賀市内のあらゆる障がい福祉カンケーの団体によって
 構成されているネットワーク組織である
 『障害者施策検討連絡会』
 市議会議員との意見交換会でした。

 『障害者施策検討連絡会』からの呼びかけで
 毎年おこなわれているものですが
 今年は9名の超党派の議員が参加しました。



 障がい福祉に関わる団体の方々の
 率直な意見が聴くことができる、

 しかも、10人もの市議会議員が集まることは
 本会議や委員会を除くとなかなか現実的に難しいことなので

 この機会は、本当に大切な場だと
 フジノは毎年すごく重視しています。

 けれども、2時間の意見交換を終えて
 なんだかとてもむなしい気持ちばかりがフジノには残ってしまいました。

 反論を受けることを承知の上で書くのですが
 横須賀市議会議員として
 障がいのある方々の福祉について
 誰よりも取り組んできたという想いをフジノなりに持っています。

 市内外のたくさんの当事者の方々の
 生の声をいつも聴かせてもらってきたと思っていますし、
 作業所やグループホームをはじめとする現場にも
 可能な限りうかがってきたと思っています。

 法制度を変える為にも
 国の審議会でも県の審議会でも乗りこんでいって
 必死に勉強をしてきましたし、

 特に横須賀市の福祉政策については
 8年間いつも市議会であらゆる提言を続けてきました。

 そんな活動をしてきて
 自分としては強い熱意を持って活動をしていると信じているのですが

 けれども、障がい福祉関係の『団体』の方々と
 こういう集団の場でお話しすると
 いつも終わった後に違和感ばかりを覚えて、本当に残念です。

 フジノがここで強調をしたいのは
 違和感を抱くのは

 (1)障がいのある方々の『ご本人』ではありません

 (2)障がい福祉関係の『個人』に対してではありません

 つまり、この場に参加していた
 職員の方々やご家族の方々おひとりおひとりと語り合う時には
 全く違和感なく同じ言葉で同じ理想を語り合うことが
 いつもできているのですが

 何故か、『〜会』とか『NPO〜』という
 『団体』の肩書を背負ったとたんに

 みなさんとフジノは全く分かりあえなくなってしまう、と
 いつも感じてしまうのです。

 これまで8年間、政治家として活動をしてきましたが
 どうしても何かの機会があるごとに抱く、この違和感が拭えません。

 それは、知的・身体・精神・発達など障がいの違いを問わず
 あらゆる障がい福祉カンケー団体のほとんどに感じます。

 8年間もその違和感を感じる以上は
 いつか率直な本音を書くべきだと考えてきました。

 福祉政策をより良い方向に変えていくには
 従来の『総花的』な『要求型』のやり方ではもう無理なのではないか


 というのが
 フジノの感じてきた違和感です。

 こうした率直な本音は、この意見交換会の場でも
 毎年、ハッキリとお伝えしてきました。

 (ホームページでも、2008年の活動日記で本音の一部を吐露しました)

 それでも、フジノがこういう発言をすると
 いつも流されてしまうのです。

 本当に財政が厳しい中で
 それでも福祉を守り、かつ発展させていく為には、
 もっと『重点的』に『現実的』に『戦略的』に取り組まなければ
 何も変えられないのではないか


 とフジノは考えています。

 いつまでたってもなかなか現実が変わらないことへの
 『焦り』がこういう気持ちを引き起こしているのか?
 と自問自答を何年間も繰り返しました。

 でも、やっぱり違います。

 真剣な想いで現実を変えたくて
 問題提起をしています。

 焦りでもなく、怒りでもなく、
 むしろ誠実な責任感から。

 障がい福祉カンケー団体のみなさま、
 フジノのこうした意見をどのようにお考えでしょうか。

 いつもフジノの想いを伝えても受け流されてしまいますが
 このままの活動の在り方だけでみなさまはよろしいとお考えでしょうか。

 政治家としてこのまちの障がい福祉を変えたいと願えば願うほど
 何故か『団体』の肩書きを背負った方々とフジノとの間に
 深いミゾがあることをいつも感じずにはいられなくて
 本当に悲しいです。




2010年11月3日(水)のフジノその3
● 渋井哲也さん『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』出版

 現代の自傷・自殺について80年代後半から報道しつづけてきた
 渋井哲也さん(ジャーナリスト)の最新作が
 ついに来週、出版されます。

 『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり〜未遂者の声と、対策の現場から〜』
 (河出書房出版社、11月9日発売)

 こちらです。


 実は、この本の『第6章・地域で取り組む自殺対策』に
 フジノの活動がとりあげられています。

 今年、渋井さんに取材をしていただいていました。
 それがついに出版されたのですね。


 今年3月15日に汐入駅前でおこなった
 自殺対策強化月間の街頭キャンペーンの様子から始まって

 フジノのこれまでの取り組みや様々な想い、
 横須賀市の様々な対策や
 政府の施策に対する意見など
 7ページにわたって報じてくれました。


 こうした単行本でフジノの活動がとりあげられたのは2回目です。
 新聞や雑誌では何度もとりあげてもらってきましたが
 今回は、特別でした。

 大きな感慨をもって
 この本を読みました。

 その理由は、著者である渋井哲也さんです。
 フジノは、特別な思い入れがあります。

 8年前、フジノが自殺対策に取り組み始めた
 本当に初期の頃には、
 自殺・自殺未遂・自傷について
 信頼できる内容の本がほとんどありませんでした。

 (研究者による論文と翻訳書はのぞきます)

 フジノが日本の自殺対策に関わる方の中で最も尊敬している
 高橋祥友先生(防衛医科大学教授)の著作をのぞけば

 ほとんどの本が、科学的根拠にもとづかない
 昔ながらの偏見をひきづった内容ばかりでした。

 倫理観や宗教観をふりかざすような
 うんざりさせられるような本もたくさんありました。

 そんな中、フジノが深く共感したのが
 2人のライター/ジャーナリストでした。

 ロブ@大月さんと渋井哲也さんです。

 きれいごとやオブラートにつづんだ遠回しの表現なんかではなく
 お2人の文章ではリアルな現実が切り取られていました。

 単にすさまじい数の方々に取材を重ねたからではなく
 現実の中に身をうずめなければ
 決して描くことができないものだと感じました。

 フジノは、何年ものあいだ、
 オーバードーズやリストカットの実際の姿を目の当たりにしてきました。
 そして、自死によって大切な人を失ったばかりでした。

 だから、本当に意味のある情報や知識が必要だった僕にとって
 たくさん読みあさった本のほとんどが
 リアルでない唾棄すべきニセモノに感じられてうんざりでした。

 そんな中、お2人の本を読み進めることは
 何度も僕にフラッシュバックを引き起こすことになりましたが
 (苦しかったです)

 切実に求めていた本当に意味のある情報や知識が
 記されていました。

 こうして、ロブさん&渋井さんの本は
 何度も読み返してきたのです。

 ロブ@大月さんとは、
 2005年2月に運良く直接お会いすることができました。

 一方の渋井さんとは、お会いしたかったにも関わらず
 昨年までずっと機会が無かったのですね。

 2009年12月に自殺予防総合対策センターが開催した
 『困窮者問題への対応についての勉強会』に参加した時、

 フジノが会場からツイッターでつぶやいたら
 同じ会場に居るという方からリプライ(返事)をいただいたのですが
 それがなんと渋井哲也さんだったのです。

 (こんな出会いを与えてくれたツイッターには本当に感謝です)

 それから、とんとん拍子に取材までしていただいて
 こうして新しく出版された著作に
 まさか自分が載せていただけるなんて

 人生というのは何が起こるかつくづく分からないものだと
 痛感しました。

--------------------------------------------------

 読み終えた感想は

 「こんな風に書いてもらったのは、初めてだ」

 というものです。
 読んでもらった友達も同じ感想でした。

 これまでいろいろなメディアでとりあげていただいて
 その全てに深く感謝をしていますが

 フジノは決して『悲劇のヒーロー』ではありませんし、
 メディアによって美化して描かれた自分と
 現実の自分にギャップを感じて苦しんだことも何度もありました。

 でも、渋井さんが取材者だったこともあって
 ふだんは言わないようなこともフジノは率直にお話ししました。

 そして、この本の中のフジノは
 かつて渋井さんの著作を読んで感じたとおりの
 等身大のリアルなフジノだったです。

 (反貧困世直し大集会@明治公園にて、渋井さんと)


 渋井さん、本当にありがとうございました!

 どうかみなさまも機会がありましたら
 この本を読んでみて下さいね。来週発売です。




2010年11月3日(水)のフジノその2
● 都心からすぐで自然いっぱいの観音崎キャンプ場を「廃止」から守ろう!

 自殺問題研究会を終えて、桜木町から大急ぎで横須賀へ戻りました。
 さらにバイクに乗って、スーツのまま観音崎へ向かいました(寒かったです!)。

 観音崎にある『神奈川県立・観音崎青少年の村』へ行きました。

 今日は朝からここで
 『焚火の村祭』が開かれているのですね!


 主催したのは、カフェトークの会場としていつもお世話になっている
 カフェ『RRROOM』の店長・コウジさんです!

 フジノが到着した時には、すでに真っ暗でした。



 そこで、焚火へ直行しました。
 温かい炎。さっそく手をかざしました。

 冷え切った手が温まっていくと共に
 炎を見ていると気持ちが穏やかになる気がします。

 

 コウジさんたちや参加者のみなさんは、
 集会室で音楽イベントをやっているところでした。



 実はこの『青少年の村』にある建物は
 イギリス積みのレンガ造りで、明治後期に作られたそうです。
 歴史ある文化遺産ですね。

 戦時中には火薬庫として利用されていましたが、
 なんと今もこれらの建物は
 改修されながら現役で使用されています。

 宿泊することができる建物は、旧第1火薬庫です。
 集会室のある建物は、旧第2火薬庫です。







 署名用紙はこちらです。

 同じ想いを持ってくれる方は
 この署名用紙をどしどしダウンロードをして、署名して下さいね。

 猫好きにはとてもたまらない
 可愛い貼り紙がありました。



 長井の野菜。



 焚火の村・村長のコウジさん。







 焚火と音楽のコラボの様子を
 Youtubeで紹介します。こんな感じだったんですよ〜。



------------------------------------------------------------------------------------

 後日、この様子を神奈川新聞が報道してくれました。
 ありがとうございました!




2010年11月1日(月)のフジノ
● こども虐待防止キャンペーン@Yデッキへ

 今日から11月に入りました。
 2010年もあと2カ月、あっという間ですね。

 あまり知られてはいないのですが
 11月は『児童虐待防止推進月間』と定められています。

 初日にあたる今日、『こども虐待防止の街頭キャンペーン』
 横須賀中央駅・追浜駅・京急久里浜駅の3か所で行なわれました。

 フジノは、横須賀中央でのキャンペーンに参加しました。

 (写真はYデッキから見た横須賀中央)


 2年前から横須賀市ではこのキャンペーンを行なっています。
 今回は、50人近くの方々に参加していただきました。

 児童相談所を担当している『こども育成部』をはじめ
 教育委員会などの市職員の方々(もちろん吉田市長も参加です)と共に

 乳児院・児童養護施設などを運営する
 民間のこども家庭福祉カンケーの方々も協力してくれました。

 (開始のあいさつをする市長)


 横須賀市は中核市として全国で初めて児童相談所を設置するなど
 こどもたちを虐待から守る為に
 24時間365日体制で活動をしています。

 けれども、政治と行政だけでは
 全ての虐待を防ぐことはできません。

 市民のみなさまの協力が必要なのです。

 家族や血縁関係はどんどん薄くなっていって
 孤立した閉じ込められた環境の中で
 子育てが行なわれていくと虐待が生まれていきます。

 あるいは、自らが虐待を受けて育った方の中には
 自分の痛みと他人の痛みの境目が分からないままに
 こどもへと暴力をふるってしまう人もいます。

 どのような形の暴力であっても、
 それを防ぐには『人』を支える『応援団』の存在が不可欠です。

 加害者を生まない。
 被害者を生まない。

 そもそも、人を暴力へと追い込まない社会づくりが必要です。

 もしも虐待が起こっても、深刻化する前に無くすことが必要です。

 あるいは、深刻な虐待を受けたこどもたちを
 再び愛情で包みはぐくむことが必要です。

 その為には、あらゆる機会に
 市民のみなさまに協力をお願いしたいのです。

 こどもへの虐待を防止する想いをこめたのが
 オレンジリボンです。

 リボンがオレンジ色である理由は、
 里親家庭で育ったこどもたちが『明るい未来を示す色』として選んだ
 と言われています。



 キャンペーンでは、このオレンジリボンを胸につけると共に
 市民のみなさまにも配布しました。

 「これを付けている人はみんな一緒に闘っています」
 という目印なのですね。

 (オレンジ色のたすきも付けました。たすきって、ちょっと恥ずかし)


 昨年、横須賀市では
 児童虐待についての相談は274件ありました。
 (下の表は、児童相談所資料よりフジノが作成したもの)

 虐待274件の内訳
ネグレクト 122件
心理的虐待 100件
身体的虐待 48件
性的虐待 4件


 虐待274件の年齢別の内訳
幼児 108件
小学生 106件
中学生 23件
乳児(0歳児) 21件
高校生 13件
その他 3件


 虐待274件の、主たる虐待者の内訳
実母 185件
実父 68件
実父以外の父 12件
実母以外の母 1件
その他 8件


 この実態をどう受け止めるかは、複数の分析ができると思います。

 1日1件も相談があるなんてすごく多いなあと
 驚いた方もいらっしゃるでしょう。

 でも、フジノが願うことは

 「もっと相談してほしい」

 ということです。

 虐待の中から自ら抜け出すのは本当に難しいです。
 外部のサポートの力が必要だとフジノは考えています。

 なんとか生きのびることができたとしても
 こころにもからだにも
 癒すことのできない傷がのこることがあります。

 だから、児童相談所をはじめとする
 こども家庭福祉のあらゆるサポート体制に
 ぜひ頼っていただきたいのです。

 どうか、もっともっと頼っていただきたいと願っています。
 その為にも相談はどんどん使ってほしいのです。


● 流れた涙に応える責任

 フジノはYデッキの下で、チラシとリボンを配っていました。

 「11月は『児童虐待推進月間』です。
  初日の今日は、市内3つの駅で街頭キャンペーンをしています。

  ふだんから横須賀市は24時間365日体制で
  こどもたちを虐待から守る為に活動しています。

  けれども政治と行政の力だけでは
  全ての虐待を防ぐことはできません。

  市民のみなさまのご協力が必要なのです。

  そこで今日は児童相談所を出て
  市民のみなさまに力を貸してほしいとお願いをしています。

  相談窓口をチラシに記してあります。
  どうかもっと相談窓口をご利用してください」

 というようなことをフジノは大声で伝えながら
 チラシを渡していました。

 そこに、制服を着た学生が4人やってきました。
 男子1名と女子3名です。

 虐待防止ってなんだよ、と男子が
 フジノにつっかかるように話しかけてきました。

 こんなことやっててなんか意味あるのかよ、と彼は言いました。

 僕はとても意味があると思っているからやっているんだ、と答えました。

 僕の父親は本当に厳しくて
 幼稚園に入る前からしばしば激しく殴られました。

 父は警察官をしていたので、家には手錠がありました。
 その手錠で僕は両手を柱にしばられて
 1メートルくらいある木のものさしで殴られました。

 大人になった今、はっきりと僕は分かるのですが
 幼かった当時はそういう暴力を受けたのは
 自分が悪いからだと思っていました。

 でも、それは違うのです。
 今ならはっきりとそれは『虐待』だったと分かります。

 でも、まだ4〜5才の僕には
 『愛情』や『しつけ』と、『虐待』の区別なんてつかなかった。

 だから、まわりの大人が助けなければいけない。
 絶対に大人たちがこどもたちを守ってあげなければいけないんだ。

 そんなことを、彼に話しました。

 すると突然、彼は涙を流し始めました。
 タクシー乗り場の前の、人通りの多い場所にも関わらず。

 彼は、自分は今、父親から暴力を受けている、と言いました。
 誰にも言えないけれどひどく殴られている、と。

 一緒にいた3人の女子は、驚いていました。

 僕は、その暴力を受け続けてはいけない、
 児童相談所や福祉に頼ってほしい、
 その暴力から必ず抜け出せるように力を貸すから、と言いました。

 僕の斜め後ろでチラシを配っている女性は
 児童相談所を担当している市役所の部長なんだ、
 部長もこうしてYデッキでチラシを配っているのは
 本気で力になるよという想いを伝えたいからなんだ
 Yデッキの上には、市長も来ているんだ。

 暴力からこどもたちを守る為に
 本気の大人もいるんだよ、だから頼ってほしい、と僕は言いました。



 それから、女子3人とちょっと離れて
 彼の話をひととおり聴かせてもらいました。

 やがて彼は落ち着くと、僕に向かって

 「がんばれよ!」

 と大きな声で言いながら、離れていきました。

 僕は「おまえもがんばれよ」と返事をしました。

 (終了後にあいさつをする市長)


 街頭キャンペーンに何の意味があるか?

 そう尋ねられると、
 こういうことがいつもあるからだ、と思うのです。

 この男子が本当に児童相談所に電話をくれるのか、
 それは分かりません。

 もしかしたら、底なし沼のような暴力が
 今この瞬間も続いているのかもしれません。

 絶望が彼を苦しめ続けている可能性は
 十分にありえることです。

 けれども、もしかしたら、力になってくれる大人がいるのかもしれない、
 そんな一分の希望を感じてくれているかもしれません。

 何よりも、赤の他人であるフジノに
 こうして話しかけてくれたことそのものが
 今ここから抜け出したいという強い意志だと僕は信じたいのです。

 こういう機会を、あえて大人の側がつくるべきなのです。

 キャンペーンなんてくだらない、
 その場限りのことをやって何の意味がある、と尋ねられます。

 確かにそうかもしれません。

 でも、大人はこどもたちにどんな形でも
 希望を示さなければいけないのです。

 横須賀は、こどもへの虐待のひとつであるネグレクトが
 神奈川県でワースト1位のまちです。

 僕たちは、どんなことをしても
 こどもたちを守る為に全力を尽くさねばならないのです。


→日記過去分の目次へ
→はじめのページに戻る