2010年6月議会・一般質問

(2010年6月9日・本会議)

おはようございます。

藤野英明です。よろしくお願いします。

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1.『性的マイノリティー』とされる方々への理解の向上と支援について

思春期における自殺の犠牲や自傷行為へと追い込まれる方々の中には、いわゆる『性的マイノリティー』とされる方々の割合が高いことが調査によってわかってきました。

こうした犠牲をなくすためにも、『性的な多様性』を保障する取り組みが不可欠ですが、特に思春期が対象のため、学校現場での取り組みが重要となります。

これまでも僕は、学校現場における取り組みの必要性とともに、何よりもまず国による明確な指針の策定を訴えてきましたが、

この4月23日に文部科学省の初等中等教育局児童生徒課とスポーツ・青少年局学校健康教育課によって、性同一性障害のある児童生徒について初めて全国の学校へ通知が出されました。

文部科学省による通知

文部科学省による通知


これは明確な指針とは言えませんが、良き第一歩と言えるでしょう。

通知では、各学校において教育相談を徹底して本人の心情に十分配慮した対応をとることや、学級担任や養護教諭のほかにもスクールカウンセラーや関係の医療機関などとの協力、連携をとることが求められています。

そこで、本市の対応について教育長に伺います。

【質問1】
この通知を受けて、本市では、教育委員会と学校の現場でどのような取り組みを行なったのでしょうか。

次に、『研修を受ける対象の拡大』について伺います。

児童・生徒への適切な対応を可能とするためには、正しい知識に基づく理解が必要です。

そこで、本市では、教職員を対象にして既に2年間にわたる取り組みがなされています。

しかし、教職員の方々にすべてをゆだねるのではなく、さまざまな職種を超えた支援者たちが、共通の理解を土壌にして協力と連携が可能となるようにすべきではないでしょうか。

そこで、市長に伺います。

【質問2】
『性的マイノリティー』とされる方々の支援を進めるためにも、本市の研修の対象を教職員から広げて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育相談の担当者、市長部局の相談窓口担当者などにも参加を求めて理解を深めていただくべきではないでしょうか。

お答えください。

2.谷内六郎作品の返還問題と横須賀美術館のあり方について

(1)谷内六郎作品を御遺族に返還すべきではないか。

寄贈された谷内六郎作品の返還を御遺族から求められている件について、5月20日の全員協議会に続いて市長の考えを伺います。

6月4日に、吉田市長は谷内六郎氏の御遺族を訪れて、今回の問題に関する話し合いを行いました。

しかし、この話し合いを終えた後に御遺族が運営しているホームページで発表されたコメントでは、次のように記されていました。

「吉田市長のとられた言動は、明らかに捏造によって谷内家の善意を悪意にすりかえ、みずからの政争の具として絵画の寄贈と谷内六郎館の設立をターゲットとして利用したとしか思えない」

こうしたコメントを読むにつけても本当に残念ですが、御遺族には真意が伝わっていないのだと感じました。

2010年6月5日・神奈川新聞より

2010年6月5日・神奈川新聞より


そもそも7年前(2003年)、美術館建設反対運動が巻き起こったのは、政争などではありません。

見直しの署名が7万人も集まったことは、あくまでも危機的な市の財政状況に多くの市民の方々が共感したからなのです。

谷内作品だけでなく、どの作品に対しても、さらに美術や文化そのものも否定したことは一切ないということが御理解いただけなかったことはとても残念です。

このように、吉田市長と御遺族とのそもそも根本的な認識が全く異なっている以上は、今後も和解は不可能だと思います。

マスコミ報道を見る限り、吉田市長は

「それでも谷内六郎館の運営を継続したい」

と表明しています。

谷内六郎館

谷内六郎館


それは、市長という肩書きや立場がそう言わせているのかもしれませんが、まちに出て率直に市民の皆様の声に耳を傾ければ、このまちの市民の多くは、そもそも谷内六郎作品に特別な思い入れはありません。

当然ながら、御遺族とトラブルを起こしてまで谷内六郎館を無理やり継続することも望んではいません。

むしろ市民の皆様の最大の願いは、訴訟などこれ以上の泥仕合にならないことです。

おもしろおかしいゴシップとして週刊誌に横須賀市が悪く書かれることは、市民の皆様にとって本当に不快でたまらないことです。

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そうした民意に沿うならば、市民の代表として吉田市長がやるべきことは、一刻も早い問題解決です。

つまり、寄贈された谷内六郎作品を御遺族に返還すべきではないでしょうか。

谷内家ご遺族に作品をお返しすべきではないか

谷内家ご遺族に作品をお返しすべきではないか


作品を返還してトラブルが解決するならば、責める市民の方は少ないでしょう。

むしろ御遺族に作品が戻ることで、よりよい活用がなされることになれば、美術館にとってもよいことでしょう。

もちろん法的には返還すべき義務もありませんし、寄贈された作品は市の財産ですから、それを無償で返還、譲渡するには、地方自治法に基づいて市議会の議決が必要ではあります。

けれども、あえてここではその点への言及は留保して、市長としての考えを答弁していただきたいと思います。

【質問3】
迅速な問題解決のために、寄贈作品を返還すべきではないでしょうか。

市長の考えをお聞かせください。

(2)谷内六郎館を廃止・休館させることで本市に損失はあるのか?

続いて、市民の方々の関心を率直に市長に伺います。

作品を返還すれば、谷内六郎館は『廃止』あるいは『休館』とせざるを得ないわけですが、それによって本市に何らかの『損失』は起こり得るのでしょうか。

ちまたで言われている1つのうわさがあります。

それは「美術館を廃止したら国に借金の返済を迫られる」というものです。

オープンから3年間の実績を見ても、横須賀美術館は毎年入場者数が減っていて、目標であった10万人さえも下回るなど集客力も低く、周囲へ波及する経済効果も低く、税金の持ち出しばかりという実態があります。

オープンから3年間の実績

オープンから3年間の実績


それにもかかわらず、そもそもは『建設見直し派』であった吉田市長が「それでも存続せざるを得ない」と判断した理由には、

「建設の際に国から補助を受けたり借金を行った建物を廃止したり、別の目的で使用する場合には一括で返還しなければならない為に、美術館を廃止したら現在の本市の財政状況では返済するのは不可能だと判断したからではないか?」

と言われています。

建設時の借金だけでいまだ39億円も残っていますが、これを一括で返すことは到底不可能です。

吉田市長が「1度つくってしまったものを壊すことはできない」と述べていることの真意がどこにあるのかはともかく、一括返済の請求などの損失が法的に本当に起こり得ることなのかをぜひ市民の皆様に説明していただきたいと思います。

【質問4】
谷内六郎館を廃止して別の展示館などに利用する場合、本市は建設に要した補助や市債などを一括で返済しなければならないのでしょうか。

【質問5】
同じく廃止ではなく休館とした場合には、本市に一括返済の義務が生じるのでしょうか。

この2点についてお答えください。

(3)責任の所在を徹底して明らかにすべきではないか?

今回の問題について、一部の雑誌や新聞の中には、すべてが吉田市長の責任であるかのように記しているものがありますが、「それは的外れだ」と僕は考えています。

むしろ吉田市長は、放置されてきた問題を世間に明らかにしたのであって、そもそも問題をつくったのは歴代の市長だったのではないでしょうか。

2005年6月14日・神奈川新聞より

2005年6月14日・神奈川新聞より


5月11日付で谷内六郎氏の御遺族が作品の返還を求めてきた通知書を見ると、これまで市議会側も全く知らなかったこと、

例えば

     

  • 市長側から谷内六郎氏だけの独立した美術館をつくる約束をしたとか、
  •  

  • 市長側から谷内氏の御遺族に報酬を支払ってアドバイザー就任を以来した

といったことが複数点にわたって記されていました。

仮にこうしたことが事実であるならば、本来ならば地方自治法に基づいて市議会の議決が必要であるにもかかわらず、

議会の議決もないままに『負担つき贈与』あるいは『負担つき寄附』などの契約行為がなされたと御遺族に誤解を与えても仕方がないような行為が、歴代の市長を初め行政の対応としてなされてきたことになります。

これが事実ならば重大な問題です。

歴代市長の責任を調査すべきではないか

歴代市長の責任を調査すべきではないか


こうした問題を、今後2度と起こさないためにも、今後の訴訟の有無にかかわらず、吉田市長は、事実関係の確認を含めてしっかりとした調査を行う必要があります。

【質問6】
例えば、外部の第三者を中心とした調査委員会を立ち上げて、歴代の市長に事実確認を行うなど、過去にさかのぼって責任の所在を徹底的に明確にする措置をとるべきではないでしょうか。

市長の考えをお聞かせください。

(4)美術館そのものの在り方を見直すべき時ではないか?

今回の問題は、美術館の在り方を見直すよいきっかけです。

横須賀美術館はオープンから3年がたちましたが、観覧者数は減少を続けています。

集客効果も弱い、市民の雇用の場にもならない、それでは一体何の為にたくさんの税金を使ったのでしょうか。

確かに教育研究機関でもある美術館は、そもそも黒字化を期待すべき性質の施設ではありません。

また、学芸員を初めとする現場の職員の方々にも全く非はありません。

けれども、財政危機の本市において、市民の税金で運営されている以上は、効率や採算を重視した経営や税収が増えるなど市財政に対する明確な費用対効果を強く求めざるを得ないのです。

今回の問題を契機に、横須賀市の今の現実に照らして『美術館の在り方』を根本的に見直すべきではないでしょうか。

そこで伺います。

【質問7】
現在の横須賀美術館は、『博物館法に基づく施設』として『教育委員会』が所管をしていますが、この位置づけを変えるべきではないでしょうか?

マーケティングや資金調達や営業の強化などのより柔軟な経営を可能にするためにも、博物館法に基づかない『博物館類似施設』へと変更すべきです。

「指定管理者制度への移行も視野に入れている」と吉田市長から既に答弁を受けていますが、『民間への移行』に時間をかけるならば、まずせめて『行政内部での移管』を迅速に行うべきです。

【質問8】
もしも吉田市長が「観光による集客の為にあえて税金を投入し続けてもこの美術館を存続させたい」と考えているならば、所管を『教育委員会』から『市長部局』へと移管して、強力な全庁的支援と介入が必要ではないでしょうか?

お答えください。

最後の質問に移ります。

質問に当たって、1人の市民の方のことをお話しさせていただきたいと思います。

このまちの典型的な市民の現状を語りました

このまちの典型的な市民の現状を語りました


6歳の子どもを持つ20代のシングルマザーの方が、この5月末にさいか屋本館の閉店とともに仕事を失いました。

そもそも介護の現場で一生懸命に働いてきましたが、長時間勤務にもかかわらず収入が少なく、さらに腰を痛めてしまった末に保障もなされず退職しました。

失業手当を受ける時間ももったいないので、必死に仕事を探しました。

そうして1年半前、さいか屋のテナントに仕事が見つかったときは、横須賀市の大手に正規社員の仕事が決まったことを本当によかったと喜びました。

しかし、今年、さいか屋本館の閉店に伴ってそのテナントが撤退することになり、再び正規の職を失ってしまいました。

さいか屋大通り館、2010年5月11日に閉店

さいか屋大通り館、2010年5月11日に閉店


彼女は、今、パートの仕事を2つかけ持ちしながら休みなく働いています。

6歳になった子どもは、小学校に上がったばかりです。

「友達のようにゴールデンウイークにはディズニーランドに行きたい」

と言いました。

けれども、時間も生活費の余裕もない彼女には、子どもをディズニーランドに連れていくことはできませんでした。

ようやくとれた休暇には、野毛山動物園ならば入場料が無料だからと連れていくことにしましたが、行き帰りのバス代と電車代を払って園内でお手製のお昼御飯を食べてアイス1本を2人で分けて食べたらもう予算はなくなってしまったので、どんなにせがまれてもささやかなお土産さえ買うことができませんでした。

彼女の望みは、子どもが元気に育つことです。

まじめに一生懸命仕事と子育てを頑張っています。

休みなくパートの仕事をこなしても、生活費だけで精いっぱいで貯金はできません。

こうした暮らしが毎日続いています。

そんな彼女は、横須賀美術館に行ったことはありません。

それ以前に、谷内六郎さんの存在すら知りませんでした。

けれども、彼女が働いたお給料の中からも必ず税金は引かれ続けています。

利用したことがない、行く気持ちさえない美術館のためにもその税金が使われているのです。

美術館を含めて税金で賄われている公の施設とは、その施設が存在することで地域全体に利益がもたらされなければなりません。

しかし、今、このまちに美術館があることが市民全体の利益に本当になっているのでしょうか。

彼女やその子どもの利益に本当になっているのでしょうか。

かつては、美術館を作れば「観光による集客が増えて税収も上がる」とか、「高齢化社会に喜ばれる施設になる」とか、「文化度が高まる」とか言われたこともありましたが、3年間が過ぎて今、それらが実現しているとは思えません。

この女性の話を持ち出したのは、彼女のような暮らしをしている方がこのまちには本当にたくさんいらっしゃるからです。

ある意味『典型的な市民像の1つ』と言っても過言ではありません。

吉田市長もそうした方々の姿を目の当たりにしてきたはずです。

そうした方々の暮らしに視点を置いたときに、一体どれだけの市民の方々が巨額の税金を投入してまでもこのまちに今美術館が必要だと願っているでしょうか。

「もっと子どもの暮らしのために税金を使ってほしい」

「一生懸命頑張っている人が報われるように税金を使ってほしい」

誰もがそう強く願っているのではないでしょうか。

吉田市長もそうお考えになりませんか?

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今からちょうど7年前、この本会議場で沢田元市長は、かつて市議であった吉田市長と僕に対して

「美術館に対して思想や哲学を語れ」

と発言しました。

その発言に対して僕は、7年前も今もはっきりと同じ想いを持っているのですが、

「横須賀市内の現実に目を転じれば、思想や哲学を語っている場合では無い」

のです。

明日も飯を食えるかどうか、いや、今日の飯もまず食えるかどうかで精いっぱい、そんな暮らしの市民の方々がたくさんいらっしゃる。

その現実を少しでも良い方向に変えることこそが僕たちの仕事のはずです。

しかし、今、財政危機の中では、本当に必要な福祉サービスでさえカットせざるを得ないような状況が続いています。

財源が無いからです。

さらには、介護保険料も上げざるを得ないような厳しい状況が迫っています。

その厳しい現実を、吉田市長は、今、市議会議員時代よりもさらに身にしみておられるはずです。

1990年代の沢田市長によって計画された美術館は、2010年の横須賀の現実にはそぐわないものとなっています。

市民の皆様に説明責任を果たせるような具体的な社会的役割やリアリティーのある存在意義は見出せません。

『存続』どころかむしろ『廃止も含めた根本的な見直し』が必要なはずです。福祉サービスに必要な財源を生み出すのです。

そうすることでしか、もはや財源は見つけられないと僕は考えています。

そこで、市長に伺います。

【質問9】
かつて『美術館基本計画』で示された目的、特色、基本的機能、事業活動など全てについて、現在の社会状況と市民生活の観点から乖離した『美術館の在り方』をゼロから見直すべきではないでしょうか?

市長の率直な考えをお聞かせください。

以上で1問目を終わります。

市長の答弁

御質問ありがとうございました。

まず、『性的マイノリティー』とされる方々への理解の向上と支援については、教育長から答弁をいたします。

【答弁2】
私からは、職員の研修について御質問をいただきましたが、教育委員会で行っている研修に加えて、市長部局でもこども育成部の相談窓口担当者を対象とした研修の実施等を検討してまいりたいと考えています。

次に、谷内六郎作品の返還問題と横須賀美術館の在り方についていくつか御質問をいただきました。

【答弁3】
まず、「谷内六郎作品を御遺族に返還すべきではないか」という御指摘をいただきました。

谷内六郎氏の作品は、中高年の方はもちろんのこと週刊新潮の表紙を知らない若い世代にも共感を与え、世代を超えた人気を得ているものと認識をしています。

また、谷内六郎館は来館者の満足度が非常に高く、横須賀美術館に必要な存在と考えていまして、今後とも谷内六郎館におきまして作品の展示を継続していきたいと考えています。

御遺族側の市に対する不信感が大きいことは認識していますが、谷内六郎氏の作品、業績を大切にしていきたいと考えていることは、御遺族の方々も横須賀市も同じだと思いますので、ぜひ谷内六郎館で引き続き御協力をお願いできるよう円満解決に向け、話し合いを続けていきたいと思います。

次に、谷内六郎館を廃止して別の展示館等に利用する場合、本市は建設に要した補助金や市債など一括で返済しなければならないのか、また、廃止ではなく休館とした場合には、本市の建設に要した補助金や市債など一括で返済しなければならないのかについてあわせて御回答いたします。

【答弁4・5】
美術館は、平成15年度から平成18年度にかけて市債と税等の一般財源を財源として建設いたしました。

このうち、市債については美術館を建設するという目的で、また、美術館以外の目的で使用する場合には一括返済するという条件のもと、総務省からの許可を得て借り入れを行っています。

ですから、市債の借り入れ目的である美術館を廃止した場合には、市債残額を一括返済する必要があります。

しかし、美術館の一部機能である谷内六郎館を廃止し別の展示に変更したとしても、美術館としての用途に変更がなければ市債の一括返済をする必要はありません。

また、谷内六郎館を休館とした場合でも、美術館以外の用途に使用しなければ市債の一括返済をする必要はありません。

【答弁6】
次に、「再発防止のために調査委員会を立ち上げるなどして責任の所在を明らかにすべきではないか」という御指摘をいただきました。

私も行政側の対応については、議会軽視の姿勢などを指摘してまいりましたが、同じようなことを起こさないようにするためにも、しっかりと議会を尊重するよう全庁的に指示しているところです。

今、大切なのは、谷内六郎館において引き続き作品の展示を継続することですから、過去の経緯をことさらに取り上げるようなことをする考えはありません。

【答弁7・8】
次に、現在は『博物館法に基づく施設』として『教育委員会』の所管だが、市長部局への移管による強力な全庁的支援と介入が必要ではないかという御提案をいただきました。

横須賀美術館の目的の1つに、文化発信によって交流人口を増やしていくことを位置づけています。

しかしながら、さらなる集客を促進するためには、教育施設としての観点だけでなく、全庁的な事業展開も必要になると私も考えています。

御提案のことも含め、今後、全庁的な支援について検討してまいります。

【答弁9】
次に、『美術館基本計画』で示された目的等について、「現在の経済社会状況の観点から美術館の在り方を見直すべきではないか」という御提案をいただきました。

美術館の運営は『美術館基本計画』に基づいて行っていますが、策定から10年を経ていまして、見直しが必要な部分もあるのではないかと考えています。

御指摘の経済社会状況の観点だけでなく、地域全体の利益を考え、総合的に見直していきたいと認識を持っています。

以上です。

教育長の答弁

私からは、「性的マイノリティーとされる方々への理解の向上と支援について、文部科学省の通知を受けて、本市では、教育委員会と学校現場ではどのような取り組みがなされたのか」、また「本市の研修をさらに対象を広げ、理解を深めていくべきではないか」との御質問にあわせて回答申し上げます。

【答弁1・2】
『性的マイノリティー』とされる方々への理解の向上と支援について、教育委員会では、これまでも性同一性障害の理解というテーマで平成20年、平成21年と教職員向けの研修を重ねており、今年度も5月に行われた人権教育担当者研修において引き続き教職員の理解を深めるための研修を実施しております。

文部科学省からの今回の通知を受けて、性同一性障害の子どもへの配慮について、各学校へは、その通知内容の周知徹底を図るとともに、あわせて学校や相談員からの相談窓口の明確化や学校からの要請に応じた支援のあり方について通知を行いました。

今後は、相談を受けた学校が児童生徒、保護者の心情を適切に受けとめられるよう、養護教諭やスクールカウンセラー、教育相談の担当者等へも対象を広げ、研修の実施を行ってまいりたいと考えています。

以上でございます。

フジノの再質問

教育長、市長、御答弁ありがとうございました。

まず、いわゆる『セクシャルマイノリティー』とされる方々への教育委員会、そして市長部局の対応はとても評価されるべき御答弁だったと思います。

この点について感謝を申し上げたいと思います。

さて、再質問は、谷内六郎作品返還問題と美術館の今後の在り方について伺います。

まず、谷内六郎作品の御遺族への返還について2点伺いたいと思います。

市長は、既に記者会見などでもお話しされているとおりの御答弁を繰り返されました。

つまり「御高齢の方から谷内六郎作品を知らない若い方までこの作品は愛されている」と。「したがって、谷内六郎館の運営を継続して行なっていきたい」ということでした。

けれども、第1回目の質問で申し上げたとおり、御遺族と吉田市長との間には埋めることのできない認識の隔たりがあると感じております。

それは、報告を受けた市議会の皆さんも同様かと思います。

一体どうやってこの状況を打開することができるのか。

腹案のようなものが果たしてあるのか。僕にはとてもそういったものがあるとは思うことができません。

【再質問1】
そこで再質問の1としては、では、その市長の思いを実現するために、どうやって打開していくのか。

「顧問弁護士と協議中」というようなあいまいな答弁ではなくて、訴訟をこのままでは起こされるのは明白ですが、どうやってこの現状を打開していくのかを具体的にお答えいただきたいと思います。

これが再質問の1です。

同じく再質問の2としては、返還を行わない、訴訟に追い込まれて泥仕合になったような時、市民の皆様がどう思うと市長はお考えなのでしょうか。

【再質問2】
訴訟は市民の皆様、決して望んでおられない。その点について、市長はどのように市民の皆様の感情をお考えになっておられるのかをお答えください。

続いて、谷内六郎館を仮に廃止、休館した場合に、横須賀市は一括返済を求められるのではないかという点については、

「美術館という用途に変更があった場合は一括返済する必要がある。けれども、谷内六郎館の展示の変更などについては特に一括返済は求められない」

と御答弁いただいたと思いますが、再度確認をさせてください。

【再質問3】
谷内六郎館が谷内作品の展示をやめて他の目的の展示をしたとしても「一括返済などを求められることは無い」ということでよろしいですね?

改めて御確認させていただきます。

そして再質問の4ですが、今回の問題が起こった原因は一体どこにあったのかという責任を明確にするための調査委員会などの措置をとるべきではないかという点について、市長に再質問を行います。

今、当面は御遺族とのわだかまりあるいは心情的な行き違いを解決して谷内六郎館を継続していくことが何よりも大事だと市長はおっしゃいました。

けれども、そのわだかまりや行き違いが起こっている原因の根っこには、谷内家の御遺族が理解しておられた条件というものが横須賀市側の認識と横須賀市側が意図的なのか、あるいは残念ながら誤謬であったのかわかりませんが、大きな違いがある原因というのはそこにあると思うのです。

吉田市長との感情のもつれ、そういったことも確かにあると思います。

けれども、そもそも谷内六郎館のみの美術館を作るですとか、あるいは横須賀市側が、沢田元市長が議会の議決も経ないままに報酬を支払う、そんな約束をもし本当にしていたとするならば、議会軽視と、市長がおっしゃっている内容そのままではないでしょうか。

また、行政のあり方としても非常に問題だと思います。

したがいまして、当面、何よりも御遺族との和解に力を入れるというその点だけについては理解をいたしましたが、中長期的に見れば、この責任の所在を明確にしなければ問題は絶対に再発すると申し上げざるを得ません。

また、短期的に見ても、訴訟へと持ち込まないためには本当の原因がどこにあったのか、しかるべき責任を追及しなければならないと思っています。

【再質問4】
その点について、まず『短期的』に訴訟の為にも調査をする必要がある。

そして、『中長期的』に行政の在り方として正しい道に進む為にも、調査委員会などの責任追及の形は行わなければならない、ということを改めて市長に提案させていただき、市長の見解を伺いたいと思います。

『市長部局』への移管や『基本計画』の見直しについては「想いを酌んでいただけた」と感じております。

それでは、再質問への御答弁をお願いしたいと思います。

市長の再答弁

再質問ありがとうございます。

【再答弁1】
まず、1つ目ですけれども、谷内六郎氏の作品の返還問題に係る質問、最初としては、「遺族の側と埋めることのできない溝があるのではないかということで、腹案のようなものはお持ちか」という御質問をいただいたわけですが、

私としては特に腹案というものを持っているわけではなくて、誠心誠意理解を求めていくという姿勢に変わりありません。

【再答弁2】
続いて、「訴訟に追い込まれた時、市民はどう思うか」という御質問をいただいたわけですが、現段階において訴訟というような話にはなっていませんので、仮定の話には答弁を差し控えたいと思います。

【再答弁3】
また次に、「確認の意味も含めて谷内六郎館のみを廃止して他の美術品の展示に変えた場合、その市債の一括返済を求められないということでよろしいか」という確認でしたが、美術館としての機能を存続させる場合は一括返済を求められるということはありません。

【再答弁4】
最後に、「原因について調査委員会を立ち上げて責任の所在を明確にすべきではないか」という再度の御提案をいただきました。

確かに遺族の側とのわだかまりや行き違いについて過去の経緯を含めてのことであるというのは、私もそのように受けとめていますが、

ただ、議員御提案の調査委員会というお話になると、例えばそういったものを必要とする一般的なケースとしては、市役所の内部で組織的に行われた犯罪であるとか道義的に許せないような事項というようなことであれば、こうした委員会を立ち上げる必要というのもあろうかとは思いますけれども、

基本的には市長としての心構え一つで再発するということはないと思っていますので、今、そのようなことを考えてはいません。

以上です。

フジノの再々質問

市長、御答弁ありがとうございます。

最後の質問にまいりたいと思います。

まず、返還問題、そして訴訟に追い込まれてしまうのではないかという点について再々質問として2つ伺いたいと思います。

「特に腹案はない」ということでした。

けれども、谷内家の御遺族が送ってこられた通知書を一読すれば、本当に大きな溝があることはもう目に見えていると思います。

また、市長もご覧になったと思うのですが、谷内さんの御子息が運営されている谷内家の公式ホームページでは、市長に対して「政争の具にされた」というかなり厳しい言葉が記されております。

そういった状況を考えれば、誠意を尽くすという思いで6月4日も向かわれたと思うのですけれども、それ以上にさらに誠意を尽くすとするならば、それは「作品を返還すること以外には無い」のではないでしょうか。

先ほどから申し上げておりますのは、議会の議決ということは一たん留保して、市長の最後の腹案として『返還』という考えもあるのではないかと、これから訴訟によって泥仕合を繰り広げれば、ますます横須賀市のダメージは大きくなる。

週刊新潮に、もともとあの雑誌の表紙を飾っておりましたから、当然御遺族よりの意見にならざるを得ない記事なのは理解をしておりますが、この問題が歪曲された形で取り上げられ続けることで、横須賀市は全国の美術館からも信頼を失って、作品の相互の貸し出しあるいは借り入れなどにもそごを来すでしょうし、残りの他の施設についても運営が厳しくなるのではないかというような懸念もあります。

【再々質問1】
したがいまして、まず1点目としては、「返還ということもお考えになるべきではないか」ということを申し上げます。

そして、もう1点目は、訴訟というのはもう極めて目の前に迫っているかもしれない問題です。

その問題について、「仮定の話には答えることができない」というのは、返還するにしろしないにせよ、市長の決意としていかがなものかと思います。

仮に市長が決意を貫いて「訴訟もやむを得ない」と思っているのであれば、それを市民の方に答弁を通じて、「訴訟になるかもしれないけれどもついてきてほしい」と述べるべきでありますし、返還をするのであれば「返還をします」と、「7億円近い評価額の美術品をお返しします。資産を横須賀市は失います」ということもきちんと申し上げるべきではないかと考えております。

【再々質問2】
したがいまして、「仮定の話には答えない」という答弁はぜひ撤回していただきたいと思っております。

最後に、3問目としては、調査委員会の設置についてですが、

市長、行政をまるでかばっているような、そのような答弁に聞こえてしまいました。非常に残念です。

自浄能力を行政が持っているならば、過去にどういうようないきさつがあったのか調べることは決して悪いことではありません。

むしろ横須賀市に何もそごがないということがわかればそれにこしたことはなく、仮に訴訟に追い込まれたとしても堂々とその内部調査を持って主張すればいいわけです。

それを「行なわない」と、「市長の決意一つで大丈夫なんだ」と、そういうふうに言いながらいろいろな都道府県や地方政府において不祥事が繰り返されてきたことを市長は学ばなければいけないと思うのです。

【再々質問3】
ぜひ調査委員会の設置など、一体何でこんなことが起こってしまったのかということをきちんと調査を行うべきではないかと改めて提案をさせていただきます。

以上をもちまして僕の質問は終わらせていただきます。

ありがとうございました。

市長の答弁

再々質問いただきました。

【再々答弁1】
まず、「作品を返還することをやはり考えるべきだろう」という御質問でありましたが、

市長としては市の財産を守る立場でもありますし、目録をもとに寄贈を受けたものですから、それを返還するということは考えずに、

改めて申し上げますけれども、いただいた作品をしっかり市民の方々、そして市外からいらっしゃる方々に見ていただくというのが市長の務めであると考えています。

【再々答弁2】
また、訴訟についてのお話も出ましたけれども、私としては6月4日に参って、これが終わりではなくてスタートの一つだと思っています。

誠心誠意やはり遺族の方々と向き合いながら市の姿勢というのをお話ししていきたいと思っています。

【再々答弁3】
また、「調査委員会をやはり立ち上げるべきだ」というお話でありました。

過去の経緯について特段何も調べていないというわけではございません。

内部的なヒアリング等は常に繰り返していますし、過去の経緯について当然市に何の情報もないというような状況ではありません。

ただ、今必要なのは、その過去の経緯を取り上げてそれをあげつらうような形で市民に喧伝をすることが第一ではないと。

そうではなくて円満解決に向けて努力をするのが第一であると考えているところです。

以上です。

(質疑応答は以上です)

(後日追記その1)朝日・神奈川・読売が報じてくれました

この市長との質疑を3社が報じてくれました。

2010年6月10日・朝日新聞より

2010年6月10日・朝日新聞より

2010年6月10日・神奈川新聞より

2010年6月10日・神奈川新聞より

2010年6月10日・読売新聞より

2010年6月10日・読売新聞より


(後日追記その2)一般質問のその後(2013年3月27日現在)

やはり谷内六郎氏のご遺族(原告・谷内達子氏)から横須賀市は訴えられ、裁判となりました(動産返還等請求事件訴訟)。

2012年12月25日、最終弁論が行なわれました。

2013年3月27日、横浜地方裁判所(沼田寛裁判長)は遺族側の請求を棄却しました。