2019年最初の映画は元旦のレイトショーでした
元日夜もいつもどおりに『ひとり自殺対策街頭キャンペーン』を終えました。
そのまま大急ぎで、映画館『横須賀HUMAXシネマズ』へ向かいました。

映画「こんな夜更けにバナナかよ」を観ました
映画『こんな夜更けにバナナかよ』を観る為です。

2019年の初映画です
昨年12月28日から公開が始まったのですが、
「2019年の初映画はこの作品にしよう!」
と決めていました。
実話が映画になりました
この映画は、実話です。
そもそもの原作は『こんな夜更けにバナナかよ〜筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち〜』(渡辺一史著、北海道新聞社、2003年)という本です。
ちょうどフジノが政治家に転職した年に出版されたので16年前の本です。

こんな夜更けにバナナかよ
平坂書房モアーズ店の福祉本コーナーで見つけて購入しました。
とてもぶあつい本です。奇抜なタイトルで一瞬目を引きますが、下の2つの重要な賞を受賞している本格派ノンフィクションです。
- 第25回(2003年) 講談社ノンフィクション賞受賞
- 第35回(2004年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞
素晴らしい本ですが、残念ながら福祉関係者以外は絶対に読まなさそうな本でした。
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それが16年を経て、松竹のおかげで映画化されました。
しかも人気俳優と実力派俳優がたくさん集まって、一流のエンターテインメント作品に仕上がりました。
映画は原作からだいぶデフォルメされていますが、大切なエッセンスは失われていません。
むしろ、大切なエッセンス以外の部分がデフォルメされたおかげで、より分かりやすくなっています。とても良い作品でした。
障害者自立生活運動は鹿野さんのおかげで世間に知られるようになるかもしれない
1970年代、日本とアメリカなどで世界同時多発的に『自立生活運動』というムーブメントが起こりました。
障がいがある方々が人生の全てを病院・施設の中で終えるということが当たり前、そんな現実を当事者自らが打ち破る活動です。
特に、脳性マヒによる全身に重い障がいのある方々が中心となって、施設ではなく地域で生活していく為の運動を実践していきました。行政に働きかけるだけでなく、自ら地域社会で暮らすことで総合的な福祉サービスを実現していきました。
中心となって活動してきた団体としてフジノの頭に浮かぶのが、神奈川県では『青い芝の会』、北海道では『札幌いちご会』です。
『札幌いちご会』=『小山内美智子さん』というのがフジノの頭に浮かぶ図式です。たぶん、障がい福祉の世界に居る人々の多くが同じように考えていると思います。
小山内美智子さんはたくさんの著作も出版して、自立生活運動のヒロインでした。

2018年12月、小山内美智子さんと。
渡辺一史さんの著書『こんな夜更けにバナナかよ』の主人公である鹿野靖明さんは、この『札幌いちご会』のメンバーのお1人でした。
ただ、小山内美智子さんの圧倒的な存在感に比べると、鹿野さんはリアルタイムではあまり知られていなかったように思います。
鹿野さんは何本かのニュースに報じられたりはしていたとはいえ、この本が出版されなければほとんど世間に知られることは無かったと思います。
さらに、この映画が作られたことによって鹿野さんの存在だけでなく、自立生活運動が広く世間に知られるようになるのではないかとフジノは強く期待しています。
障がい福祉の世界では『自立生活運動』は必ず学ぶ重要な事柄です。
でも世間の人には全く知られていません。
けれどもこの映画がヒットすれば、広く世間一般の方々に『自立生活運動』が知られるようになるかもしれません。
エンタメは大きな力を持っています。
ぜひ大ヒットして、鹿野靖明さんの生き様と『自立生活運動』が後世に語り継がれるようになってほしいです。
裏話・アサノ先生と鹿野靖明さんとのご縁
ネタバレではありません。映画の背景のお話です。
この映画の中で鹿野靖明さんが暮らしている『ケア付き住宅』は、1986年に北海道が独自に創設しました。
小山内美智子さんら『札幌いちご会』の長年にわたる活動が実ったものです。
重い障がいがあっても地域で自立して暮らせる公営住宅の実現を求めて陳情の為に北海道庁に訪れた小山内美智子さん。
実は、小山内さんの対応をしたのが、厚生省から北海道庁に出向して障害福祉課長を務めていた当時37歳のアサノさん(浅野史郎・元宮城県知事)だったのは有名な話です。
ここから先は、裏話です。
当初、『ケア付き住宅』では鹿野靖明さんのように全介助が必要な方の入居は認められていませんでした。
そこで北海道庁のアサノ障害福祉課長は、公営住宅の所轄官庁である建設省に陳情に訪れて、ようやくOKが出て、鹿野さんの入居が実現したのです。
アサノ課長が建設省を訪問した時、対応した相手は、市川一郎課長という方でした。
著書『こんな夜更けにバナナかよ』には、浅野史郎障害福祉課長に関する言及は一言もありません。
けれども、もしもアサノさんが出向していなければ、鹿野さんの『ケア付き住宅』入居は実現しませんでした。
鹿野さんの入居が実現しなかったならば、この本も書かれることはなく、この映画も製作されることは無かったのです。運命は不思議ですね。
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アサノ障害福祉課長は厚生省に戻りました。
1993年には、23年7ヶ月に渡る厚生省務めを辞めて、宮城県知事選挙に出馬、当選しました。
1997年には、2期目の選挙に出馬しました。
その時の対立候補は、参議院議員になっていた市川一郎さん(元・建設省課長)だったのです。
アサノさんの出向と同じく、もしも市川一郎さんが建設省に居てくれなければ、鹿野さんの入居も実現していなかったかもしれないのです。
運命の皮肉をフジノはつくづく感じました。
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元旦からとても素晴らしい映画を観ることができました。
きっと今年は良い年になるはずです。
イオン横須賀店のリニューアルによって、『横須賀HUMAXシネマズ』は閉館してしまいます。

今年リニューアル工事がスタートして休館するイオン横須賀店
リニューアル工事の始まる4月まで、あと何本の映画をここ『横須賀HUMAXシネマズ』で観られるのかな・・・。
後日追記:6ヶ月後に著者の渡辺一史さんとお会いする機会に恵まれました
人生とはフシギなものです・・・。
半年後の7月3日、映画の原作者・著書『こんな夜更けにバナナかよ』の著者である渡辺一史さんとお会いする機会に恵まれました。

渡辺一史さんとフジノ
つくづく運命の不思議を感じます。