ついに「犯罪被害者手帳」が完成しました
神奈川県警察が作成を進めてきた、犯罪被害者手帳『かもめノート』ついに完成しました。

犯罪被害に遭われた方や、そのご家族・ご遺族が、被害後に直面する様々な問題や不安について必要な情報を得るとともに、支援を受ける際の記録を残していく為の手帳です。
神奈川県警察が2026年8月21日、第1版として作成しました。
神奈川県警は、この手帳を、
「あなた自身が保管する、あなたの支援の『カルテ』」
と位置づけています。
すでに現場での配布もスタートしました。
「かもめノート」は、どのように受け取るの?
犯罪被害に遭われた方は、被害届を提出する際に、神奈川県警察の各警察署で担当の警察官の方がお渡し致します。
国の主導でスタートしたこの取り組みですが、神奈川県警では『かもめノート』の作成前からすでに詳細な『被害者の手引き』という冊子を発行していました。
その為、すでに被害に遭われた方へさかのぼって『かもめノート』を新たに配布していくのではなくて、引き続き『被害者の手引き』をご活用いただければと思います。
今回の『かもめノート』は、そうした情報提供をさらに発展させ、被害者自身が書き込み、支援の経過を記録し、必要な時には支援者に見せることができる手帳へと進化させたものだとフジノは受け止めています。
また、神奈川県警察のホームページからPDFファイルをダウンロードして内容を確認することもできます。
フジノは、この手帳が『被害者ご自身が使える実践的な道具』になることを期待して、作成の動きを注目してきました。
犯罪被害者支援では、制度をつくるだけでは十分ではありません。
被害に遭われた方が「今、自分は何をすればいいのか」を知ること。
「誰に相談すればいいのか」が分かること。
「これから何が起こるのか」を少しでも見通せること。
そして、「自分はどんな支援を受けられるのか」を知ること。
さらに、複数の機関と関わる中で、「誰に、いつ、何を相談したのか」「次に何をすればいいのか」を自分自身で確認できること。
現時点で手帳の内容を見る限り、よく考えられた仕組みだと思います。ただし、本当に被害者の負担軽減につながるかは、実際の運用を見なければ分かりません。
現場では、犯罪被害に遭った直後の多くの方々は「冷静に被害者手帳を読むことなんてできない」という状況にあることも理解しています。
実際に、あるご相談者の方はフジノに相談をしたことは記憶しているものの、記憶が飛んでしまったり、混在してしまう状況になる方もいらっしゃいました。
だからこそ、自らの手で記録する手帳の存在は損なわれかねない記憶の代わりになりうると期待しています。
「かもめノート」は、単なるパンフレットではありません
この手帳の最大の特徴は、被害に遭われた方自身が書き込めることです。
神奈川県警は、
「どこを書くかはあなたの自由です」
としています。
ガマンしてつらいことを書く必要は無くて、書きたいと思うところから書いて大丈夫。誰かと相談しながら、一緒に書くこともできます。
そして、もう一つ大切なのが、「説明のかわりに見せる」という使い方です。
支援窓口では、被害に遭った事実や現在の状況を伝えなければならないことがあります。その際に、この手帳を見せることで、できるだけ同じ説明を繰り返さなくても済むようにするという考え方が示されています。
被害について何度も話すこと自体が大きな負担になることがあるからです。
今後フジノとしては『どの連携機関でも必ずこの手帳を提示されたらきちんと支援者は読むこと』を徹底するように議会質疑などを通じて呼びかけていきます。
心と体に起こり得る変化も説明されています
手帳の前半には、被害を受けた後に起こる可能性がある、心と体の変化についても説明されています。
- つらい記憶が頭から離れない。
- 眠れない、悪夢を見る。
- 人の多い場所が怖くなり、外に出られなくなる。
- 被害を思い出す物や場所を避ける。
- 人間関係がうまくいかなくなる。
- 自分を責めてしまう。
- お子さんの場合には、赤ちゃんがえりや、発熱・腹痛・頭痛などの体調不良が現れることもあります。
こうした反応が起こる可能性があることを、あらかじめ知っておいてほしいのです。
そして、もしもそうした反応が起こった時にはおひとりで抱えこまないで『相談につながるべきサイン』だと受け止めてほしいのです。
「こんなこと相談してよいのかな?」とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。そんな時に手帳に記してあったことをもとに、相談につながってほしいと切に願っています。
「困っていること」「知りたいこと」をチェックできます
『かもめノート』には、被害後に生じる様々な困りごとや、知りたいことを確認するためのチェックリストもあります。
手帳全体は、
「自分の状態を知る」
→「困っていることを整理する」
→「相談先を探す」
→「刑事手続を知る」
→「支援の経過を記録する」
→「利用できる制度を知る」
という流れを、一冊で確認できるようになっています。
「誰と、いつ、何を話したか」も残せます
犯罪被害者支援は警察だけでなく、検察、裁判所、行政、医療機関、民間支援団体など、複数の機関が関わることがあります。
だからこそ、連絡や相談の記録が重要になります。そこで『かもめノート』には、日付/担当者/内容/今後の予定を記録できる欄があります。
そして神奈川県警は、
数年後に再び支援が必要になったときにも、当時の状況や担当者が分かることが役に立つかもしれない
と説明しています。
だからこそ、
「あなたの支援の『カルテ』」
なのだと思います。
「一人で悩まないで」というメッセージ
『かもめノート』の冒頭には、犯罪被害を受けると、心や体の不調だけでなく、刑事手続への協力や支援制度の利用手続など、これまで経験したことのない状況に直面することがあると書かれています。
そして、
「一人で悩まず、まずはどこかに相談することで、あなたを支援する機関や担当者とつながり、そこから様々な機関等の支援を受けることができます。」
と記されています。
犯罪被害に遭った方が、
「自分だけで何とかしなければ」
と思わなくていい。
支援してくれる人がいる。
相談できる場所がある。
そして、そこから別の支援につながっていく。
『かもめノート』が、その為の入口となることを期待しています。
「かもめノート」にフジノが注目してきた理由
フジノは、2006年から犯罪被害者支援を議会で取り上げてきました。
横須賀市に犯罪被害者支援の条例をつくること、相談窓口を設けることをくりかえし提案し、2007年に相談窓口が実現し、2021年には『横須賀市犯罪被害者等基本条例』の制定を実現しました。
フジノが犯罪被害者支援について訴え続けてきたのは、被害がその後の人生を大きく変えてしまうからです。
- 身体的な被害。
- 精神的な苦痛。
- 医療。
- 仕事や学校。
- 経済的な問題。
- 家族関係。
- 住まい。
- 警察・検察・裁判所とのやり取り。
- 周囲の無理解やインターネット上の誹謗中傷などによる『二次被害』
被害に遭われた方々は、長く苦しみ続けることがあります。
だからこそフジノは、
「被害に遭った後、再び自分らしい人生を生きられるまでサポートしていく仕組み」
が必要だと訴えてきました。
今回の『かもめノート』も、その『サポートしていく仕組み』のひとつの手段だと考えています。
ゴールではなく、スタートです
フジノが犯罪被害者支援に取り組んで、今年で20年になります。提案がなかなか実現しなくても、ひとつひとつ、あきらめずに取り組んできました。
だからこそ、今回も『完成した』ことだけで終わらせず、実際に役立っているかを見届けたいと思います。
今回『かもめノート』が完成するのに少し時間がかかったこともあり、無事に完成してホッとする気持ちがあります。
でも手帳の完成はゴールではありません。
犯罪被害に遭った方が「手帳があって良かった」と心底感じられるものにしなければ意味がありません。
- 実際の被害者の方々がどのように使うのか。
- 支援者はどのように活用するのか。
- 「同じことを何度も説明しなくて済む」という目的は、本当に達成できるのか。
- 支援機関同士の連携に役立つのか。
- そして、使ってみた方々からどのような改善点が出てくるのか。
今はまだ配布がスタートばかりですが、一定期間ごとに(例えば1年ごとに)こうした点をしっかり議会での質疑を通してフジノは検証していきます。