流産、死産、新生児死などで赤ちゃんを亡くしたご家族の想いをテーマに人権セミナーを開催します
ようやく発表できることになり、ホッとしています。
ベイビーロスに対する取り組みはフジノの大切なライフワークの1つです。今回のブログ記事では、新たな提案の実現を報告いたします。
横須賀市教育委員会が主催している人権啓発講座『人権セミナー』という取り組みがあります。
この2022年度のテーマは『アンコンシャス・バイアス~無意識の差別・偏見~』で、4つの講座が開催されます。
- 認知症に関わる先入観や偏見をめぐって
- 偏見、あるいはアンコンシャス・バイアス、女性活躍を考える
- 映画『僕が性別「ゼロ」に戻るとき~空と木の実の9年間~』
- 沈黙に埋もれる悲しみ~出産の前後のこどもの死をめぐる家族の想い
この4つ目の『沈黙に埋もれる悲しみ~出産の前後のこどもの死をめぐる家族の想い~』について、ご紹介します。
赤ちゃんの死とご家族の置かれた社会的な状況を「人権課題」と位置づけました
横須賀市では、流産・死産・新生児死・中絶などによって赤ちゃんを亡くしたご家族のグリーフケアと、社会の側の正しい理解を求める啓発活動に取り組んできました。
グリーフケアについては(まだまだ完全ではありませんが)臨床心理士を配置したエンジェルサポート事業は全国的に高い評価を受けています。その他の取り組み(死産届を提出する戸籍の窓口でのエンジェルサポート事業のチラシ配布、中央斎場(火葬場)でのグリーフケアのご案内冊子の配架など)も含めて、一定の枠組みが整いつつあります。
一方、社会の側に正しい理解を求める取り組みについてはさらに拡げていく必要性がある、とフジノは考えています。
その一環として、今年も10月9日~15日にかけて、我が国では全国唯一の行政が実施する『ベイビーロスアウェアネスウィーク』の各種取り組み(2020年からスタート)、例えばライトアップや市役所内での展示などを行なったのを憶えておられる方もいらっしゃるかと思います。
さらなる取り組みとして、新たに、赤ちゃんの死とそのご家族の置かれた社会的な状況を『人権課題』として位置づけて、教育委員会主催の人権講座でセミナーを開催することとなりました。
もちろんその目的は、『公認されない死』『公認されない悲嘆』と呼ばれてしまっている赤ちゃんの死とご家族が置かれている状況について、広く世間のみなさまに実情を知っていただき、社会の側に良き理解者を増やしていくことです。
本テーマについては、グリーフケア、ペリネイタルロスなどの視点から周産期医療に関わる方々を対象にした講座として開催されることがほとんどです。参加者は関係者または当事者がメインとなります。
もちろんこの位置づけも重要ですが、広く世間に向けての発信ではありません。
今回のように赤ちゃんの死とご家族の置かれた社会的な状況を『人権課題』と位置づけて、広く世間に向けて発信するセミナー・講演会の開催は、極めて珍しい取り組みだとフジノは考えています(全国的にも初めてではないかと思います)。
とても意義のある取り組みだと提案者として自負しています。
『沈黙に埋もれる悲しみ~出産の前後のこどもの死をめぐる家族の想い~』
講師:蛭田明子さん(湘南鎌倉医療大学教授、天使の保護者ルカの会)
日時:12月20日(火)10時~11時半
会場:まなびかん5階第1学習室、オンライン同時開催
お申込みは、本日11月11日から、ネットでの申込み、コールセンターへの電話(046-822-2500)、FAX(046-822-2539)のいずれかでお願いします。
①講座名、②氏名、③住所、④電話番号、⑤メールアドレス(オンライン参加希望者のみ)
蛭田明子さんは『天使の保護者ルカの会』のスタッフであり、『亡くなった子どもと「共に在る」家族』の著者でもあります。
とても大切なセミナーになると確信しています。
11月11日現在ではリアルでの参加、ウェブでの視聴、どちらも募集をしています。コロナの状況によってはオンラインのみ、または中止の可能性もありますが、どうか本セミナーにご参加下さい。
どうかあなたにご参加いただきたいと願っています。よろしくお願いいたします。
実現に至るまで
今回こうして実現することができたのは、上地市長をはじめ、長年一緒に取り組んできてくれた旧こども育成部のみなさん、そして教育委員会のご尽力のおかげです。
本当にありがとうございます。
最近、他都市の議員や市民の方から横須賀市のペリネイタルロスやグリーフケアの取り組みについて質問を受ける機会が増えました。
そうした方々への参考の為に、今回の取り組みの実現に向けてフジノが行なった質疑を抜粋してご紹介します。
(2021年12月議会・一般質問より抜粋)
Q.フジノの質問
これまで、流産、死産、新生児死亡、人工死産などによって赤ちゃんを亡くしたご家族は、語ることも許されず、何年経っても消えない心の痛みを孤独の中で抱えてこなければなりませんでした。これは『公認されない死』『公認されない悲嘆』と呼ばれる世界的な風潮です。
それを変える為に各国で取り組みが行なわれてきましたが、我が国では横須賀市が国内初の取り組みをいくつも行ない、赤ちゃんを亡くした日本中のご家族に、「あなたは一人ではありませんよ」という強いメッセージを発信したのです。まさに我が国のグリーフケアの歴史に残る取り組みでした。
こうした快挙を褒めたたえたい気持ちでいっぱいですが、より一層、当事者の方々の気持ちに寄り添える、そして社会の側が理解を深めていく取り組みとするために、1つずつ振り返って、さらに改善を進めていく必要があります。
そこで市長に伺います。
(中略)
(2)これからの取組について
外部からどれだけ評価されても、ベイビーロスアウェアネスウィークはわずか1週間の取り組みに過ぎません。
本市が目指すべきは、日常的な取り組みによって、社会の側に良き理解者を増やしていくことです。
その為には積極的な広報啓発が必要です。
(中略)
良き理解者を増やす取り組みとして、当事者の方を講師としてお招きして、率直なお気持ちをお話ししていただく講演会を開催することも大切です。
一つの人権課題と捉えて、生涯学習課による人権セミナーや人権・男女共同参画課による講座や講演会の開催も有効だと考えています。
ぜひ御検討いただけないでしょうか。
A.市長の答弁
次に、人権セミナー等の開催についてです。
私もこれは一つの人権課題になり得ると捉えています。
その解消の為に、講演会や人権セミナー等の開催を含め、様々な啓発手法を検討してまいります。
こうして、上地市長が人権セミナーや講演会の開催を約束してくれました。
さらに取り組みを推進する為に、改めて翌年にも取り組みの必要性を提案しました。
(2022年6月議会・民生常任委員会・所管事項への質疑より抜粋)
Q.フジノの質問
エンジェルサポートの周知もどんどん取り組んでいきたいことに加えて、そもそも流産、死産、新生児死亡など、赤ちゃんを亡くすことは、残念ながら人生において避けられない出来事であって、一つの人権課題であると。
その課題解決は難しいとしても、その気持ちに寄り添っていくという本市の姿勢を打ち出していく為に、講演会ですとか人権セミナーを開催することも一つの方法ではないかと市長のご答弁が昨年ありました。
今年度、本市はこのテーマで講演会や人権セミナーの開催は予定しておられるでしょうか、お聞かせ下さい。
A.地域健康課長の答弁
今年度におきましては、セミナー等について、関係部署と効果的な開催方法について検討を行なっているところです。
あと、さらに啓発手法の一つとしまして、子育て世代の保護者の方々に直接接する機会のある保育園の職員の方々に、当事者の思いを知っていただき、配慮の必要性を伝えられるように、公立保育園園長会の会議などの機会を捉えて情報発信ができるようにも検討していきたいと考えています。
こうして、このテーマを人権セミナーの1つとして開催することが実現しました。
横須賀市はこれからもずっとこのテーマに取り組んでいくように、フジノは働きかけを続けていきます。