「養子が養親に伝えたい20のこと」支援者・当事者研修会に参加しました/監訳者ヘネシー澄子さんの講演と参加者との対話の4時間は学びに満ちていました(その2)

その1から続いています)

監訳者のヘネシー澄子さんの講演をお聞きしました

さらにラッキーなことは続きました。

監訳を担当されたヘネシー澄子さんの講演会が開催される、というのです。

監訳者ヘネシー澄子さんの講演のおしらせ

監訳者ヘネシー澄子さんの講演のおしらせ


ヘネシーさんは約50年にわたってソーシャルワーカーとして働いてこられた社会福祉の世界の大先輩です。

下は、複数の文献からまとめたヘネシーさんの経歴です。

ヘネシー澄子さんの略歴

1937年横浜生まれ。

東京外国語大学卒業後、ベルギーとアメリカに留学。

ニューヨークのフォーダム大学で社会福祉学修士号を、コロラドのデンバー大学で博士号を取得。

ニューヨーク市で医療ソーシャルワークを実践した後、ニューヨーク大学社会福祉大学院助教授となる。

1974年コロラド州に移住しソーシャルワーカーの訓練や教育にあたる。

インドシナ難民の為に、1980年にアジア太平洋人精神保健センターを創立し、初代理事長を務めた。

1984年より所長。所長としてPTSD患者の治療を主にする73名のアジア系精神保健セラピストを養成した。

1989年、コロラド州の女性名誉殿堂入りをはたす。

2000年、東京福祉大学で実習担当主任教授として日本に単身赴任、教鞭を取る傍ら、各地で講演や研修会を行なう。

2004年3月大学を退職し帰米、コロラド州に在住。

夫とクロスロード・フォー・ソーシャルワーク社を立ち上げ、高い専門性を活かして、日本の児童福祉に携わる人達の研修を日米両国で行なっている。

2007年10月、関西学院大学の客員教授に就任。

トラウマ急性期治療と心的外傷後ストレス障害治療が専門。

現在の日本の児童福祉の課題を虐待予防と愛着関係修復におき、ヘルシー・ファーミリーズ・アメリカ(HFA)の親の長所に焦点を当てた育児支援の家庭訪問を日
本に紹介することと、コロラド州エヴァーグリーン市のアタッチメント・トリートメント・エンド・トレイニング・インスティチュート(ATTI)の愛着の再形成とトラウマの癒しの技術の紹介に励んでいる。

北米の最新の福祉技術を日本に紹介し、日本の児童福祉の発展に貢献することをライフワークとする。

著作は、『子を愛せない母・母を拒否する子』(学習研究社、2004年)、『気になる子 理解できる ケアできる』(学習研究社、2006年)

ふだんヘネシーさんはアメリカに居られることが多いとお聴きしていたので、貴重なチャンスだと感じて、すぐに申込みをしました。



養子だったエルドリッジさんが著した「養親に知ってほしい20のこと」

東京・中野の会場に着くと、60〜70名程の教室は満員でした。

講演に立つヘネシー澄子さん

講演に立つヘネシー澄子さん


監修された翻訳を1つずつ分かりやすく説明して下さいました。

その20のことをタイトルだけ紹介してみます。

養子縁組:これから親になるあなた方に知って欲しい20のこと

  1. 養子に来る前に深い喪失感に苦しみました。あなたのせいではありません。

  2. 私には養子縁組の喪失体験で生じた特別なニーズがあります。そのことを恥じなくても良い事を教えてもらう必要があります。

  3. 喪失を悲しまねば、あなたや他の人達からの愛情を受けとる私の能力は、妨げられてしまうでしょう。

  4. 私の癒やされていない悲しみが、表面的にはあなたへの怒りとして現れるかもしれません。

  5. 喪失を悲しむのに、あなたの助けが必要です。どうしたら私が養子であることについての感情に触れ、その環状を確かめることができるのかを教えて下さい。

  6. 私が産みの家族について話さないからといって、それは産みの家族のことを考えていないということでは無いのです。

  7. あなたに、私の産みの家族についての、会話の口火を切ってほしいのです。

  8. 私は、私の受胎と誕生、そして家族の歴史の真実を知る必要があるのです。その仔細がどんなに苦痛に満ちたものであっても。

  9. 私が悪い赤ちゃんだったから、産みのお母さんが私を他人にあげてしまったのではないかと怖れています。あなたにこの毒のような恥の感情を捨てる手伝いをしてほしいのです。

  10. あなたが私を捨てるのではないかと怖れています。

  11. 私は本当の私よりも「完全」に見えるかもしれません。私が隠している部分を明らかにするのをあなたに助けてもらう必要があります。私のアイデンティティーの全ての要素を統合できるように。

  12. 私は私自身に力があるという感覚を獲得する必要があります。

  13. 見た目もすることも、あなたにそっくりだと、どうか言わないで下さい。私たちの違いを認めて、あなたに祝ってほしいのです。

  14. 私の自己を確立させてください・・・でも、あなたから切り離さないで下さい。

  15. 私が養子であることについて、私のプライバシーを尊重して下さい。私の了解なしに、他の人に言わないで下さい。

  16. 誕生日は私にとって、つらい日かもしれません。

  17. 自分の診療記録を完全に知らないことは、ときには、苦痛の種になります。

  18. 私は、あなたの手に余る子になるのではないかと怖れています。

  19. 私が恐怖心をとても不快なやり方で吐き出した時には、粘り強く私と一緒にいて、懸命なやり方で応えて下さい。

  20. たとえ私が生まれた家族を探そうと決断しても、私はいつもあなた方に私の親でいてほしいのです。

これだけ読むと20もあって多いな、という印象かもしれません。

しかし、とても分かりやすくヘネシーさんが説明を加えながら語って下さり、共感しながらお聴きしました。

ずっとアメリカでは読みつがれてきたとはいうものの著者はアメリカの方なので、文化的な背景が異なる日本の事情と合わない部分があるのではないか。そんな疑問が誰にも起こると思います。

翻訳を終えた原稿は日本の養親・里親・養子の立場の方々と読み進める機会を持ったところ、みなさんが納得することばかりだったそうです。

産みの親との別れによる喪失体験はとても大きく、こどもには大きなダメージが与えられます。

産みの親と何故一緒に暮らせないのか、育ての親から説明を聴きたい、という想いは思春期にどんどん大きくなっていきます。

養子の心に隠れている喪失感が記されており、今まさに養子のお子さんを育てておられる方には直視するのがつらいこともあるかもしれません。

けれども、こどもの理解を深める為に勇気をもって養子の心の世界に入っていくことが勧められており、通じ合い、さらに幸せな家族になる道へ歩んでほしいと自らも養子である著者は語っています。

とても充実した2時間の講演でした。



養親・養子・里親・支援者・新聞記者、様々な立場の方々との対話

けれどもさらに充実した時間は、休憩明けの会場との意見交換でした。

2時間たっぷりと取られた会場との意見交換は、閉じられた安全な空間であることもあり、本当に率直な言葉がかわされました。

参加者の立場は、養子縁組・里親に関わるあらゆる立場の方々です。里親である方、養親である方、ご自身が養子として育った方、支援者の立場の方、このテーマを追いかけ続けている新聞記者の方、研究者の方など。

質疑応答という形式張ったものではなくて、参加者の方とヘネシーさんとの対話の時間とも言うべきものでした。

この本に記されていることは国境を超えて、今まさに里親として子育てをしている方々・養子として育った方々の心に突き刺さり、いろいろな反応を起こしました。

時に笑いあり、時に涙あり、たくさんの言葉が交わされました。

終わってみると、むしろこの後半の『対話』こそ今日のメインだったようにフジノは感じました。

フジノの参加目的は十分以上に果たされました。やはり参加して本当に良かったです。



講演会に参加して感じたこと

フジノは人生を通じて、産みの親ではない人に育てられた複数の友人と過ごしてきて、また逆に施設側で親から離れて暮らすこどもたちと生活してきた友人とも語り合ってきました。

けれども、人生は人の数だけ存在していて、体験も、感じることも、全て人の数だけ異なります。

1つ前のブログ記事に、横須賀市では養子縁組・里親制度をもっと普及させて家庭養護を推進していく計画づくりをしている、と書きました。

その取り組みの1つとして、実際に児童養護施設で暮らしているこどもたち・ファミリーホームや里親のもとで育ったこどもたちにも初めてアンケートをお願いしました。

アンケートもじっくり読みました。

それでもフジノは「足りない」と感じ続けてきました。

今日のこの講演会の後の質疑応答・意見交換を聴いて、深い学びがありました。

それでもまだ足りない、もっともっと聴き続けていかねばならない、と感じました。

繰り返しになりますが、人生は人の数だけ存在していて、体験も、感じることも、全て人の数だけ異なるからです。

きっと『聴き続けていくこと』に『終わり』は存在しえません。

計画づくりは単なる手段ですから、産みの親と離れて暮らすこどもたちが幸せに暮らしていかれるようにフジノはずっとこどもたちの声を聴き続けていかなばならないと感じました。


次の記事に続きます)