映画「すーちゃんまいちゃんさわ子さん」

東日本大震災後、「同世代」のそれぞれの在り方

「同時代」を生きる「同世代」の人たちに、その職業を問わず、僕はとてもこころを惹かれます。

「同時代」を生きる「同世代」の「俳優」でいつも気になるのは、こちらの三人です。

窪塚洋介さん、山本太郎さん、柴咲コウさん。

映画『GO』『バトル・ロワイヤル』頃からずっと、気がつくとその仕事や在り方がいつも気になっていました。

そして、2011年3月。

東日本大震災が起こった後、アーティストたちの多くが自らの活動の在り方について自問自答したと言われています。

大災害によってあらゆる価値観が揺らいでいく中で、たぶん、誰もがそうだったと思います。

僕は政治家として、自らの在り方を自問自答しながら必死に進むべき道を歩き続けました。

そんな日々の中で、僕はこころの中で三人の動向をいつもそれとなく気にしていたように感じます。

この今をどんな風に歩んでいくのか、どんな選択をしていくのか、その姿を通して、自分の歩みを確認していたのかもしれません。

窪塚洋介さんは、滞在していたフランスからYouTubeですぐにメッセージを発信して、帰国後も被災地へボランティアにたびたび訪れ続けました。

卍LINEとしての定期的なイベントでは、復興をうたいつづけました。

山本太郎さんは、脱原発を訴えた為に芸能界をなかば干されて、活動家に身を転じ、さらには総選挙において立候補し、善戦しました。

柴咲コウさんは、被災地をボランティアとして訪れました。

しかしそれは俳優としてではなく、極めて私的な形でボランティアへ赴くという形でした。

直接的なソーシャルアクションでいう意味では、3人の中では最も「穏健」な在り方でした。

一方で僕は「彼女はきっと作品を通してその在り方を伝えていくのだろうな」と受け止めていました。

その柴咲さんが、震災後に初めて出演する映画として選んだのが『すーちゃんまいちゃんさわ子さん』です。

益田ミリさんが原作の4コマ漫画『すーちゃん』を映画化した作品です。

「すーちゃん」、益田ミリ著、幻冬舎、2009年

「すーちゃん」、益田ミリ著、幻冬舎、2009年


予告編から伝わってきたのは、日常生活を描いた、なんだかとてもほのぼのとしたイメージです。

いくつものオファーの中から選ぶことができる立場にあって、何故この作品を選んだのか、その意味を感じたいと思いました。

朝日新聞の夕刊に1面広告も出てました

公開日が近づくと、新聞の夕刊に1面広告も出てました

柴咲さんの『選択』がどのようなものなのか早く観てみたいと思いながらも

2012年3月に製作がスタートして、公開は2013年3月。

1年間、のんびりと待ち続けることにしした。

映画「すーちゃんまいちゃんさわ子さん」へ

ようやく公開が近づいてきた、数日前のことです。

「急きょ、初日の舞台挨拶が横浜の映画館で追加開催される」とのニュースが流れました。

その映画館のHPからふつうにチケットを予約するだけで良いとのことでした。

今はとても便利な時代になりましたね。

僕が映画会社で働いていた15年前には、もしもあなたが舞台挨拶を観たかったら、少なくとも前日から徹夜で映画館に並ばなければなりませんでした。

映画館で働く側も、お客さんの安全の為に泊まりこみだったものです。

さっそくインターネットを開くと、無事に予約ができて、しかもすごく良い席が取れました。

4列目の中央という超特等席でした

4列目の中央という超特等席でした


舞台挨拶は、仕事では何度も立ち会ったことはありますが、プライベートでは人生初めての体験です。

チケット

フジノが選んだ席は、E-20番です

そして、観終わりました。

映画は、古き良き大船調の松竹の作品のようでした。

何も事件は起こらず、人も死なない。よくある出来事。ありふれた日常。

それはとても素晴らしいものでした。

場内全体が優しい雰囲気に包まれるような、観客みんなが温かい連帯感をおぼえるような、そんな作品でした。

映画館入り口に飾ってあるパネル

映画館入り口に飾ってあるパネル


海外の俳優は、社会的に大きな影響力を持つ活動家になる方もいます。

例えば、レオナルド=ディカプリオさんのように環境保護の活動家として、あるいはジェーン=フォンダさんのように反戦活動家として、大きな発言力を持つ人もいます。

それはそれで「あり」ですし、そういう風土なのだと思います。

けれども、僕が信じている『俳優の仕事』とは、演じることです。

だから映画を観て、柴咲さんの在り方に改めて感銘を受けました。

この作品こそが、震災を通して感じてきたことを含めて、彼女の在り方が示されたものなんだろうなと感じました。

監督もまた同じ想いだったのかもしれない

映画が終わり、舞台挨拶も終わり、僕は場内から出ました。

すると、なんと僕の目の前を御法川監督が歩いていました。

驚きつつも思わず声をかけさせて頂いた所、とても気さくにお話して下さいました。

映画の感想をじかに監督にお伝えできる機会なんて、めったにありませんので、とても感激しました。

御法川監督!

御法川監督!

さらに、ツイッターでもお返事を頂きました。

御法川監督がお返事をくれました

御法川監督がお返事をくれました

御法川修監督がオススメして下さったレポート(特別試写会での御法川監督へのインタビュー)を読んでみました。

その中に、こんな言葉がありました。

最近TVのニュースを見ても暗い話題ばかり。

いま僕たちは、「明るい未来が待ってる」と単純に考えることが出来ない時代に生きています。

そうしたネガティブな情報に神経過敏になりすぎて、不安を募らせるよりも、落ち着いて心の声に耳を澄ませ、自分の手の届く範囲にあるささやかなことを、もう一度見つめ直す、そして日々の行為や生活を肯定し、大切に慈しむことが、気分を穏やかに変えてくれるのではないでしょうか。

実はこの映画、構想から公開に至るまで6年かかっているんです。

時間がかかっても映画化したいと諦めなかった理由は、「自分を見つめ直す」というテーマを、同じ時代を生きるものどうしで共有したいと強く願ったからなんです。

それが一番の動機だったでしょうか。

そうだったのか…。

だからこの映画は僕のこころを強くつかまえて揺さぶり、感動を与えてくれたのか…。

監督が強く願ったことは、確かに僕には届きましたよ!

御法川監督は僕の2才先輩。彼もまた「同時代」を生きる「同世代」でした。

とても良い作品ですので、関心のある方はぜひご覧になって下さいね。

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