(前のブログ記事から続いています)
2026年8月7日、『横須賀市自殺対策推進協議会』が開催されました。そこでもう1つの議題となったのが「こども・若者の自殺/自殺対策について」です。
今回みなさまに注目していただきたい統計があります。
2025年、横須賀市の自殺者数は57人。
そのうち、19歳以下が5人、20~29歳が9人。合わせて14人でした。つまり、昨年に横須賀市で自殺した約4人に1人が29歳以下だったことになります。
※ここでは、横須賀市自殺対策推進協議会の資料の年齢区分に合わせて『19歳以下』と『20~29歳』を『こども・若者』と表現しています。
横須賀市の自殺者数はこれまで減ってきました
改めて、横須賀市全体の自殺者数を見てみます。警察庁の自殺統計によると、下のグラフのように推移しています。増減はありますが、長期的に見れば、横須賀市の自殺者数は減ってきました。

かつて年間100人を超えていた時期を体験しているフジノにとっては、大きく自殺の犠牲者が減ったと実感しています。横須賀市がこれまで続けてきた自殺対策には確かな成果があった、とフジノは考えています。
だからこそ、次の課題に向き合わなければなりません。
次の課題は「こども・若者」です
さらにご覧いただきたいのが、横須賀市の年齢の自殺者数の推移です。『19歳以下』と『20~29歳』を合わせると、ここ5年間は下のようになっています。
| 年 | 19歳以下 | 20~29歳 | 合計 | 全自殺者に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | 3人 | 1人 | 4人 | 7.3% |
| 2022 | 0人 | 5人 | 5人 | 8.6% |
| 2023 | 1人 | 4人 | 5人 | 7.5% |
| 2024 | 3人 | 12人 | 15人 | 22.7% |
| 2025 | 5人 | 9人 | 14人 | 24.6% |
*警察庁自殺統計より。割合は「19歳以下+20~29歳」を各年の横須賀市全体の自殺者数で割って算出しました。
母数が少ないので単純に「増加傾向だ」と判断することはできません。
それでも、2023年の5人から2025年は14人へ。およそ3倍になっているのです。
さらに見過ごせないのが、自殺未遂者数です。
2025年、横須賀市で自殺未遂をした19歳以下は20人、20〜29歳は23人。合わせて43人にのぼります。
自殺未遂をしたこども・若者は43人。自殺者14人の3倍を超える人数です。
自殺に至らなかったからといって「大丈夫だった」と考えることはできません。むしろ、自殺未遂という重要なサインをいかに次の支援につなげられるかが重要です。
全国でも、こども・若者の自殺は深刻です
国全体の状況も見てみましょう。
小中高生の自殺者数は、長い間おおむね300人前後で推移してきましたが、近年は増加傾向です。
そして2025年には過去最多の538人となりました(小学生10人、中学生172人、高校生356人)。
こうした状況を受けて、自殺対策基本法が改正されました。こども・若者に力点を置いた取り組みの重要性が法に明記されたのです。
具体的には、地方公共団体が、こどもの自殺防止について必要な情報交換や協議を行なう『協議会』を設置できることになりました。
横須賀市が新たに進める「こども・若者」の自殺対策
国の法改正を受けて、横須賀市はどのように取り組みを充実させていくのでしょうか?
今回の協議会で示された1つの大きな動きは、『(仮称)こども・若者部会』です。
横須賀市自殺対策推進協議会の中に、こども・若者の自殺対策を重点的に検討する部会を設ける、という位置づけです。
これは非常に重要な取り組みだとフジノは考えています。
こどもの自殺は、本人だけでなく、遺された家族・友人・クラスメート、学校、地域など、本当に多くの人の心に深く強い影響を及ぼします。こどもの命を守ることは、その周囲にいるたくさんの人たちを守ることにも直結しています。
すでに横須賀市には、こどもたちを支える様々なネットワーク組織があり、『横のつながり』ができています。
こうした既存の『横のつながり』の力を借りながら、自殺対策に特化した新たなネットワークが立ち上がることはとても有効です。
今回の事務局の提案に対して、協議会のみなさんも賛成し、正式に設置が決定となりました。
待つのではなく、早く見つけて早く支援につなぐ
『(仮称)こども・若者部会』の重要な取り組みは、
自殺の危険性が高いこどもや、自殺未遂をしたこどもを早期に把握し、関係機関が連携して支援する
ことです。
例えば、
- 自殺をほのめかすなど、自殺リスクが高いこども
- 自殺未遂をして医療機関に搬送されたこども
- 民間団体などが支援の中で把握した、緊急性の高いこども
- 警察が保護した、緊急性の高いケース
などについて、関係機関から情報提供を受け、支援につなげることが想定されています。
さらに、フジノが重視しているのは『個別ケース検討会議』を開くことです。ハイリスクと判断されたこども・若者に対して
- 本人の状況を確認する
- 自殺リスクを評価する
- 支援方針を決める
- 関係機関の役割分担を決める
- 支援状況を定期的に確認する
- 必要に応じて支援方針を見直す
といったことがもしも本当に早期に実施できれば、自殺リスクを大きく低減させることができるはずだからです。
また、本人だけでなく『家族』への支援についても検討すべきです。
「本人から相談が来るのを待つ」のではなく、危険な状態にあるこどもを早く見つけ、早く必要な支援につなげる。
そこまで踏み込んだ『部会』をめざしていきたいです。
また、『部会』の立ち上げよりも早く、すでに2026年度から新たな取り組みがスタートします。大きく3つの新規事業がスタートします。
1.心の健康観察ツール
毎日の心の状態を端末から入力してもらい、教員が日常の変化を把握するための取り組みです。2026年9月から市内小中学校各1校でトライアルを開始し、2027年4月から全小中学校で本格実施を予定しています。
2.不登校対策推進室
不登校の状態にあるこどもたちへの支援をより一体的に進めるための体制です。
3.サポートルーム
学校に行きづらさを抱えるこどもが、安心して過ごし、学びや人とのつながりを保つための場です。
特に『心の健康観察ツール』は『早く見つける』為の大切な取り組みです。
GIGAスクール構想で生徒ひとりひとりに端末が1台ずつ行き渡っています。その端末に毎日の心の状態を入力してもらうのです。
「担任の先生が顔を見て分かること」に加えて、「本人が毎日入力する心の状態」からも変化を把握する。
まさにこれは「早く見つける」ための重要な取り組みだとフジノは受け止めています。担任の先生によるフェイス・トゥ・フェイスだけではない情報を得るしくみになっています。
(詳しい内容を知りたい方は、株式会社EDUCOMの『スクールライフノート』をご参照下さい。こちらを今回導入することが決定しました)
進学したら、18歳になったら、「支援終了」ではいけない
そして、絶対に不可欠なことがもう1つあります。『切れ目のない支援』です。
こども家庭福祉の分野ではこの問題は常に起こりがちなのですが、年齢によって学校や支援機関が変わることがあります。
幼・保から小学校へ、小学校から中学校へ、中学校から高校へ、学齢期から成人年齢へ、など継続的に切れ目なく支援を続けねばなりません。
さらに、
- 18歳になったから。
- 20歳になったから。
といった成人年齢になったことを理由に、支援が途切れてはいけません。
国も横須賀市も、こども・若者の自殺対策については、成長・発達の過程にある若者を含め、継続的かつ伴走的な支援が重要だとされています。
- 学校を卒業した後も。
- 進学した後も。
- 就職した後も。
- 家庭環境が変わった後も。
必要な人には、必要な支援が届き続ける。
そんな取り組みにしていかなければなりません。
横須賀市は、これまでも自殺を減らしてきた
これまで横須賀市は自殺を減らしてきました。
対策をスタートした20数年前、最も自殺の多かったのは中高年男性でした。そこでハイリスク者として捉えて、着実な対策に取り組みました。
その結果、今では中高年の自殺者数は明らかに減少しました(下の警察庁自殺統計のグラフ参照)。

だからこそ、「こども・若者の自殺も必ず減らせるはずだ」とフジノは確信しています。
14人の若き命。
友達をつくって、恋をして、進学して、働いて、やりたいことを見つけて、誰かと出会って…。一人ひとりに、まだ続いていたはずの未来がありました。
いろいろな未来が待っていたはずの、こども・若者の命が失われてしまった。
一人ひとりに、あったかもしれない夢や希望のある未来。
その未来を守る為に、早く気づく。相談につなぐ。関係機関が連携する。支援を途切れさせない。自殺未遂の後も継続して支える。そして、常に取り組みを検証して、さらに改善する。
この繰り返しを一つひとつ積み重ねていくことで、これまで横須賀市が自殺を減らしてきたように、こども・若者の自殺も必ず減らす。
その為にフジノはこれからも自殺対策をさらに進めていきます。
「死にたい」と思うほど苦しんでいるこども・若者が、夢や希望を感じられるようにしたい。横須賀をそんな街に変えていきます。
もし、今つらいなら
ここまで読んでくださったあなた自身が今つらい想いをしておられるなら、あるいは、大切な人の様子が心配なら、どうか決しておひとりで抱えこまないで下さいね。