横須賀市内で自殺未遂をした方を「市外へ救急搬送した件数」がゼロになりました/自殺未遂者支援

治療後のケアの必要性を考えれば、自殺未遂をした方々は市内で医療を受けられるようにしたい

自殺未遂をした方々が運良く発見・救急搬送されて、体そのものは治療によって回復しても、再び自殺をする確率は極めて高いことが知られています。

およそ10〜30人に1人は再び自殺をする、という調査結果も報告されています。

自殺へと追い込まれた背景には複数の要因があるのですが、それらの要因の解決に向けた支援が必要です。

そこで、横須賀市では救急救命センターと協力して、自殺未遂者支援を実施してきました。

救急救命センターに搬送された方々に、入院中からアプローチし、退院後の『生きる支援』を行なっていくのです。

しかしこの方法には、1つ大きな欠点があります。

横須賀市は『市内』の救急救命センターとの提携によって支援を実施しているので、もしも『市外』へと搬送されてしまうと、この支援の枠からこぼれ落ちてしまうのです。

『市外』へ搬送されることは、自殺未遂をした方々に限らず、どんな病気でも起こる一般的なことです。

そもそも救急救命センターに空きベットが無いケース(フジノ作成)

そもそも救急救命センターに空きベットが無いケース(フジノ作成)


119番通報によって救急車に来てもらえても、市内の救急救命センターのベットに空きが無い場合には、空きベットがある市外の病院へ搬送されることがあります。

治療後も入院が必要だが空きベットがなく市外に転院せざるを得ないケース(フジノ作成)

治療後も入院が必要だが空きベットがなく市外に転院せざるを得ないケース(フジノ作成)


また、治療を行なって入院できても、もっと症状の重い患者さんが搬送されてくればセンターにはベットが必要になります。

そこでひととおりの治療が終わっていれば、未遂をした方であっても、他の病院に転院していただくしかありません。この時、市内に空きベットが無ければ、市外の病院に転院せざるをえません。

こうして、横須賀市の自殺未遂者支援の仕組みからこぼれ落ちてしまうのです。



支援の枠組みから外れてしまうケースを出さない為のフジノの提案

フジノは、何とかして『市外への搬送によって未遂者支援の枠組みから外れてしまうケース』を無くせないか、と考えてきました。

そこで、こんな提案も市議会で行なってきました。

2013年6月10日・教育福祉常任委員会
question(フジノ)
自殺未遂者支援について、健康づくり課と地域医療推進課にあわせて質問します。

横須賀市では、自殺未遂者支援に非常によく取り組んでいただいています。

先日、関係病院、つまり自殺未遂をした方々が搬送される病院のメディカルソーシャルワーカーの方々と意見交換をする機会がありました。

救急車で搬送されて救急救命センターに来ても、残念ながら大半がセンターで受けられなかったり、あるいはセンターで受けても、すぐに横浜市等の市外の病院に転院せざるを得ないような状況がある。

その為、せっかく自殺未遂者支援の仕組みがあっても、関われない方も複数おられる、とのことでした。

そんな中、「どうか市立病院で1ベッドでいいから、自殺未遂者の方を受けられるようなベッドを確保できないだろうか」というお話をいただきました。

僕は「まさにそれはそのとおりだな」と思って、御提案をお聞きしました。

本市では、そういった実態を把握しておられるかということと、ベッドを確保することが可能なのか、健康づくり課長と地域医療推進課長に伺いたいと思います。

answer(保健所健康づくり課長)
今現在、横須賀共済病院と連携して『自殺未遂者対策』をやっておりますけれども、その辺のベッドの有る無しについては、健康づくり課としては情報として今まで頂いておりません。
answer(地域医療推進課長)
市立病院でそういった自殺未遂者用の為のベッドを確保できないか、という御質問だったと思います。

4月からうわまち病院では救急救命センターを開設しましたけれども、現在は20ベッドです。

その中で特定の為に1つ空けておくということは難しいかなと思います。

1ベッドがあったことで救える命というのもありますので、状況の中で、空きがあれば、受け入れることはあるかと思います。

けれども、自殺未遂者支援用に必ず1ベッドをあけておくということは、運用上難しいかなと思います。

question(フジノ)
僕の質問から地域医療推進課長はイメージを共有して下さり、ありがとうございます。

僕は、精神科のドクターも常駐しておられるようになったこともあってうわまち病院をイメージしていたのですが、現状の救急救命センターは20床しか無い厳しさというのも承知しております。

今後の検討課題として、ぜひ研究していただけないかと思っております。

ぜひ御検討をお願いいたします。

自殺未遂だけでなく全ての怪我や疾患の重症度の高い方の為にベットは使うべきものであり、自殺未遂に限定した目的ではベットをキープすることはできない、という答弁でした。



2013年の市外への搬送がゼロ件になりました

それから半年が経った先日、最新の統計データが発表されました。

この問題について良い変化がありましたので、報告いたします。

下の横須賀市消防局が公表した最新のデータ(2013年・医療機関別搬送人員)をご覧下さい。

『自殺未遂』で救急搬送された132名がどこの病院へ搬送されたかを示したデータです。

横須賀市消防局消防・救急課「医療機関別搬送人員」より

横須賀市消防局消防・救急課「医療機関別搬送人員」より


『市外』へ搬送された方々はゼロになりました!

これは、

  1. 2013年は、自殺未遂をした方々が前年より21%減少したこと
  2. 2013年4月から、うわまち病院の救急救命センターがスタートしたこと

による成果だとフジノは分析しています。

特に、この4年間、自殺未遂によって救急搬送された方々の数は減少し続けているのですが、これは横須賀市による支援の効果が現れてきたのだと思います。

そもそも救急救命センターに空きベットが無いケース(フジノ作成)

そもそも救急救命センターに空きベットが無いケース(フジノ作成)


こうして『市外』に搬送される方がゼロになったということは、未遂者支援を進めていく上で『こぼれ落ちてしまうケース』を無くしていくことにつながります。

とても良い結果につながることだとフジノは嬉しく感じます。



次は「市外への転院」を把握する必要がある

その一方で、こちらの②のケースについては統計データそのものがありません。

治療後も入院が必要だが空きベットがなく市外に転院せざるを得ないケース(フジノ作成)

治療後も入院が必要だが空きベットがなく市外に転院せざるを得ないケース(フジノ作成)


今後の対策として、フジノは『市外への転院を把握する方法』や『市外へ転院した未遂者の方々への支援策』などを考えていきます。

全国の自殺対策関係者のみなさまへ

ここで報告したデータですが、今まではこのデータに関心を持つ人は、たぶん市内では数名(フジノと消防局と救急救命センターの方々くらい)しか存在しませんでした。

でも、ものすごく大切なデータです。

自殺対策には、いくつものいくつもの細かな取り組みが必要です。

今回報告したような取り組みも、自殺対策の重要な対応の1つです。

全国の自殺対策にかかわる有志のみなさま。どうか、あなたのまちの救急搬送のデータをぜひ調べて下さい。

国もようやく未遂者支援の取り組みをスタートさせていますが、細やかな調査や対策を実施できるのは現場に最も近いみなさまです。

ぜひあなたのまちのデータを把握して、あなたのまちの対策に活用して下さい。

どうかよろしくお願いします!



弁護士・司法書士・薬剤師が「自殺対策連絡会」の新メンバーに加わりました/フジノの提案、実現しました

自殺対策を推進するネットワーク会議が開催されました

今日は、市役所で『平成25年度第1回自殺対策連絡会』が開かれました。

市役所正庁で連絡会は開かれました

市役所正庁で連絡会は開かれました


これは年2回、定期的に開催されている自殺対策のネットワーク会議です。



組織の名称は変更されましたが、目的は変わりません!

実は、このネットワーク組織の『名前』が今回から変更されてしまいました。『自殺対策連絡協議会』から『自殺対策連絡会』に変更です。

(旧)『連絡協議会』
  ↓
(新)『連絡会』

名称が変更されました

名称が変更されました


名前が変わっただけで、目的も取り組みも一切変わりません。

この点は、健康部長・保健所長・健康づくり課長の3人とも、断言しています。

自殺対策を推進していく為に、このネットワーク会議の役割が重要であることに変わりはありません。



変更の理由と、フジノが感じた違和感

名称変更の理由は、自殺対策とは全く関係ありません。

市の審議会などを『附属機関』と呼びます。

この『附属機関』を設置するには『条例』が必要だ、という判例にもとづいて、この1〜2年、全国の市町村でその名前や性質によって新たに条例を定め直しています。

その流れで、横須賀市も全ての審議会などの見直しを一斉に行ないました。

横須賀市は、このネットワーク会議については条例で設置された附属機関では無いので、『連絡協議会』という名称を使うべきではないと判断したのです。

本来ならば、正すのは名前では無いはずです。

自殺対策の条例を新たに策定して、自殺対策のネットワーク会議を条例で設置すれば良いのです。

けれども、フジノはものすごく強い違和感を覚えています。

名前だけを読めば

「連絡をとりあうだけの場なのか?」

と、横須賀市の政策の中で自殺対策が格下げされてしまった気持ちがします。

そして「名は体を表す」とも言います。

「変えるにしても、もう少し違う名前にできなかったのか」

と、フジノはガックリきてしまいました。

例えば、全国的に見渡すと、こんなふうに気合いの入った名前もあります。京都府の京丹後市による自殺対策のネットワーク組織です。

2013年2月「地域におけるこころの健康づくり~市町村の自殺対策」資料より

2013年2月「地域におけるこころの健康づくり~市町村の自殺対策」資料より


『自殺ゼロ実現連絡会議』というネーミングは、目指すゴールへの意気込みが伝わってきます。

その意味で『名称』としては優れている、と思います。

そしてもう1つ。すごくショックでした。

フジノは横須賀市の『自殺対策連絡協議会』の生みの親のひとりだという自負心がありました。

でも、名称変更について事前の相談や報告は一切ありませんでした。それでなんだかフジノは自分が軽んじられた気持ちになってしまいました。

そもそも大切なのは『名前』なんかよりもその『成果』ですから、こんな感情をフジノが抱くのは間違っています。

ただ、そんな自分への戒めも含めて、感じた率直な気持ちを記しておきたいと思います。

2006年3月、国は、都道府県・政令指定都市に対して『自殺対策連絡協議会』を設置せよと通知を出しました。

にも関わらず、全国的には全く設置が進んでいませんでした。

そんな状況の中、当時の蒲谷市長の英断で、横須賀市は立ちあげを決定したのです。

2006年6月21日・神奈川新聞・1面トップより

2006年6月21日・神奈川新聞・1面トップより


フジノはこのネットワーク会議の設立を、初当選した2003年から提案し続けてきました。3年ごしで実現が決まったのです。

ですから、初回がスタートしてから今日に至るまで、誰よりもこのネットワーク会議を大切にしてきました。

それなのに何の報告もしてもらえず、こんなにもあっけなく名前が変えられてしまったことは、フジノには大きなショックだったです。

名称の変更を知ったのは、一般の傍聴者のみなさまと同じで、資料を目にしたついさっきでした。

しかし、繰り返しますが、本来は『名前』なんてどうでもよくて、大切なのはその『活動』と『成果』です。

自殺を可能な限りゼロに近づけることこそ本当の目的なのですから、こんなふうに感じるフジノはまだまだ未熟だなと我ながら情けなく感じました。



新たなメンバーが3名、加わりました!

長くなりましたが、実はここからが今日の本題です。

大切なことは『名前』よりも『活動』と『成果』だと繰り返し書いてきました。

その『成果』を上げる為に必要な組織の改革が、ひとつ前に進みました。

第1回横須賀市自殺対策連絡会のプログラム

第1回横須賀市自殺対策連絡会のプログラム


このネットワーク会議の構成員として、新たなメンバーが3名加わったのです。

下の構成員メンバーのリストをご覧下さい。

  1. 社団法人横須賀市医師会(汐入メンタルクリニック院長:精神科医)
  2. 社団法人横須賀市医師会(湘南病院副院長:精神科医)
  3. 横須賀労働基準監督署安全衛生課長
  4. 横須賀市薬剤師会・理事
  5. 横須賀市民生委員児童委員協議会・副会長
  6. 横須賀公共職業安定所・次長
  7. 横須賀商工会議所・まちづくり支援課長
  8. 神奈川県立保健福祉大学
  9. 特定非営利活動法人三浦半島地域精神障害者の生活を支える会・理事
  10. 神奈川県司法書士会・横須賀支部
  11. 財団法人横須賀市産業振興財団・事務局長
  12. 横浜弁護士会
  13. 田浦警察署生活安全課長
  14. 横須賀警察署生活安全課長
  15. 浦賀警察署生活安全課長
  16. 市民部市民生活課長
  17. 市民部人権・男女共同参画課長
  18. 市民部消費生活センタ一所長
  19. 福祉部高齢福祉課長
  20. こども育成部こども青少年支援課長
  21. こども育成部こども健康課長
  22. 消防局消防・救急課長
  23. 教育委員会事務局学校教育部支援教育課長
  24. 教育委員会事務局教育研究所長

上の赤文字で記した『横須賀市薬剤師会』『横浜弁護士会』『神奈川県司法書士会横須賀支部』の3名が新たに構成員メンバーとなりました!

実効性のある自殺対策を進めていく上で、この3つの職種の団体からメンバーが加わったことは大きな意味があります。

薬剤師のみなさまの存在は、地域包括ケアの実現にとっても大切です。

弁護士と司法書士の重要性については、あえて述べるまでも無いと思います。

前節の情けない自負心を記した後でこれを書くのは恥ずかしいのですが…実は、こうしたメンバーを新たに加えることは、フジノが提案したものです。

2012年3月議会での市長へのフジノの一般質問をご覧下さい。

2012年予算議会(3月1日)での市長への一般質問より

フジノの質問

自殺対策連絡協議会に以下の新たなメンバーを加えるべきではないか。

①自死遺族。

「GKB47宣言」というキャッチコピー問題などは自死遺族の声を聴こうとしない為に起こったものです。

善意であるはずの自殺対策が持つ副作用について自死遺族の声に耳を傾けるべきです。

②マスメディアなど報道関係者。

県の『かながわ自殺対策会議』には報道関係者がメンバーに入っています。

報道の仕方しだいで自殺が増えてしまうこともある中、実態を知ってもらうべきです。

③現場の教職員・養護教諭。

日常的に思春期のこどもたちの自傷行為に直面している教職員・養護教諭の方々の存在は、新たな指標として自殺未遂を設定する上で不可欠です。

④地域包括支援センターなど地域の高齢福祉関係者。

本市の自殺に占める高齢者の割合が増えている中で、地域で活動する高齢福祉関係者の協力が不可欠です。

⑤僧侶など宗教関係者。

宗派を超えた『自殺対策に取り組む僧侶の会』の活動が知られていますが、本市の僧侶の方もこの会で活動しておられます。

日常的に生死と向き合っておられる僧侶など宗教関係者は対策に貢献していただける存在です。

⑥司法書士会・弁護士会。

どちらの組織も全国的に自殺対策に熱心に取り組んでおり、身近な事例にもたくさん出会っている為、不可欠です。

他にも自殺未遂から立ち直ったサバイバーの方など現場の方々の存在が新しい協議会には必要です。

そこで市長にうかがいます。

【質問】
『自殺対策連絡協議会』に新たなメンバーを加えるべきではないでしょうか。

お答え下さい。

市長の答弁

『自殺対策連絡協議会』に新たなメンバーを加えるべきではないか、という御提案をいただきました。

現在の『自殺対策連絡協議会』は、相談機関等を中心としたメンバーで構成しています。

御提案いただきました方々をメンバーに加えることについては、どのような方々に関わっていただくことが効果的な自殺対策につながるか検討していきたいと考えています。

フジノの再質問

5年くらい前でしょうか、自殺対策連絡協議会を設立する時に当時の蒲谷市長にも「御遺族を入れていただきたい」とかいろいろ提案したのですけれども、当時は提案したものの、具体的に浮かぶ最適な方というのが浮かびませんでした。

自死遺族の社会的立場が非常に厳しかったこともあり、とても顔を出して委員として出席するなど誰もできない、という状況でした。

ただ、それからかなり大きく社会状況が変わりまして、「新たな段階に自殺対策は来た」と申し上げたとおりで、横須賀の御遺族の方が全国の団体でファシリテーターをやるまでに回復されたり、また報道関係でも、例えば地元紙である神奈川新聞は常に自殺対策について追い続けてくれる。

自殺対策元年と呼ばれた2006年には全紙が報道するような中で、どんどんブームとともに消え去っていた中でも、一生懸命報道してくれている方がいる。

また、教員の方々というのは、日常的に自傷行為と接していてすごく問題意識を持ってくれている。

それぞれについて「この人は適任だな」というのが、自殺対策あるいは精神保健福祉にかかわっている人であったら、きっと浮かんでくるものだと思うのです。

ですから、ぜひそういった方々を保健所や『自殺対策連絡協議会』のメンバーにヒアリングなどをして、対象になれるような方がいるのかどうかも研究の過程で一度ぜひ御検討いただきたいと思うのです。その点についてはいかがでしょうか。

市長の再答弁

今回御提案いただきました新たなメンバーについては、今までの『自殺対策連絡協議会』は、基本は相談を受ける機関の方々という形で、市の職員も含めて入っているわけですが、どういった方に入っていただくのが一番いいのか。

特に内容についても御提案いただきました。

ケースの内容によっては、こういう方に来ていただくとか、そういった考え方もあるかもしれませんので、ぜひいろいろな方に御意見を聞いて、新たなメンバーを加えた実りある『自殺対策連絡協議会』にしていきたいと思っています。

しかし、これでフジノの提案が全て実現した訳ではありません。

さらに「絶対に加えるべきだ」とフジノが提案している立場の方々がいます。

  • 自死遺族の方々
  • マスメディア関係者
  • 教職員・養護教諭
  • 僧侶など宗教関係者

『自殺対策連絡会』は必要に応じて、『参考人』という形でメンバー以外に出席してもらい意見も聴くことができます(自殺対策連絡会設置要綱第5条2)。

しかし、この仕組みは今まで使われたことはありません。今後も使われる可能性はあまり考えられません。

フジノが提案しているこれらのメンバーは、正式な構成員として参加すべきです。

より実効性の高いネットワーク会議とする為にも、これからもフジノは引き続き提案を続けていきます。

そして同時に、現在のメンバーでの『自殺対策連絡会』がもっと活性化していくように働きかけていきます。

何よりも大切なのは『活動』と『成果』です。

年2回、ただ開催することだけでは意味がありません。

このまちで、自殺へと追い込まれる犠牲者がゼロに近づく為に、もっともっと成すべきことをしっかりと取り組んでいきたいです。



ゲイの当事者である高校生が横須賀で講演をしてくれました(その1)/横須賀市エイズ予防・普及事業の講演会

性的マイノリティへの理解を求める講習会が開かれました

いわゆる『性的マイノリティ』とされる方々に対する正しい知識と理解が広まることと必要なサポートが行なわれることを求めて、これまで数年間にわたって、フジノは活動してきました。

その数年間の中でも、今日は『特別な1日』となりました。

「2010年度横須賀市エイズ予防・普及事業」チラシより

「2010年度横須賀市エイズ予防・普及事業」チラシより


横須賀市の『2010年度エイズ予防・普及事業』として講演会が開かれたのです。



ゲイの当事者である高校生が横須賀で講演をしてくれました

2つの意味で素晴らしかったとフジノは感じています。

まず第1に、横須賀市が主催する講演会の場で、ゲイの当事者である『高校生』が講師として発表をしてくれたことです。

いわゆる性的マイノリティとされる方々のうち、すでに『大学生』たちについては、数年前に教育長をはじめ、教育委員会の部課長に会ってもらっています。

今回の講演ではさらに年代が下がって高校生でした。

フジノはそれが本当にうれしかったです。

もちろん全ての年代に、いわゆる性的マイノリティとされる方々はいらっしゃいますが

全ての年代の中で、まだ世間と自分との距離感もうまく取れずに最も悩み苦しんでいる世代が十代だ、とフジノは考えています。

小学校高学年くらいから『性的志向』がはっきりしてくる中で、リストカットやオーバードーズなどの自傷行為に追い込まれて、自殺未遂を経験しているこどもたちがとても多いです。

そんなハイリスクな状況に置かれている小・中・高校生たちの生の声を行政・教育カンケーの人々にもっと知ってもらいたいのです。

会場にはたくさんの方々がいらして下さいました

会場にはたくさんの方々がいらして下さいました





「フジノの外圧」ではなく、「市職員の力で実現した講演会」です

第2に素晴らしかったことは、「今日の講演会は市職員が企画・実現させたものだ」ということです。

『大学生たちと教育長らとの懇談』はフジノが企画・実現したものでしたから、

横須賀市にとっては、あくまでもフジノという『外部』からの働きかけで初めて実現したものでした。

けれども『今回は全てが市職員の方々の想いによるもの』でした。

さらに、「すごいなあ」と感じたのは講師として来てくれたあと2人です。

『かながわレインボーセンターSHIP』代表の星野慎二さんと、日高庸晴さんです。

『対世間』で正しい知識を広めて理解を深めてもらうという視点で考えた時に、この人選は本当にフルキャストといえると思います。

それにしても、われらが日高庸晴先生まで横須賀にお招きできるとは...。

「時代は変わったなあ!横須賀市も変わりつつあるなあ」

と、うれしく感じると共にすごくホッとしたのでした。

この数年間の活動が報われた気持ちになりました。

さて、今日の講演会のプログラムは、次のとおりです。

2010年度横須賀市HIV/AIDS講演会

  • 日時:2010年12月22日(水)15:30~17:00
  • 会場:ヴエルクよこすか6階ホール
  • 演題と講師:

    1. 幼少期から高校までの様々な思い
       ソウイチくん(ゲイの当事者である高校生)
    2. 若者になぜHIV感染が拡がっているのか?~性的指向と健康問題~
       日高 庸晴さん
       (宝塚大学看護学部准教授/厚生労働省エイズ動向委員会委員)
    3. 『SHIP』の紹介
      星野 慎二さん(かながわレインボーセンターSHIP代表)

次回に続きます)



渋井哲也さん著「自殺を防ぐためのいくつかの手がかり」出版!/フジノの活動も紹介されています

渋井哲也さん『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』が出版されます

現代の自傷・自殺について1980年代後半から報道しつづけてきた渋井哲也さん(ジャーナリスト)。

その渋井さんの最新作が、ついに来週、出版されます。

『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり~未遂者の声と、対策の現場から~』
(河出書房出版社、11月9日発売)

こちらです。

20101103cover

実は、この本の『第6章・地域で取り組む自殺対策』にフジノの活動がとりあげられています。

今年、渋井さんに取材をしていただいていました。
 
それがついに出版されたのですね。

目次より

目次より


今年3月15日に汐入駅前でおこなった『自殺対策強化月間』の街頭キャンペーンの様子から始まって

フジノのこれまでの取り組みや様々な想い、横須賀市の様々な対策や政府の施策に対する意見など、7ページにわたって報じてくれました。

「神奈川県横須賀市・藤野議員の活動」という記事

「神奈川県横須賀市・藤野議員の活動」という記事


こうした単行本でフジノの活動がとりあげられたのは2回目です。
 
新聞や雑誌では何度もとりあげてもらってきましたが、今回は、特別でした。

大きな感慨をもって、この本を読みました。

その理由は、著者である渋井哲也さんです。
 
フジノは、特別な思い入れがあります。

8年前、フジノが自殺対策に取り組み始めた本当に初期の頃には、自殺・自殺未遂・自傷について信頼できる内容の本がほとんどありませんでした。

(研究者による論文と翻訳書はのぞきます)

フジノが日本の自殺対策に関わる方の中で最も尊敬している高橋祥友先生(防衛医科大学教授)の著作をのぞけば

ほとんどの本が、科学的根拠にもとづかない昔ながらの偏見をひきづった内容ばかりでした。

倫理観や宗教観をふりかざすような、うんざりさせられるような本もたくさんありました。

そんな中、フジノが深く共感したのが2人のライター/ジャーナリストでした。

ロブ@大月さんと渋井哲也さんです。

きれいごとやオブラートにつづんだ遠回しの表現なんかではなく、お2人の文章ではリアルな現実が切り取られていました。

単にすさまじい数の方々に取材を重ねたからではなく、現実の中に身をうずめなければ決して描くことができないものだと感じました。

フジノは、何年ものあいだ、オーバードーズやリストカットの実際の姿を目の当たりにしてきました。

そして、自死によって大切な人を失ったばかりでした。

だから、本当に意味のある情報や知識が必要だった僕にとって、たくさん読みあさった本のほとんどがリアルでない唾棄すべきニセモノに感じられてうんざりでした。

そんな中、お2人の本を読み進めることは何度も僕にフラッシュバックを引き起こすことになりましたが(苦しかったです)

切実に求めていた本当に意味のある情報や知識が記されていました。

こうして、ロブさん&渋井さんの本は、何度も読み返してきたのです。

ロブ@大月さんとは、2005年2月に運良く直接お会いすることができました。

一方の渋井さんとは、お会いしたかったにも関わらず、昨年までずっと機会が無かったのですね。

2009年12月に自殺予防総合対策センターが開催した『困窮者問題への対応についての勉強会』に参加した時、

フジノが会場からツイッターでつぶやいたら、「同じ会場に居る」という方からリプライ(返事)をいただいたのですが、それがなんと渋井哲也さんだったのです。

(こんな出会いを与えてくれたツイッターには本当に感謝です)

それから、とんとん拍子に取材までしていただいて、こうして新しく出版された著作にまさか自分が載せていただけるなんて

人生というのは何が起こるかつくづく分からないものだと、痛感しました。

読み終えた感想は

「こんな風に書いてもらったのは、初めてだ」

というものです。

読んでもらった友達も同じ感想でした。

これまでいろいろなメディアでとりあげていただいて、その全てに深く感謝をしていますが

フジノは決して『悲劇のヒーロー』ではありませんし、メディアによって美化して描かれた自分と現実の自分にギャップを感じて苦しんだことも何度もありました。

でも、渋井さんが取材者だったこともあって、ふだんは言わないようなこともフジノは率直にお話ししました。

そして、この本の中のフジノは、かつて渋井さんの著作を読んで感じたとおりの等身大のリアルなフジノだったです。

2011年11月3日、反貧困世直し大集会@明治公園にて

2011年11月3日、反貧困世直し大集会@明治公園にて


渋井さん、本当にありがとうございました!

どうかみなさまも機会がありましたら、この本を読んでみて下さいね。

来週発売です。

写真家・岡原功祐さん、さらにノンフィクション作家へ/「Ibasyo 自傷~存在の証明」が第7回開高健ノンフィクション賞ベスト3に選ばれました

写真家・岡原功祐さん、さらにノンフィクション作家へ

フジノと同世代でありながらすでに世界的に高い評価を受けている写真家・岡原功祐さん

岡原さんとその写真については、これまでもこのブログでずっと紹介し続けてきました(こちらこちらこちらなどをご覧下さい)。

その岡原さんが自らの写真と共に執筆をしたノンフィクション作『Ibassyo 自傷~存在の証明~』

なんと、第7回開高健ノンフィクション賞ベスト3に選ばれました!

最終選考の結果、受賞こそ逃したものの、これはすごい快挙です。

集英社「第7回開高健ノンフィクション賞受賞作発表」サイトより

集英社「第7回開高健ノンフィクション賞受賞作発表」サイトより


実は、彼の作品の原稿を読ませていただいたのですが、自傷行為についてのリアルな現実がそのまま描かれていました。

自傷が美化される訳でもなく、かといって否定されるのでもなく、ただ現実にその行為が存在している今の社会の姿。

読みながら、胸が苦しくなるような想いを感じつつも、僕は決して絶望を感じることはありませんでした。

現実から始まるしかない。

それが『僕たちの世代』なのです。
 
どんな現実であろうと、そこからしか前に進むことはできないのです。

そうした想いが岡原さんの文章の底にも流れている気がして、とても深く共感しながら読み進めました。

審査委員の1人である佐野眞一さんは、岡原さんの作品をこのように評していました。

佐野眞一さんによる講評

リストカットがやめられない女性たちの日常を、これほど丹念に取材した作品は例がない。

現代日本の根に潜む精神最深部の病にメスを入れたという意味で、このアクチュアリティーは、他の作品を圧倒している。

ここに定着されているのは、これまで誰もが聞こえないふりをしてきた魂の奥底から絞り出した痛切な叫びである。

それをあぶり出した勇気だけでも、受賞に値する。

だが、インターネットのmixiを取材の入口にするなど、筆者は“安全地帯”にいるのではないか、との批判があり、受賞には至らなかった。

ただし、本にする価値は十分あるので、読者には受賞作同様、応援をいただきたい。

「リストカットがやめられない女性たちの日常をこれほど丹念に取材した作品は例がない」

という佐野さんの講評に同感です。

『mixiを取材の入り口に』していること=『安全地帯にいるのではないか』という指摘は、たぶん世代間の『差』なんだろうなあと感じます。

インターネットを入り口にしていることは、現代の若者の日常的なツールを使っている訳で、むしろ僕たちの世代にはリアルな入口だと逆に感じています。

「本にする価値は十分あるので、読者には受賞作同様、応援をいただきたい」

というコメントには強く同感します。

そこでフジノは

「集英社さん、ぜひ出版をして下さい!」

というメールをさっそく送りました。

この作品は、自殺予防対策の観点からも、世間に対してきちんと本として送り出してほしいと願っています。

市民のみなさま、実はこのノンフィクションにはフジノも1ページほどささやかに登場しています。

どんな風に登場しているのかを読んでみたいなあという方もぜひ集英社さんに「出版してください!」メールを送って下さいな。



犯罪被害者支援の為に、もっとやるべきことがある/「それぞれの立場からはじめる犯罪被害者支援~神奈川県犯罪被害者支援県民大会」へ(その1)

犯罪被害者支援の為に、もっとやるべきことがある

中学生たちの演劇発表会場を飛び出ると、大急ぎで昼ごはんを食べて、横浜・桜木町に向かいました。

ランドマークタワーの真正面にある『はまぎんホールヴィアマーレ』が会場です。

ランドマークタワー

ランドマークタワー


午後から、

に参加しました。

『それぞれの立場からはじめる犯罪被害者支援~神奈川県犯罪被害者支援県民大会~』プログラム

『それぞれの立場からはじめる犯罪被害者支援~神奈川県犯罪被害者支援県民大会~』プログラム


被害者支援に対して強い想いを持つ県のある職員さんから熱心にお誘いいただいてこともあって、喜んで参加させていただきました。

「犯罪被害にあった方々の支援はフジノの政策課題だ」と受け止めて、横須賀市議会でいろいろな提案をしてきました。

アメリカ軍の兵士が起こす犯罪の防止(加害の予防)だけでなく、全ての犯罪による被害にあった方々へのサポート(被害への支援)も、とても重要です。

ご遺族による基調講演「犯罪被害者等が望む支援」

まず、2人の方から基調講演が行なわれました。

最初に、練馬区での殺人事件の被害者のご遺族である糸賀美穂さんから『犯罪被害者等が望む支援』のテーマでお話がありました。

糸賀美穂さんの講演

糸賀美穂さんの講演


(ここから先は、フジノのメモを基に記したもので、聞き間違いや誤解や重要な情報が欠けている可能性があります。正確なものではなく、あくまでもフジノのメモとお考え下さい)

被害者は、私の息子で25才でした。

息子は、同い年の恋人に殺されてしまいました。

加害者は、極めて一方的な理由によって、息子を永遠に奪い去ってしまったのです。

もともと情緒不安定の女性でした。

息子が彼氏になった後も、平気で他の男性と浮気をしたり、というようなこともありました。

また、彼女は、自分の両親との関係が一方的に悪いと受け止めていました。

実際には彼女の両親は彼女が家出をするたびに毎回、一生懸命に彼女の行方を探してあげたりしていました。

後で供述を読んでしったのですが、彼女は、

「彼氏(息子さん)を殺してあげなければならない」

と自分勝手な思い込みで考えていました。

息子が殺されたことをテレビなどのニュースで観た友人から様々な電話やメールなど連絡がありましたが、事件当日も、お通夜もお葬式も、どのように終わったのか今も記憶がありません。

彼女は、計画性も殺意も容疑も全て認めた為か、刑事裁判は事件からわずか2ヵ月後に始まりました。

けれども2ヵ月後の頃は、まだ私は自分を責め続けていました。

骨壷を抱きながら、毎日謝り続けていました。

私たち被害者の家族の味方と信じていた検察とは話す機会も無いままに、裁判になりました。

「遺族は裁判のはじめに冒頭陳述ができるだけ」

と言われました。

彼女は、何故息子を殺したのか、真実を語ることも無く、息子に対しても私たちに対しても謝罪の言葉も無く、反省の言葉もありませんでした。

2回目の公判では、彼女の親(加害者の親)が陳述することになっていたのですが、当日になって拒否しました。

そこで、私も夫も、彼女の親が自分たちの娘がしたことをどのように考えているのか、謝罪の気持ちがあるのかどうかも、何も知ることができなくなってしまいました。

その日は、私の夫のみが意見陳述をしました。
 
涙でぐしゃぐしゃになりながらの陳述でした。

夫が陳述を終えた後に、

「加害者、何かありますか?」

と裁判長が彼女に問いました。

けれども、

「何もありません」

と彼女は言いました。

彼女の側の弁護士は、加害者の両親に対して、

「20才を超えた加害者に対して、保護者の責任は無いから接触すべきではない」

と指示を出していたようです。

法廷で会っても、お辞儀ひとつ無かったです。

これまで息子が生きている時には彼女のことで何度も相談にのったり、いずれ結婚するだろうと考えていたので、何度も一緒にお話した間柄だったのにあんまりだ、と感じ、とても悲しくなりました。

検察側は懲役13年を求刑しました。

しかし、自首であること、前科前歴が無いこと、25才という若年であること、反省していること(しかしこれは自分の両親への謝罪の言葉)、で減刑されてしまいました。

加害者には保護や人権が守られているにも関わらず、被害者には何の保護も無いことが分かりました。

被害にあった人は国や司法から守られているものと思っていました。

しかし現実には、自分の私利私欲の為に人の命を奪った犯罪者に対しても「心神喪失や責任能力が無い」などの理由によって、量刑が軽くなってしまうだけでした。

被害者の遺族は、なおさら傷つけられてきました。

また、これは同時に、加害者の為にも良いものなのでしょうか。

矯正教育が今、どのように行なわれているのかは分かりませんが、被害者のことを忘れることなく、罪を真正面から見つめることが必要だと思います。

加害者はもし生きて刑務所を出てきたならば、出所の日からが本当の罪滅ぼしの日々です。

2度と取り返すことのできない現実に苦しみながら生きていかなければならないからです。

1年ほどたって民事裁判を行いました。

けれども、相談にのってもらった弁護士さんから

「どうせ何も取れないのだから、請求額は5000万円にしてはいかがですか?」

と言われました。

「これは一体何の話をしているのだろうか」

と私は思いました。

民事裁判の準備を進めていくにつれて争点が無い裁判は刑務所の加害者に書類を送り、署名をして送り返すだけのものだと初めて知りました。

加害者の署名と言い分として

「私にはお金が無いので、出所したら少しずつ払う」

とだけ書いてありました。

加害者の親は、事件の後も、同じ住所でふつうに暮らしながらえていることに、怒りを覚えました。

相手の母親からは謝罪の言葉は無かった上に、お話をしたいと伝えた途端に、むしろ逆切れされてしまいました。

「あんたね、私たちだって大変なんだよ!」

「あなたの息子がつきあわなければ良かったんでしょ!」

と言われました。

殺された上に、なおもけなされる息子が不憫で不憫で、私はその夜、自殺未遂をしてしまいました。

「死にたい」

という気持ちよりも、

「死んだら息子のところに行くことができる。早く息子に会いたい」

という気持ちになりました。

ようやく今、私はそういう命を救わねばならないと思いました。

『被害者支援センター』からお手紙を何度かいただき、友人らの前では語ることができない想いを毎月1回話せるようになりました。

自助グループに参加するまでは

「こんなことに参加して、一体何の役に立つものか」

と疑問に思っていました。

けれども、センターのサポートや同じ苦しみを持つ方々と体験を話すことで、こころの傷が少しずつ小さくなりました。

その後、2006年犯罪被害者基本法、DV法、更生保護法、少年法の改正、刑事訴訟法も今年12月から刑事裁判の中で遺族も意見を言うことができるようになります。

けれども、これらの法改正も、法律に携わる人々の意識が変わらない限り、ただの飾りになってしまうおそれがあります。

警察や司法、地域の支援ネットの理解が必要です。

自殺予防や犯罪を防ぐ為にも被害者の家族は、なるべく早い段階から支援を受けられるように、自治体やカウンセリングとの連携の必要性=協力が本当に必要だと考えています。

県が条例を作ろうとしていることや取り組みを行なってくれていますが、取り組みの単位は県のように大きなものではなく、それぞれの市町村単位にしてほしいと望んでおります。

みなさまにはぜひ他人事とお考えにならないでいただけたらと思います。

次の記事に続きます)