2010年臨時議会・質疑

藤野英明です。よろしくお願いします。

本日、市長から5つの議案が出されましたが、『人事院勧告』に基づいて本市職員の給与を引き下げようとする2つの議案、第101号と第103号に関連して、市長に質問します。



人事院勧告に基づいて職員の給与を改定することは毎年くりかえされてきた慣例ですから、職員にも比較的受け入れられやすく、人件費をカットする為の口実としてはとても便利です。

しかしこれは『経営』という観点から見れば、とても安易で、無策でしかありません。

財政危機における「人件費は単にカットすればそれで良い」という現在の全国的な傾向に対して

「それでは人財を最大限に活かすことにはならない」

と僕は考えています。

そこで、この質疑を通して、『今回』の議案の賛否の判断の根拠とすると同時に、『今後』の本市の人事・給与政策の在り方について、議論を始めるきっかけとしたいと考えています。



それでは質問に入ります。

1.本市の給与政策の在り方について

提案された2つの議案は、8月10日に人事院によって出された勧告に基づいて、本市の職員給与を減額しようとするものです。

『人事院勧告』に基づく職員給与の改定は本市では、毎年、無批判に繰り返されてきました。

しかし、この改定の方法に『経済合理性』や何らかの『プラスの効果』があったのでしょうか。

表面的には、人件費を圧縮することができたように見えても、例えば財政全体を『経営』という観点からプラスの効果とマイナスの効果を比べてみて、本当にプラスの効果が上回っていたのでしょうか。

もしそうでないならば、本市はこのやり方を変えるべきです。



そもそも国家公務員の給与に対する人事院の勧告という制度が、経済合理性のあるものかを改めて検討すべきです。

今年も勧告と共に人事院総裁が談話を出しましたが、この中で、勧告の効果について次のように述べています。

国家公務員の給与に係る人事院勧告は国家公務員法に規定する『情勢適応の原則』に基づき、経済・雇用情勢などを反映して決定される民間給与に準拠して行なわれます。

それに基づいて公務員給与を決定することは国民の理解を得られる適正な給与水準を確保するものとして定着しております。

公務員給与を適切に決定することは、職員の努力や実績に的確に報いると共に人材の確保にも資するものであり、組織活力の向上、労使関係の安定などを通じて行政の効率的、安定的な運営に寄与するものであります。

本当でしょうか?

この談話の前半部分と後半部分は、論理的に全くつながっていません。

公務員の給与は民間企業に準じた金額にするという情勢適応の原則と職員の努力や実績に的確に報いるということとは全く無関係です。

『情勢適応の原則』についてですが、市場原理が適用されないように見える公務員の給与の金額について、国民に理解を得やすいように設定した基準のひとつの在り方にすぎません。

特に、厳しい経済社会状況のもとでは、バッシングを受けやすい公務員の給与の金額について国民のなんとなくの理解を得られる『理屈』に過ぎません。

むしろ、職員の労働による成果や積極的な工夫や努力による改善などの効果とは無関係に給与政策を放棄して一律の基準をあてはめるものです。

これでは人事院総裁の言葉とは全く逆で、職員がいくら努力しようともどれだけ実績をあげようともインセンティブは何もなく、そうしたの努力や実績に的確に報いるどころか全く無関係に給与が決まるということです。

この談話1つとっても、『人事院勧告』の持つ効果は見えませんし、そんなあいまいなものに基づいて本市が給与改定を繰り返すことは、1人1人の労働者の心理的な効果という観点からも正しいとは言えないはずです。

人材確保にも有効だとは言えませんし、組織活力の向上どころかモチベーションの低下をもたらし、ひいては、行政の効率的、安定的な運営をも妨げかねません。



さて、こうした観点に加えて、新しい時代の地方政府の経営という視点に立った時、全国一斉に横並びで職員給与の改定を続けている現状は、地域主権の確立を目指すべき地方政府の立場としても誤りだと僕は考えています。

それぞれの地域の現状に基いて、それぞれの地方政府が、独自に定めるべきものだと僕は考えています。

地方公務員法では給与について3つの原則が定められていますが、それらは決して地方政府独自の判断を禁止しているものとは読めません。

職員のモチベーションを的確に高めていく、組織のパフォーマンスを向上させていく、その為に柔軟な給与政策を取るべきことの方が全体の奉仕者である公務員の本分を生かすことではないでしょうか。



さて、本市についてに話を移しますが、残念ながら吉田市長はこれまで「本市の給与政策はいかにあるべきか」をその目指す効果や根拠を示して具体的に語ったことはありません。

例えば、平成21年第3回定例会において高橋敏明議員との質疑において、

「本市が慣習としてきた職員給与の人事院勧告に準じた取り扱い方式を今後も継続するのか、それとも破綻状況にある厳しい財政事情を勘案して本市独特の判断で決めていく方式をとるのか」

との質問に対して、地方公務員法第24条第3項の『均衡の原則』を挙げて

「今後も基本的にはその手法で行いたい」

と答弁しただけです。

何故その前例踏襲の手法を行なうことを吉田市長が選んだのか、その効果や目指す方向性などの説明が全くなされていません。

例えば、昨年の給与改定はどんな効果があったのでしょうか。

給与を減額したことで具体的に何か効果が得られたのでしょうか。

そこでまず市長にうかがいます。

【質問1】
(1)市長はそもそも職員給与の在り方についてどのようにお考えでしょうか。

市長の給与政策についての考えをお聞かせ下さい。

【質問2】
(2)昨年の「人事院勧告に基づく給与改定」の根拠として、地方公務員法における給与についての3原則の1つである「均衡の原則」を市長は挙げましたが、それは何故なのでしょうか。

特に「均衡の原則」を重視する理由は何でしょうか。その効果として何を目指しているのでしょうか。

また、今回の給与改定の議案もまたこの「均衡の原則」がその提案根拠なのでしょうか。



(3)地方公務員法で記されている3原則の1つには第24条第1項『職務給の原則』があります。

そこには職員の給与とはその職務と責任に応じて決めるべきだとされています。

一般的に見て民間企業であろうと無かろうと、この原則こそが誰もが腑に落ちるものではないでしょうか。

【質問3】
むしろこちらの原則をより重視して、つまり、その職務と責任に応じて職員の努力や成果に連動した給与制度の構築こそ目指していくべきではないでしょうか。

これは同時に、かつて沢田市長がスタートさせた人事制度改革をさらに進めていく進化・深めていく深化をさせていく上で最も重要だと僕は考えています。

それは従来の横並びの均衡を重視した「人事院勧告に基づく給与改定」とは対極的な政策と言えますが、

市長はこうした取り組みの必要性をどのようにお考えでしょうか。

本市の給与政策の在り方について、以上の3点についてまずお答えください。

2.昨年の臨時議会での議論を受けて、本市の対応について

さて、ここからは昨年の給与マイナス改定の際になされた議論について、その後どのような対応がなされたかをうかがいます。

昨年も今回と全く同じ形で臨時議会が招集されて、本会議と委員会が開かれて、議論がなされました。

その審議において、総務・教育両常任委員会では、3つの影響についての指摘がなされました。

第1に、努力や成果などとは無関係に給与改定が繰り返されることが『職員のモチベーションに与える影響』について。

第2に、度重なる職員給与のマイナス改定が『本市経済に与える影響』について。

第3に、職員給与のマイナス改定が『市民税の税収に与える影響』について。

これら3つの影響について、昨年、市としては具体的な検討をしていませんでした。

そこで答弁において総務部長は

「複合的な影響についての指摘を受けたので、単に人事院勧告に準拠するということではなく、今後はきちんと市の中で議論した上で進めていく」

との主旨の答弁を行ないました。

極めて誠実でまっとうな答弁だと感じます。



大切なのはこうした議論が昨年あったにもかかわらず、今年も全く同じマイナス改定を提案してきたことです。

提案をしてきたならば、昨年出された3つの論点についても、推測や検証がなされた上でクリアできているはずです。

今回、本市はどのような検討や議論を行ない、具体的にどのような対応を行なったのかを伺います。



【質問4】
(1)これまで本市が進めてきた人事制度改革の方向性とは正反対に、一人一人の職員の努力や成果とは全く無関係な形で毎年こうして給与改定がなされることが、職員のモチベーションに与える影響について、どのような検討がなされたのでしょうか。

また、負の影響が起こりうると判断したのであれば、どのような対策を講じたのでしょうか。

【質問5】
(2)度重なる職員給与のマイナス改定は、本市の経済にどのような影響を与えているのか、その経済効果について調査を行なったのでしょうか。

もしもマイナスの影響、つまり消費活動が抑制されることによる景気へのインパクトなどが推論されるのならば、本市が進めてきた緊急経済対策の効果も減殺されうるのではないでしょうか。

【質問6】
(3)本市職員も市民税を納めている市民であり、その給与がマイナス改定されれば、当然ながら本市の市民税の税収にも影響が出ることが推測されます。

昨年はこの影響額の調査がなされていませんでしたが、今回の給与改定にあたってはあらかじめ影響を精査したのでしょうか。

そして、その影響は具体的にいくらになるのでしょうか。

以上3点について、お答えください。

これで僕の1問目を終わります。

(画像:市長からの答弁を質問者席で聴くフジノ)

市長の答弁

御質問ありがとうございました。

まず、本市の給与政策のあり方について、3点御質問をいただきました。

【答弁1】
まず、「そもそも職員の給与のあり方についてどのように考えるのか」という御質問をいただきました。
 
本市の職員の給与を含めた、本市の人事行政の運営については、地方公共団体の人事行政に関する根本基準を定めた地方公務員法にのっとり行なっていくのが第一義だと考えています。

御承知のように、地方公務員法第24条において、一般職の職員の給与は、『職務給の原則』『均衡の原則』『条例主義の原則』、これら3つの原則に従って決定するよう定められています。

*地方公務員法第24条
(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)
第24条 職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。
2 前項の規定の趣旨は、できるだけすみやかに達成されなければならない。
3 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
4 職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、これに対して給与を受けてはならない。
5 職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
6 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

また、同じく地方公務員法第14条においては、職員の給与、勤務時間、その他の勤務条件は社会一般の情勢に適応するように、随時適当な措置を講じなければならないとされていまして、いわゆる『情勢適応の原則』と言われています。

本市の職員の給与も、この地方公務員法に定める『給与決定の原則』及び『情勢適応の原則』が前提になると考えています。
 
一方で、給与は職員にとって関心が高いものであって、人事行政の運営上、重要なものであることも承知しています。

地方公務員制度の枠組み、法律上の原則、人事行政の運営上の位置づけ、そして財政状況など、これらの要素、条件を考慮し、また、市民の方々への説明できる給与となるよう、適時、制度や水準を見直し、めり張りのある給与にしていくよう努めていきます。

【答弁2】
次に、人事院勧告に基づく給与改定の根拠などについて、まとめて御質問をいただきました。
 
前の答弁の繰り返しになりますが、職員の給与を含めた本市の人事行政の運営については、地方公共団体の人事行政に関する根本基準を定めた、地方公務員法の原則にのっとり行なっていくのが適当だと、第一義的に考えています。

また、職員の給与決定はその職員が属する自治体が独自の判断で行なうことが、地方自治の本旨にのっとったものだと考えています。
 
今回御提案している議案は、職員の給与改定に関するものですが、これは本年の国家公務員と民間企業の給与実態調査に基づく人事院勧告を受けた国家公務員の給与改定や、県の人事委員会の勧告等を踏まえ、これらの情勢に適応するべく改定をするものです。

この改定に当たっては、地方公務員法に定める『均衡の原則』を踏まえ、国家公務員の給与改定措置に準じて改定すると本市で判断をしたものです。

【答弁3】 
次に、横並びの均衡を重視した人事院勧告に基づく給与改定と、職務給の原則を重視した給与制度の構築とは対極的な政策と言えるが、どのように考えるかという御質問をいただきました。
 
職員の給与決定に当たって、給与決定の3原則はそれぞれどれを優先することなく、全て考慮すべきものであると考えています。

御質問にありました『職務給の原則』にのっとり、職務と責任に応じて職員の努力や成果に連動した給与制度としていくことは、私としてもそのようにあるべきだと認識しています。

また、職員の給与水準については、社会一般の情勢に適応するよう随時適切に対応し、その場合には、生計費、並びに国及び他の地方公共団体の職員、並びに民間事業の従事者の給与、その他の事情を考慮して定めなければならないとする、均衡の原則にのっとり定めることも必要になってくると考えています。

今回御提案している職員の給与改定についても、このような原則にのっとり、本市が判断をして行おうとするものです。
 
次に、昨年度臨時議会での議論を受けた本市給与マイナス改定への対応について、3点御質問を頂きました。

【答弁4】
まず、職員のモチベーション、勤労意欲に与える影響について御質問をいただきました。
 
職員の給与を減額することは、人によっては勤労意欲に影響を与えることもあると考えています。

しかしながら、仕事をやり遂げた充足感、市民の役に立った満足感など、働きがいの実感を得ることで、仕事への意欲、組織全体の士気の向上につながるものと考えています。
 
人事行政を進めていく上で、職員の意欲の維持、向上は必要であると認識していまして、今後は管理職への指導や、研修制度の充実等に努めていきます。

【答弁5】
次に、「給与改定は本市の経済にどのような影響を与えているのか」との御質問をいただきました。
 
今回の給与改定における本市の経済への影響についてですが、収入減少による影響は、お小遣いや外食費などのいわゆる日常の消費支出や、高額商品の買い控えとしてあらわれるものと推察されて、こうした支出は主に商業、そしてサービス業に影響すると思われます。

給与改定による減額は1人当たり年平均9万5,000円でありますが、その全てが消費に支出されるのではなくて、個人の家計の状況によりその状況が異なるので、本市経済への直接の影響は不明です。

しかしながら、今回の給与改定につきましては、民間の賃金情勢に基づいた改定であり、本市のみが情勢に適応せず、見直しを行わないということは、市民には理解されないものと考えています。

【答弁6】
次に、「今回の給与改定に当たっては、あらかじめ市民税への影響を精査したのか、その影響額は具体的に幾らになるのか」という御質問をいただきました。

今回の給与改定に伴う本市の市民税の税収への影響については、事前に財政部と協議を行なっています。

今回の給与改定により、職員1人当たり年平均約9万5,000円の減となります。本年4月1日現在の職員数は3,286人であり、横須賀市内に在住する職員はそのうち約8割です。
 
この条件に基づき、財政部で個人市民税への影響額を試算したところ、約1,500万円の市民税の減少が見込まれます。

一方、今回の給与改定により、全会計で約3億5,700万円の給与費が減少することとなり、今後、平成23年度予算編成の過程において、この減少分を最適な住民サービスに向けることができるものと考えています。

以上です。

フジノの質問

それでは、こちらの席(自席)から2問目以降、一問一答形式で行ないます。

質問の順序は逆になりますが、大きな2番から確認していきたいと思います。
 
まず、昨年度のマイナス改定がなされる際に、3つの観点から議論があったということで指摘をさせて頂きました。

モチベーション、それから日常の消費活動への影響によって、本市経済に影響を与えるのではないか。そして、市職員も市民であるからということで、市民税収が減少するのではないかということについて、検証しているのかということを伺いました。

まず、市職員の働いていく上でのモチベーションについてのお話について確認をしたいのですが、市長御答弁の中では、人によってはモチベーションが下がる人もいるかもしれない。また、そうはいっても、公務員というのはそもそも市民の皆様のために働く、その充足感や働きがい、これが士気の向上にもつながっていくと、したがってマイナス改定で直接に大きな影響はないとお答えになったと受けとめました。

また、給与改定分は研修の充実等で対応していくと受けとめたのですが、先ほど質問の中で「実際に調査をなされたのか」ということも伺いました。何人かの方に伺うというようなレベルではなくて、この職員給与の改定がもたらす心理的な影響、特にモチベーションというのは非常に大事です。

そういったことを一般論として「市職員は全体の奉仕者であるから、金銭、金額によって左右されない」というようなことを言い切ってしまうのではなくて、市職員さんも人間ですから、介護で非常に苦労しておられる方もいらっしゃれば、お子さんが双子であったり、非常に毎日の生活費で御苦労されている方もいらっしゃると思うのです。

子ども手当が出るだけでも非常にうれしいという声が全国的にはありましたけれども、それと全く市職員さんというのは同じだと思うのです。
 
そんな中、もし明確な根拠が無いままに「モチベーションが下がる人も一部はいるかもしれない」というような御答弁であったとするならば、やはり昨年の議論は生かされていないのかなと受けとめざるを得ないのですが、何らかの調査というのはなされたのでしょうか。

市長の答弁

具体的な調査というのは、行なっていません。

フジノの質問

これは、やはり調査を求めたいと思います。

きっと、組合ではそういう声というのは承知していると思うのですが、昨年もこの議論がありました。今年も僕は今回の給与のマイナス改定が市職員の方々に与えるモチベーションの低下というのを非常に気にしております。

最も危惧していることは、市長が御答弁なさった「公務員というのはやりがいがある、生きがいがある、この仕事から得られる充実感で給与なんか関係なく頑張れる」、この答弁は一番危険です。

僕は福祉の世界をメインに政治家として働いていますが、福祉業界も全てこの論理なのです。

給与を下げていく論理というのは

「福祉職にはやりがいがある、生きがいがある。医療職も生きがいがある、やりがいがある、だから過剰労働になっても我慢しなさい、給料が安くても我慢しなさい」と。

それでは絶対にいけないわけです。
 
だから1度客観的に、本音ベースではどのように市職員の方々が感じておられるのかということを、一般論で片づけるのではなくて、きちんと調査をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

市長の答弁

私が市長になる前ですが、人事制度改革に当たって職員の意識調査というのは悉皆調査という形で行なっていますので、その状況等を見ながら、その意欲ということについては考えていきたいと思っています。

フジノの質問

市長がその過去の調査の結果をごらんになって、今手元にないかもしれないのですが、金銭的な対価について市職員さんはどんなふうにお感じになっているという結果が出ていましたか。

市長の答弁

今、手元にその当時のアンケート調査の資料はないので、具体的なことについて申し上げることはできないのですが、給与についてその職員の勤労意欲というものに影響があるということは、私も答弁の中で認めたところでございます。

フジノの質問

先ほど市長は、「一部の職員の中にはモチベーションが下がる人もいるかもしれない」という言い方をされました。

それに対して、今の御答弁は影響があることは認めているということでしたから、最初になされたのと大分違う答弁だと思うのですね。

一部の人が影響を受けるのか、全体の人々が影響を受けるのか。つまり、例えば給料が上がればうれしい、もっと頑張ろうと思えるのか、給与が下がれば正直きついなと、これだけ同じ仕事量を働いているのに、頑張って成果も出しているのに給与が下がることはきついなというのが一部かどうか、あるいは全体かというのは全く違います。

公務員だって人間ですし、同じこの市役所で働く仲間ですから、そこに簡単に「一部はこういうふうに思う」というような予断で政策を判断するというのは問題だと思います。

改めて、ここをきちんと説明してください。

市長の答弁

この職員給与が、勤労意欲に対してどれぐらい影響があるというのは、恐らく個人個人で占めるウェートというのは異なってくるだろうと思います。

人によっては、その給与が自分の勤労意欲の大きなウェートを占める方もいれば、厳しい経済状況の中で与えられた職務やその責任にやりがいを感じる人はいるかもしれません。

そういう意味で、一概に申し上げることはできないですけれども、職員の給与というものが勤労意欲に影響があることは私も認めたところです。

フジノの質問

ありがとうございます。

そうですね、個人個人でその度合いは違うと思います。

ただこれから、この後質問もしますが、国家公務員法の情勢適応の原則、それから地方公務員法の均衡の原則だけではない人事給与政策を進めるのであれば、例えばプラス改定というのも将来的には考えられるわけですから、『インセンティブとしての報酬』がどのような効果を与えるのかということは、やはり研究しておいたほうがよいのではないかと思います。

では続いて、給与のマイナス改定が日常の消費支出、ひいては本市の商業、サービス業に与える影響がどのようなものか、この点についても調査をして頂きたいと質問をさせていただきました。

数年前のことを思い出して頂きたいのですけれども、横須賀市役所が昼休みの休憩時間を短縮した。それだけで近隣の飲食店は物すごく大きなダメージを受けた。そして要望があって時間を変更したりしたということがあります。

市職員というのは、本当にこの横須賀にとっては大きな経済的インパクトを与える『消費者』であると言えると思います。
 
9万5,000円の年額のダウンということなのですけれども、9万5,000円は非常に大きな金額です。

しかも、人数が3,286人もいらっしゃる訳です。

市長は、市内は8割とおっしゃいましたが、実際には、日常的には10割の方がここに来て働いている訳です。

そんな訳で、3,286人が年額9万5,000円カットされるということは、やはり影響は大きくあると思うのです。

その調査の方法が、手段が見当たらないというのであれば、答弁としては理解できるのですが、調査をしたのかということに対して、先ほどと同じで、影響はあると思うがわからないというあいまいな答弁では、やはり昨年の議論が生かされていないと受けとめざるを得ませんが、この点についていかがでしょうか。

市長の答弁

直接の影響については明らかにならないだろうということを私は申し上げましたが、例えば『産業連関表』の中では、その経済効果を大体約1.5倍と見込むのが適当だろうという話があります。

そういう意味で、約9万5,000円のうち、商業やサービス業に振り分けられるのが、例えば半分の金額と仮定した場合、その3,286を掛けたとき、1.5をその上に乗じたときにあらわれてくる数字などが経済効果と言うことはできるかとは思います。

フジノの質問

『産業連関表』については、一度経済部長と議論したいなと思っているのですが、果たしてこれは『産業連関表』を扱うことが本当に適しているかどうかはわからないのですけれども、そこはぜひ一度精査したいなと思っているのですが、仮にこれを使うとしても1.5倍ですよね。

大きな効果ではないのですか。

大きな効果があるということではないのですか。

市長の答弁

ざっと計算をすれば、約2億3,000万円ということに試算されますけれども、これを大きいと考えるかどうかというのは、また議論の分かれるところだと思います。

フジノの質問

僕はここもやはりきちんと精査していただいて、その数字をどう分析するかというのも、ぜひ市長にはお答え頂きたかったなと思います。

2億円が大きいかどうかというのは、例えば横須賀中央地区だけでもいいのですけれども、商業地区が大体1年間の商業を通じてどれくらいの利益を出しているかとか、そういうことと比べてみてもいいと思うのですね。

あるいは『産業連関表』を使わなくとも、市の職員の方々に昨年と今年どんな支出を行ったか、サンプリングをして抽出してもらうだけでも購買行動というのはつかめるわけです。

その中で、果たして本当に『人事院勧告』に準じて給与改定することが、本市経済にとってプラスなのかどうか。そこを改めて見ていただきたいと思うのです。

人件費という意味で見れば、財務諸表上は圧縮されています。

ただやはり商業を通じての経済活動、サービス業を通じての経済活動など、総体的に見れば、もしかしたら下げないほうが効果が高く出ている可能性もあり得ると思うのです。

これは調査の方法も含めてぜひ検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

市長の答弁

給与改定の効果についての御質問ではあるわけですが、ただ一方で給与改定の根拠ではないと、そのように考えています。

経済政策であれば、やはり例えば職員のみに給与をプラスしてその波及効果をねらうというよりも、また一方でおしなべて等しく市民の方々の消費活動に回るような政策というのを考えるべきではないかと、そのように感じています。

また、この給与の削減分について『産業連関表』を出して1.5倍という数字は、半分ぐらいが商業やサービスに回るだろうという想定は申し上げましたが、一方で、市が公共事業としてそれをどの分野であれ発注した場合の経済的な波及効果というのも存在しています。

ですから、経済波及効果でなかなか職員給与への改定の根拠とすることは難しいのではないかと、そのように考えています。

フジノの質問

今、まさに市長がお答え頂いた「給与改定は経済政策として行なっている訳ではない」というところが、今回最も僕が市長にただしたかったところです。

今までのこの国全体を取り巻いている人事院勧告に準じた地方政府の給与改定というのは、まさに単なる給与政策、しかも何の効果もゴールも認められない。

あえて効果があると言えば1点だけ、公務員バッシングを避けられる。これだけしか効果がないようなあり方だったわけです。

職員の方々のモチベーションも下がりかねない、しかも地元にも経済効果がマイナスで出てしまう。
 
市長が、今あくまで給与政策として給与改定のために行なったということだったのですけれども、経済政策としての、つまり経営の観点という意味での、マネジメントという観点の取り組みも必要ですし、街に与える効果とか、あらゆる観点から複合的に対応するのが新しい地方政府のリーダーとしての経営の観点からの給与政策だと思うのです。
 
この2年間は市長になりたてですから、@国が人事院勧告出してきた、それに従うしかない、前例踏襲しかない」とお考えなのかもしれませんが、それでは不十分ではないでしょうか。

これはまた来年も出てきたら、そのまま国に真似をして、市長は「あくまで市の判断でやった」と言いますが、どこの町もこうやって同じように出しているわけです。現実的には市の判断というよりは、横並びでやったと言わざるを得ない訳です。

ですから、市長にはもっと広い観点から効果を考えて判断していただきたいと思うのですが、これはもう経済政策として、あるいはほかの観点からとして、やることはできないということですか。

市長の答弁

当然、給与改定の効果あるいは影響ということについての議論を排除する訳ではないのですが、ただ私が申し上げたのは、給与改定の根拠にはこの経済政策という側面はしづらいだろうという考え方を述べたところでございます。

そういう意味では、この給与改定の影響というものの効果についての議論というのは、当然積極的にするべきことだろうと思っています。
 
また、今議員がおっしゃった画一的にどの自治体も下げているというようなお話がありましたが、各都道府県の人事委員会あるいは政令市の人事委員会では、国と全くイコールの足並みをそろえるというような形ではないと、当然、削減傾向というのはほとんどの自治体が持ってはいますが、その率であるとか割合であるとか手法であるとか、そういったものは各自治体それぞれの独自の判断でやっていると認識をしています。

フジノの質問

ありがとうございます。

では、1問目の方に戻りたいと思うのですが、市長は『情勢適応の原則』を優先した、そもそも地方公務員法の原則に基づいて、特に第24条について、こちらを遵守するのが第一義的に大切だということでした。

ただ、今の質問とも繰り返しになるのですが、今の時代は非常に本市の税収も厳しいですから、支出できる人件費というのも限られてきている訳です。

その人件費の総枠についてを議論の対象にしていけばいいだけのもので、つまり『俸給表』という考え方かと思うのですけれども、一律の基準でそういう対応をしていくことが本当に正しいのかというような、根本的な疑問に立ち返ることも必要かと思うのです。

なぜならば、例えば別の件で例を挙げてみたいと思います。

『子ども手当』。

国、民主党政権がマニフェストで訴えてきて、昨年度本当に本市はたくさんの財政負担をしなければいけなかった。

そのことに対して、今神奈川県知事に足並みをそろえている吉田市長は「地方の負担はしたくない、しない、これは国の政策なのだ」というふうに、市長は国が決めたことであっても、国が地方が負担せよと言ったことであっても反論をしている。この姿勢はすごく大事だと思うのです。

今回の職員給与、職員というと言葉が非常に味気ないのですが、この街のために一緒に働いてくれている財産としての人材。その人材の生活の糧である給与、それを国が動かすものにただ合わせていく、実際に合わせていっているようにしか見えないのですけれども、そこに根本的な疑問を呈する。
 
この3原則ありますけれども、そのうちの『均衡の原則』ではなくて、『職務給の原則』、これは僕が若干拡大解釈しますけれども、その職務に応じて、そしてその責任に応じて、つまりその努力や成果に応じて給与を指定することができる。

もう1つの原則というのは条例化のことですから大した意味はないのですけれども、どっちを重視するというのではなくて、『職務給の原則』も重視するという形でいけば、こんなふうに全員が一律、まるで予算策定のときにシーリングをかけられるみたいに、マイナス改定されるということは必要ないのではないかと思うのです。

とにかく一律のマイナス改定というのは、個々人の努力というものを完全に無視しているものだと僕は考える訳です。
 
今回の議案の賛否については、この議案についてだけで判断するものですが、これからも市長がその前例踏襲を続けるのであれば、それはいかがなものかと思うのです。

ぜひ、市長その点について、お考えいただいて御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

市長の答弁

職員の給与決定に当たっては、議員御指摘の『職務給の原則』というのは大事な観点であると私も考えています。

それについては、人事評価制度でしっかりとその観点を盛り込んで、職員の意欲であるとか成果であるとか、そういったことを評価できるような制度づくりを今後も進めていかなければいけない。

具体的にはやはりその評価をする管理職が、どのような観点で評価をすればいいのか、そしてさらに職員の意欲も含めて、能力の開発や向上という観点から、研修制度を充実させていくということも、最終的には職務給、自分自身の果たしている職務や責任に反映されてくるものではないかなとそのように考えています。

フジノの質問

ありがとうございます。
 
最後の質問にしたいと思うのですが、今の市長の答弁を伺っている限りでは、認識は共通だと思うのですよね。

職務給、その中でどういうふうに人事制度改革と連動させていくか、これはもうこの方針というのは絶対にあるべきものだと思うのです。
 
それをお考えであるならばなおさらのこと、前回、昨年度、それから今年度、そういった人事制度改革と連動するような形での職務給のあり方などを検討した姿というのが見えてこない。

議会でも、昨年度全く同じことを議論したわけですが、そこの疑問というのはもっともだと思うのですね。そして、今年もまた同じ疑問が出てしまったというのも、そういうところに僕はあるのではないかと思うのです。

人件費の総枠は削減せざるを得ない方向にあるとしても、あるいは総枠を人数で割り算をしたならば、均衡の原則で大体これぐらいとなるとしても、個々人の努力や、成果を上げたという活動は、むしろ『職務給の原則』でインセンティブとして評価をするような形を、今後構築していくべきだと、必ずやらねばならないのではないかと僕は考えております。

この点についてもう1度だけ伺って、そして来年度以降も人勧の給与改定というのは出てくるわけですが、それに対して市長がどのように判断していくかというのは、これからずっと見ていきたいと思います。
 
そもそも『均衡の原則』と『職務給の原則』というのは相反するものではありませんし、こちらも重視していくというような姿勢があるのかどうか、改めて伺って、質問を終わりたいと思います。

市長の答弁

現在の人事制度の評価制度の中で、行動評価そして目標評価というような考え方に基づいて、職員の評価というのを行なっています。

基本的には職務あるいは責任というところは、そこにおいて明示されるべきものであると、そのように考えていますが、一方でこの評価制度が、実際自分自身の評価ということになると、正当に評価されていないと感じる職員がいたり、あるいは人から見てあの職員は過分に評価されていると思われたりするような背景というのがあるのは事実です。

実際、どの人事制度についても正解という答えはない中で、その評価のスキルというのを上げていくことというのはやはり大事だという観点から、管理職の指導というのを私申し上げたところでございます。
 
『職務給の原則』というのは、『均衡の原則』そして『条例主義の原則』という、給与決定の3原則の中でどれを優先すべきということは私申し上げませんでしたけれども、やはりどれも大事なものの一つと考えていますから、その中で、職員全員で一丸となって、いい住民サービスを果たしていこう、そういうパフォーマンスを上げていこうという考え方になれるような人事制度というのは追求をしていきたいと、そのように考えています。