ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」が全国の共感を呼び、保育士のみなさんの待遇の悪さにようやく目が向きつつあります
2016年2月15日、あるブログが日本中の共感を呼びました。

保育園落ちた日本死ね!!!
2月29日には、衆議院予算委員会ではこのブログをもとに総理が追及を受けました。
共感するたくさんの方々が国会前でデモを行ない、メディアも大々的に報じるようになりました。
そして、昨日の毎日新聞でもこのような社説が掲載されました。

2016年4月4日・毎日新聞・社説より
全文をご紹介します。
保育士不足、低賃金の改善が急務だ
この1カ月、「待機児童」問題が国会で繰り返し議論されてきた。その核心は保育士の低賃金だ。
政府の緊急対策は小規模保育所の定員拡大などが柱だが、狭い場所に幼児を詰め込むのは本質的な解決策ではない。保育士資格を持ちながら離職している人は70万人近くいる。保育士の待遇改善こそ急務だ。
「賃金が低い」「事故が不安」「休みを取りにくい」。保育所を辞めた保育士に関する各種調査で上位を占めるのがこうした理由だ。厚生労働省によると2013年時点の保育士の月収は20.7万円で、全産業平均の29.5万円を大きく下回る。
保育は女性が家庭内で行う無償労働のように見られ、高齢者や障害者福祉の職員より賃金水準が低いことは以前から問題視されていた。
今回の緊急対策は規制緩和が中心で、賃金に関しては具体案が示されなかった。政府は5月にまとめる「1億総活躍プラン」に保育士の待遇改善策を盛り込むというが、賃金増を確約したわけではない。
野党は月額5万円引き上げる法案を国会に共同提出した。約2800億円の財源が必要で、保育士の数が増えるほど財源も膨らむため、政府は慎重な姿勢を見せている。
一方で、政府は低所得の高齢者に一律3万円を支給する「臨時福祉給付金」には約4000億円を計上している。給付金は1回限りの措置であり、恒久的な財源が必要な保育士給与とは単純に比べられないが、「女性活躍社会」「出生率1.8」が看板政策の政権にとって優先課題は待機児童の解消ではないか。
特に若い保育士は深刻だ。新卒で手取りが15万円未満の人は多く、奨学金の返済をしている人は生活費にも窮している。企業で働く女性正社員の長時間労働に伴って、その子を預かる保育所で働く保育士の勤務時間も延びている。休みも取りにくく、保育の仕事にやりがいを感じながらも離職に追い込まれているのだ。
厚労省は保育所に入れないために育休を延期した人などを含めると「待機児童」は当初の2.6倍に当たる約6万人に上ることを認めた。だが、認可施設以外だと自己負担が重くなるなど経済的な理由で結婚や出産をためらう人も多い。こうした人は6万人には含まれていない。
この先、若い女性の人口は減っていくため、生まれてくる子供の数も減る。できるだけ早く安心して子供を育てられる環境を整備しておかないと、出生率の改善は見込めない。人口減少や労働力不足への対策はこれ以上先延ばしできないのである。
保育士の待遇改善は、「待機児童」6万人のためだけではない。この国の未来がかかっているのだ。
かねてから保育士をはじめとする『こども家庭福祉』分野で働くみなさんの待遇の低さは、福祉業界では大きな問題となっていました。
そもそもハードとしての『施設』(保育園・学童クラブ・放課後児童デイサービス・乳児院・児童養護施設・母子生活支援施設など)は足りていません。
しかしそれ以上に、ソフト=働いていただく『人材』が足りていないのです。
この1か月間、やっとこの問題に世論が目を向けてくれた...それが『こども家庭福祉』の世界で働くみなさんの想いではないかとフジノは思います。
横須賀市はこれまで保育士の所得も把握していないし、把握する意思も無かった
これまでフジノの友人・後輩をはじめ、多くの保育士の方々が退職をしていきました。
「保育士になるのがずっと夢だったのに、働いていた3年間は地獄だった」
と、フジノに泣きながら詰め寄った人もいます。
夢と志を持って保育士になった人たちが、使い捨てにされてきました。
そこで、この3月末に閉会した予算議会の場で、あえてフジノは『横須賀市内の保育士の待遇の問題』を取り上げました。
2016年3月10日・予算決算常任委員会教育福祉分科会
フジノの質問
「こども家庭福祉の人材確保」の観点から伺います。
まず「保育士の待遇及び待遇改善」について伺います。
「民間社会福祉施設従事職員育成費」という形で、保育所等21施設という形で補助を出しています。
まず伺いたいのですが、保育所の職員のみなさんの平均的な収入・待遇というのは把握しておられるのでしょうか。
こども施設指導監査課長の答弁
いわゆる横須賀市内の保育園・認定こども園等で働いていらっしゃる職員の方、特に保育士の方の年間給与等についての実態については、市の方では現在のところ把握しておりません。
フジノの質問
この「育成費」の目的というのは、「対象となる保育所等の職員の賞与に対する補助」というふうに目的が書かれています。
これによってどれだけ効果が出ているのかは把握しておられるでしょうか。
こども施設指導監査課長の答弁
補助金の支出において適正に各職員の方に支給されているかという確認については翌年度の指導監査において確認しておりますが、それがじゃあ一体、先ほども申しましたように園の平均給与に占める割合がどれくらい底上げしているのかという詳細な分析までは把握していません。
フジノの質問
各種の調査によると、「保育士の離職理由」で最も多いのは「給与面での不満」との調査結果が出ております。
実際にはこれは副次的なもので、本来の想いというのはもっと別のところにあるんではないかなとは思うのですが、調査結果で出てくるのは「給与面での不満」が最も多いというふうになっています。
本市は保育職の離職をとにかく防ぐ、もちろん新規採用も目指すし、潜在保育士の方の復職も目指すけれども、まず今いる方々に離れないでいただきたいという意味では待遇も把握し、そして出している補助がどれだけの効果があるのかを把握して、そして必要があればさらに増額も検討しなければならないと思うんですが、いかがでしょうか?
こども施設指導監査課長の答弁
保育士の処遇につきましては、国の方の補助事業で平成25年から『保育士等処遇改善臨時特例事業』ということで処遇改善事業を
実施しておりまして、引き続き今年度からの子ども子育て支援新制度の公定価格においても『処遇改善加算』ということで公定価格3%上乗せするということで、必ず職員の賃金改善に使うようにというような形で公定価格が給付されているところでございますので、それらを踏まえまして市としては全体的な保育士の処遇改善はなされているのではないかと認識しております。
フジノの質問
データが無いにもかかわらず、国の「保育士等処遇改善特例事業」の効果が続いているからまあ大丈夫と言い切ってしまうのは疑問を感じます。
やはりどの程度の収入なのか。
保育所長、主任クラス、担当者のみなさん、ある程度把握して、それによって効果的な処遇改善を市も見ていかねばならないと思うんですがいかがですか。
こども施設指導監査課長の答弁
まず先ほど申しましたように、平成25年度から始まりました保育士等処遇改善事業につきましては必ず保育士の賃金に反映させるということで実績報告書もいただいておりますので、それにつきましては市としても的確に行なわれているという風に認識をしております。
また引き続き公定価格におきましても実績報告を求めて、ただ、基準年度において比較して必ず賃金改善を実施するという
報告書をいただいておりますので、その処遇の改善につきましては保育士の処遇の改善に寄与しているというふうに認識しております。
フジノの質問
重ねての質問で恐縮なんですが、市として平均賃金を把握していないにもかかわらず、把握する意図も無いまま、国の処遇改善及び公定価格への反映をもって離職防止につながっているというふうに断言できる根拠は弱いと思うのですがいかがでしょうか。
こども育成部長の答弁
委員のおっしゃることはたぶん介護保険制度における介護職の処遇だとか平均賃金だとかにかかわることだと思うのですが、委員のおっしゃるような全体の把握、全部が100%確実にできるものでは無いとは思いますが、何からできるかということも含めて検討したいと思います。
フジノの質問
これもかねて質問したことですが、市内保育所の園長先生らとお話しをすると、新卒採用をなんとか確保する為に、専門学校在学中または大学在学中からリクルート活動をしている。
けれども、今では民間企業でも保育の採用をしていますから、日本全体でみても2割以上の卒業生が民間企業に就職してしまっている。
そんな状況がある中で、横須賀市の保育人材の確保というのはもう本当にすさまじい競争状態になっているというふうな現状を以前お話したことがあります。
そんな中、離職理由で最も多いのは給与面の不満だというお話を調査結果から持ち出して僕はお話をしました。
今いる方の離職防止にはもちろん研修等も行なわねばならないと思うのですが、待遇面での市ができることというのをしっかり考えていかねばならないというふうに僕は思うんです。
今部長ご答弁いただいて、高齢者福祉の世界も十分にご承知ですから(こども育成部長は元・介護保険課長でした)同じ風に保育のことを見渡した時に「このままで良いのかな」というふうに思わないのかなと思うのです。
データが無いままこの「社会福祉施設従事職員育成費」が出されているということにも驚きを感じているのですが、今ベースがどこにあって、どこまで上げていくのかというターゲットも無いままにやみくもに突き進んでいくというのもちょっと理解できないんですね、取り組みの在り方として。
今ご答弁として何らかの形で検討はしたいというふうにお答えはいただいたのですが、まず現状の把握をしていただきたいというふうに思います。
そして、今後の取り組みにつなげていただきたいと思います。
いかがでしょうか。
こども育成部長の答弁
補助金を出している中ではやはりそういうことは必要だと思いますので、検討を進めていきたいと思います。
課長は「保育士等の処遇は把握していない。国の処遇改善の取り組みによって成果は出ている」の一点張り。
しかし、具体的なデータはありません。
フジノが繰り返し「現状を把握してほしい」「現状を把握した上で、補助の上乗せなど市ができることを検討してほしい」と述べました。
その結果、最後にようやくこども育成部長から「何ができるか検討したい」と答弁を得ました。
けれども4月1日付けでこの答弁をしてくれたこども育成部長は異動してしまいました。
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横須賀市のこども育成部の保育運営課長は、昨年12月議会での質疑においても「保育人材は足りている」と答弁をしました。
他の議員への答弁だったのですが、フジノは煮えたぎるような気持ちでそれを聴いていました。
保育に夢を持って入職したたくさんの人々が使い捨てにされている現実。
本当は働きたいしこどもを預けたいけれども諦めているお母さん方が多い現実。
フジノが日々聴いてきた現実と、「保育人材は足りている」という行政側の答弁のあいだにはすさまじい現実認識の溝があることが分かりました。
この予算議会での質疑でも、保育士の給与等の待遇を全く把握していないことが明らかになりました。
横須賀市は保育をはじめとする『こども家庭福祉』への想いが足りない、弱すぎるのではないかとフジノは感じています。
保育の需要は増えているのに、保育人材はどんどん辞めていっている。
だからこのまちから若い世代(特に子育て世代)がどんどん引っ越しをして離れていっている。
こういう現実を前に、吉田市長をはじめ行政は何をすべきか優先順位が間違っています。
あまりにも虚しい今の吉田市政に対して、さらに多くの若い世代が引っ越しという形で意思表示をしていくのだと思います。