精神障害者リハビリテーション学会(2日目)/これまでの20年とこれから

精リハ学会2日目スタート!

昨日に続いて、文化会館へ向かいました。

あいにくの雨でしたが、『精神障害者リハビリテーション学会』の第2日目がスタートしました!

精神障害者リハビリテーション学会2日目

午前は、開会式と基調講演です。

開会式では、黒岩県知事と吉田市長が来賓あいさつをしてくれました。基調講演は、横須賀大会の会長である松為信雄さん(神奈川県立保健福祉大学・教授)です。

松為信雄・大会長による講演

お昼休みはロビーでいろいろな販売品をチェック!

販売コーナー&カフェコーナーは昨日よりもたくさんの人が集まっていました。昨日の活動日記で紹介した『幻聴妄想かるた』を購入しました!

幻聴妄想かるた

午後からは、2つのシンポジウムが開かれました。

シンポジウム1『開国の地から精神障害者リハビリテーションの現状を問う』

【パネリスト】
加瀬昭彦さん(横浜舞岡病院)
楜沢直美さん(川崎市百合丘障害者センター)
戸高洋光さん(神奈川県精神障害者地域生活支援団体連合会)
森川充子さん(金沢区生活支援センター)

【指定発言】
寺谷隆子さん(当学会理事)

【座長】
桑原寛さん(神奈川県精神保健福祉センター)
田中英樹さん(早稲田大学教授・当学会副学会長)

シンポジウム1

精リハ学会が20周年ということもあって、神奈川県のこれまでについてがシンポジウム1のテーマでした。

「神奈川県の風土は、先進的だった」という話がパネリストからいくつもあがりました。例えばこんなです。

  • 1960年代までに、県内の保健所には保健師ではなくソーシャルワーカー(福祉職)が精神衛生相談員として配属された。
  • 1971年、全国に先駆けて川崎市社会復帰医療センターが設立された。
  • 1984年、全国で初めて精神衛生ボランティア講座がスタートした。
  • 1987年、当事者団体である神奈川県精神障害者連絡協議会が発足した。

こうした全国初の取り組みが神奈川にはたくさんあるそうです。

道なき道を切り拓いてきて下さった先輩方に感謝しつつ...でも、神奈川県が進んでいるという実感がフジノには全くわきませんでした。みなさんはいかがですか?

うーん。

シンポジウム2

続いて、これまでの20年を受けて、これからの20年についてを語るシンポジウム2が行なわれました。

シンポジウム2『精神障害者リハビリテーションの新たな20年を拓く』

【パネリスト】
田中英樹さん(早稲田大学、学会・副学会長)
西田敦志さん(東京都医学総合研究所)
池淵恵美さん(帝京大学医学部精神科学教室、当学会・理事)
相澤欽一さん(高齢・障害者・求職者雇用支援機構、学会・理事)

【座長】
野中猛さん(学会・学会長)
田尾有樹子さん(学会・理事)

パネリストのお話の中で、特に2つのことが強く印象に残りました。

1つ目は、「働くことへの誤解が解けつつあること」です。

かつて、精神障がいがある方は「ゆっくり休養して、治ってから働けばいい」と考えられていました。精神保健医療福祉の業界の人間だけでなく、世間一般にも浸透している考え方です。「仕事が大きなストレスになるから仕事はしない方が治る」と今でもほとんどの人々がそう思っていますよね?

けれども、これは間違っていたことが明らかになりつつあります。『働くこと』に治療効果があることが分かってきたのです。

例えば、フジノの活動日記でも紹介してきた『IPS』(個別職業紹介とサポートによる援助付き雇用)などの登場によって、むしろ「可能な限り早く働いた方がいい」ということが分かってきました。

それは日本でのデータにも表れています。

20年前、ハローワークの『障害者相談窓口』を通しての紹介就職件数は898件でした。それが現在では20倍に増えて、1万8845件となっています。今後も精神障がいのある方々が働く機会はますます増えていくはずです。

ハローワークでの就職件数

これまでの常識どおりに「ストレスを減らす為に仕事を辞めて休養した方がいい」「元気になってから働けばいい」とやってしまうと、実は、どんどん社会的なスキルが落ちていってしまいます。

周囲の人も家族もその人のことを心配して仕事から引き離す訳ですが、それは逆効果なのですね。しっかりとしたサポートを受けながら働いていくことの方が、治療にとっても良いことなのです。

これから先の20年には、こうしたEBM(=科学的な根拠に基づいた医療)による『新しい常識』がもっと広まっていくはずです。

薬物療法のメリットは過大評価され、デメリットが軽視されている

そして2つ目に強く印象に残ったことは「薬物療法の効果がそれほど高く無い」「突然死など抗精神病薬の副作用が軽視されている」という指摘です。

『反精神医学』などのイデオロギー的な立場から薬物療法への批判がずっと昔から存在しています。その他にも、金儲けの為に製薬会社が精神病を造っている、といった陰謀説もよく流布しています。

けれども近年になって、そうした立場からでは無く、科学的な研究の結果(=EBM)として、薬物療法への疑問が指摘されています。

今日のシンポジウムでも、海外の先進的な研究の横断的な分析によって「薬物療法の効果はそれほど高くない」「抗精神病薬の副作用が軽視されている」ということが改めて述べられました。



ただ...。この情報を聞かされても、希望が感じられないなぁ。落ち込みました。

仮に「クスリに効果が無い」として、それに代替する手段(心理社会的な療法)が現在は全く足りていません。クスリ以外の療法も普及していないし、それができる人材も、そうした取り組みをする病院も診療所もどこにあるかも分からないですよね。

認知行動療法の必要性が厚生労働省の審議会で取り上げられたり、診療報酬に加えられたりなどの動きもありますが、クスリ以外の取り組みを拡める為の政治・行政による制度的な対応がもっともっと必要です。

フジノは6月末から体調を崩して、服薬している精神科のクスリが2倍に増えてしまいました。今もなかなかうまくいかず、毎日苦しんでいます。

「これだけ苦労して毎日クスリをのんでいるのに効果が無いとしたら、何の為におれはクスリをのんでいるのだろう」とすっかり落ち込んでしまいました。

このシンポジウムに煽られてしまった訳ではないのですが、すっかり体調が悪くなってしまい、その後の懇親会には参加しませんでした。東京まで出かけなくても、電車に乗らなくても、文化会館でさえ体調が悪くなるなんて、僕の身体はどうなってしまったのだろうか...。

クスリも効かない、クスリのかわりの治療法も無い。それでは希望が無い。

でも、きっと同じような想いをしている人は多いんだろうな。

だからこそ、今日の精リハ学会のような取り組みがもっともっと必要なんだと思う。科学的に検証された取り組みを広く世間に知らせて、それを新しい制度に取り込んでいくことでスピードアップさせなければならない。

考えさせられることがとても多いシンポジウムでした。

こうして2日目の精リハが終わりました。

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